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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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四十八話 苦悩と依頼と衝動

 『大地』の目覚めまで、残り二十日──。


─集会所本部─


「……ゲイルよ」

「ケイルです」

「しつこいように思えるだろうが、もう一度問おう。……この統計資料は、何かの間違いかね? なんか、収量が限りなくゼロに近いんだが。というかゼロなんだが」

「間違いありません。そのデータが、ここ数日間の納品燃料数です。万人も口を揃えて答えられる正確な記録ですので、疑いの余地などありません」


 ギルドマスターが両手に添えているのは、一枚の紙。そこには、統計データが記載されていた。


「そりゃあ、ゼロは誰が数えたってゼロだもんな。何? 誰一人として依頼を請けてくれなかったの? ちゃんと宣伝した?」

「はい、全冒険者諸君に行き届いているかと。ですがまぁ、プラムカシムの恩恵もありまして、当分の貯金はある上に、燃料などの採取より効率的でおいしい(・・・・)依頼が何枚もありますからね」

「馬鹿なの? ソイツらは馬鹿なのかなぁ!? 街が壊滅される可能性しかないって分かってるのかなぁ!」


 みっともなく喚き散らすギルドマスターには、長年付き合っていたケイルでもうんざりした。


「……まさかとは思いますが、『原因は報酬金額には無い』、とでもお思いですか」

「お思いですが?」

「……報酬金額、五キロ相当でそこら辺の雑用と大差ないですよ」

「問題ないじゃん」

「どうやってギルドマスターになったんですか。コネですか」


 すっとぼけたアホ面を晒し、非常に馬鹿げた発言をかましたギルドマスターには、調教が必要不可欠であることを改めて実感した。



─集会所(ロイン、セリス)─

 最近、集会所には人がいない。この時間帯ならば、暇を持て余した冒険者たちが井戸端会議を開くのだが……すっかり寂しくなっている。


「やっぱり人が少ないですね。カニによって莫大な収益を得たからでしょうね。私たちはウハウハではありませんが」

「本当にゴメン。悪気は無いし、わざとでもないんだ……」

「責めてはないですよ。……まあ、依頼を請けるのは、お金稼ぎでもあり人助けでもあるので、悪い気はしないのが救いですね」


 冒険者が休業中でも、荒稼ぎの期を逃した負け組は依頼を淡々とこなして、地道に稼ぐしかない。当然、自分の階級に合ったものを。


 食事代やらを含め、我らが雑貨屋の家賃も侮れないので、四人が滞納しないように依頼を選ばなければならない。そうなってくると、ハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンかが悩み処。


 前説であれば、短時間に高い報酬金を獲得可能だが、その分、必然的に死亡率が上昇する場合がほとんど。

 一方後説では、死亡率は激減するが、かなりの所要時間と単調な作業が求められ、報酬金は渋い。出来高制も少なくないので、丸一日潰れても財布が満たされない事が起こりうる。


 だから俺たちは、採取よりも駆除討伐を率先するのだが。

 

「どれにしようか……本当に、依頼を請けるのは俺らだけなんだな。惜しいことをした……」

「……あ、ありました。これこれ、これにしましょう!」


 セリスは目に星印を輝かせ、お菓子を食べた子供のようにはしゃぎながら依頼用紙を押し付けた。


「これは……人魚か? 随分と不細工な面構えだな。ロンゴと良い勝負だ」


 七割程のスペースを使ってまで大々的に、写実的に描かれた怪物は、猿のような顔をしている。ただ、胴体に視線を移すにつれ、猿とは程遠い骨格になる。

 そんな怪物、五匹の討伐と。


「似ているけど、これは『セイレーン』という怪物です。つまり、目指すは海です!」

「だったら二人……と、店主さんも呼ぼうか。みんなで行った方が思い出になるだろ?」

「い、いや、それはその……ロンゴたちは急用が重なったようでして、残念ながら同行は断念しました! はい!」



─隠れた雑貨屋─


「………へっきし!」「………べっくそいっ!!!」

「ちょ、ちょっとオーガくん、口押さえてよ!」


 客足が遠いのか、お得意様しか受け付けないのか、他店舗と比較しすると、定休日のようにまったりしている。

 店主さんは物静かに愛読書を読み、鬼人オーガと赤髪はボードゲームで暇潰しをする。


「悪ぃな、次から意識するわ。……あー暇だ。刺激が欲しい。新しい刺激が欲しいなぁ!」

「オーガ、やかましい、うるせぇ。アンタのターンだぞさっさとしろ薄鈍うすのろが」

「なんでそんなイラついてんだぁ? ……おい、完全に詰んだじゃねぇかオレ。どう逆転出来んだコレ?」

「四六時中壊死してる脳ミソ使って考えろ」

「そんな罵詈雑言吐かれたら、いよいよ泣くぞ? 泣き喚くぞ?」

「喚くな」


 暫時の沈黙。時計が時を刻む音と、店主さんが本をめくる音のみが、木材に囲まれた部屋にさざめく。


「……あああああああ!! 戦闘がしてぇ!」

「うるさいなぁオーガくん!」

「すればいいじゃん喚くな」

「赤髪! 集会所の裏に訓練施設があったよなぁ!? そこで模擬戦するぞ! 血が騒いで仕方ねぇ!」

「えー動きたくな……やめろ麗しき乙女を担ぐな───」


 バタンッ


「い、いってらっしゃーい………………」


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