分担小話 相性抜群、夢のタッグ!
─訓練施設(アイシャ、ロンゴ)─
訓練施設。それは文字通りの機能を果たす施設。冒険者の心得、剣術のイロハを学べる。
講習を受ける若き冒険者もいれば、トカゲ型の怪物を模ったカラクリ人形相手に自慢の腕前を見せつける者も。
ここに設置されているカラクリ人形は、『人形』と呼ばれているが『怪物』を模倣して創られたもの。なんと、自律して指定範囲内まで動き回る事が出来るのだ。
これも、魔法の恩恵である。つい最近導入されたばかりの代物で、なんでも、原動力となる『コア』を『ゴーレムマスター』という尊称で親しまれている人物が提供したそう。
そんなカラクリ人形との対戦は、高難易度であったとしても誰でも可。ただし、模倣された怪物の危険度は直結しているため、自分の階級に見合わないカラクリ人形との対戦はオススメしない。
「おい、すげぇぞあの二人! 青位なのに白銀位の怪物と互角だぞ!?」
「なあ、片方って鬼人じゃねぇか? それにあの赤髪、何処かで見たような……?」
「アイツら『闇鍋パーティー』のメンバーじゃなかったか?この街に鬼人がいるってんだったら、絶対そうだろ」
「いいぞ! そこだ! 叩けーっ!」
この日、訓練施設に通っていた者は、一様にとある模擬戦場に釘付けになっている。
「ぬははははは! 楽しい! 愉しいぞ! こんな接戦を求めていたのだ!」
「オーガ! 私の身の安全が第一だ! そこんとこ頼むぞ!」
「自己防衛しろ! そんな気は利かねぇから流れ弾には気ぃつけろよ!」
「それもカバーするんだよバカ! 盾になれ……うわっと!」
とある怪物を模したカラクリと闘うタッグ。赤髪は鉄製の盾と剣。鬼人は持ち前のメタリックな棍棒を操っている。
対戦相手は四足歩行型で、飛行機能のない翼と翼膜があり、前脚が熊手のように特化した怪物。頭部と眉間には尖りのない大角と、実物であったら金剛のような筋肉が宿るであろう両腕と胴体。
後脚も、本物ならば筋肉質であろう。棘が規則的に、一直線に生えた尻尾を音を立てて奮わせている。
「……クソッ、なんで報酬も無しで危険を冒して……。オーガ! 後脚の関節を狙え! 出来なきゃ顔面を殴打しろ!」
「合点承知! ……って、オメェも闘うんだよ!」
……ったくよぉ、オーガに拉致されてみたらこれだ。一人でワーワー特訓だの戦闘だのをすればよかったのに、半強制的に付き合わされた。
現物の報酬があれば、まだ闘争心が湧くんだがなぁ。
幸い、怪我をしても直ちに治療してくれるサービスが受けられるのが救いか。
「あっ! 武器が……ぬぐおおおお! ……おい赤髪! 助けてくれぃ! 押しつぶされそうだ!」
怪物に撥ね除けられた、誰かさんの棍棒が回転しながら降ってきた。
「お得意の怪力はどうした? ストンロクス程度なら持ち上げられるんだろ? じゃあ手出しは無用だな。瀕死になっても医療関係はバッチリだからな、心置きなく負傷しろ」
怪物は両腕でロンゴを拘束し、捕食器官が失われた頭部を押し付けている。
行動は本物と大差ないので、この怪物は捕食しようとしているのだろう。
「鬼かよオメェ! 腹が減って力が出ねぇんだよ!」
「鬼はお前だろ、後は知らん。自分が悪い」
「おいネーチャン! 仲間がピンチだぞ!」
「お前、さっきから加勢してねぇじゃねぇか! 真面目に闘え!」
野次馬が野次る。観戦者のクセに偉そうにしやがって。面白半分で見てんのはお前らだろうがよ。真面目に闘えって、当初からやる気は無いんだよこっちは! つくづく感に障るな。
「しゃーねーな、助けてやるか……」
言いたい放題の観戦者に業を煮やしながらも、溜息混じりに救出策戦を試みる。
私の見解だと、この怪物は『クベニアカリ』という怪物を真似している。枝のような角に四角い頭部、翼はあるが飛べない骨格、それを補う発達した腕。コイツに口は無いが、本物ならばかえしが付いた無数の牙があるだろう。
いや設計者、それを除いたらダメだろ。クベニアカリの武器なんだから。
冒険者への配慮なんだろうが、これじゃあ無意味だろうよ。
予測が正しければ、攻略法はある。さっきオーガのヤツに言った方法だが……効果があるか知らんが、試してみるか。
「オーガ、アンタの棍棒借りるぞー」
「なんでもいいからブホァッ! ……さっさとしてくれよゴフッ!」
それが人に物を頼む態度か。
そこら辺にある砂利を鷲掴みし、特に他意は無いが、オーガが倒れている怪物の顔面付近を目掛けて投擲。
「うおっ!? おい赤髪! 砂投げただろ!」
「砂じゃなくて砂利だ。助けるために必要なんだよバーカ、もっと広い器を持てって」
感覚器官も忠実に搭載されているのか、右頬に当たった砂利を振り、飛んできたであろう右側に首をかしげる。
視覚もあるのか、はたまた魔法で感知しているのか、右手に棍棒、左手に盾と剣を兼ね備える人間を捉える。
雄叫びの代わりに、全身の関節やら繋ぎとめるロープやらが軋み、装甲がガラガラと鳴る。
身動きを封じた鬼人を解き、猛々《たけだけ》しい前脚を前進させた。
「そりゃっ!」
そんな無防備な顔面には、オーガ特注の鉛をプレゼント。
自らの突進によるスピードと魚雷のように猛進する棍棒の威力が相まって、クベニアカリの鼻柱に大打撃を喰らわせた。
────────ッ!
声にならない声で悶絶する怪物。大きく仰け反り、両前脚で顔面を押さえる。
「よっし!」
やはり鼻が弱点であった。
そこまで大袈裟なリアクションをするとは予想外だったが、好機だ。走りながら跳ね返った棍棒を取得し、隙だらけの懐へ潜り込む。
勢いに乗ったまま腹の下を通過し、骨盤辺りまで来たところで、右手に持ち替えた剣を右後脚のアキレス腱を切断する。
猫騙しのように、ただ怯んだだけなら前脚を狙ったんだが……狙える部位を狙って正解だったな。少しでも自由を縛れただけで御の字だ。
「おおぉぉぉおぉおお! カッケェぞネーチャン!! やれば出来るじゃねぇか!」
「魅せてくれるねぇ! 痺れるぜ!」
「流石は『闇鍋パ』だ! 普通だったら一騎討ちなんて挑まねぇぜ? やることが違ぇや!」
ギャラリーは、掌返しがお上手なようで。
「ほらよオーガ! アンタの武器だ!」
「おうよ! サンキューな! ……にしてもオメェ、結構やるじゃねぇか!」
「へっ、伊達に十回以上もパーティー追放されてねぇよ。知識と度胸は一丁前さ!」




