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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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四十四話 取り残されたお留守番

─隠れた雑貨屋─

 ……うーん、頭が割れる……。


 どれだけ経過しただろう。あの忌々しい軍団の愚行、波乱な大潮。視界が湾曲したり、拡大したり縮小したり、脳内で騒音が喚き散らす頭痛。

 本当に耐え難い。あんな種族なんか死滅してしまえ。昔、部屋の天井に張り付いていた、キングサイズの蜘蛛を目撃して以来の発狂であった。


「う……うぅん……」


 自堕落ではないが、休養を摂るためにも重力に負ける。そこらに置かれた日用品や装飾品は、彼女を見守るように設置されている。

 カーテンの向こう側には、人の気配は無い。床下……雑貨屋として機能している部屋からも、自分以外の誰かがいる様子も無い。


 皆は、何処にいったんだろ?


 きっと、依頼を請けに行ったか、単なる暇潰しに出掛けたかでしょう。……私を置いて、高級料理店やら観光名所に行くような人たちでは……ある。

 まあきっと、事件には巻き込まれていないでしょう。



─山道(ロイン、ロンゴ、店主)─


「…………」

「「…………」」

「…………そろそろ聞いていい? ちょっとこれは……聞かずにはいられないというか、心配というか……」

「……嬢ちゃん、聞くのは野暮ってもんよ」

「でも……なんでヌメヌメてるのかとか、異様な臭いがする事くらいは……」

「店主さん、そんな些細な変化を気にしてたら、世の中大変だよ」

「いや君、ルイシュから聞いたけど、つい先日村から出たよね? それと、ヌメヌメと臭いで商品に支障が……」

「それだけはもう、どうしようもないです。鬼人コイツのの特技なので。今の内に慣れておいた方がいいよ」

「えー……なにそれ……。もしかして昨夜、怪物に襲われた?」

「いいいいいやそんなことはないぜ嬢ちゃん?」

「そそそそそうだよな怪物なんかいなかったよなロンゴ?」

「……じゃあ、なんでそんなヌメヌメでくさいの?」

「オレが唾液を撒き散らしたからだ。臭いのはオレの魔法だ」

「えっ……うわ……」


 後者は真実だが、前者はなんかもう酷い。もっとまともな言い訳あっただろ。



─隠れた雑貨屋─


 一晩は越したのかな? だとしたら、アイシャはここに泊まった筈ですが……そんな跡形はありませんね。


「……起きよう」


 気怠い身体を起こし、貧血症に悩まされながらも、階段を降りて一階へ。


「……誰もいない」


 エルフの店主さんが、店番をしているという予測を立てたのですが……ここには私しかいないのですね。

 一旦自室に戻って、財布を胸元に忍ばせる。勿論、自分の財布を。


 出入口の扉を開けようとしたけど……鍵が掛かっている。内側からなら開けられるけど、やめておこう。

 あ、窓の鍵は開いてる。不用心だなぁ。まあいっか、ここから出よう。


 ……お腹空いた。そうだ、お風呂も入っていなかったな。先に銭湯に行って、その後にご飯にしよ。


 窓を開き、よっこらしょとふちに右足を踏み込む。


「「…………あっ」」


 ある程度乗り上げると、鶏冠がそびえる男の存在に気が付く。


「ど……泥棒か!?」

「えっいや、違います! 誤解です! 泥棒じゃないです!」

「じゃあなんで窓から出て来たんだ? 普通そんなことしないだろ? ……もしかして、ここの店主の関係者か?」

「えっ……まあ、部分的には。知人程度ですけど」

「そうか、悪かったな。気を悪くしないでくれ」


 この人、凄く常識人なんですが……。外見との落差のせいで、対応が追いつかない……。


「代理か?」

「え?」

「いや、もし代理だったんなら、買い足したい物があるんでな」

「あ、ええとですね、私、ただの留守番係なので接客は出来ないのです。すみません」


 展示品に値札は書いてあったけど、無断で売り捌くのは如何なものか……。そもそもそんな権限はないし、何処に何が保管されているのかが分からない。

 物品を移動させたり、誤って不良品にでもしたら、それこそ店主さんにご迷惑。


「そうか、じゃあな。店主によろしく伝えといてくれ」

「はい、ではサヨナラ……ちなみに、何を所望しているんですか? 伝達しておきますので」


 手助け出来ることは進んでやっておこう。この御方は、こんな着飾りをしているけど、根は良い人っぽいし。


「哺乳瓶二個と粉ミルクだ。哺乳瓶は、蓋がゴム製で軽い素材のヤツだ。粉ミルクは、なるべく日が経ってなくて清潔なやつにしてくれよ? 病原菌なんかが混入してたら、洒落にならんからな」


 えっ。


「……了解しました。じゃあ知らせておくので……」

「あと、コイツを店主に渡しといてくれ。『いつも御礼』ってな。それじゃ」


 そう言って、お手軽なバッグを差し出してきた。中身は……豊富な野菜。


 育児の真っ最中なのでしょうか……こんな男が? 避難も否定もしないけど、なんか……えぇ……。しかもテキトー(・・・・)じゃなくて、適当なオーダーだったし……。

 

 ……野菜、何処に置いておこう。


 一先ず、窓から店内へ侵入し、野菜が傷まないであろう場所を独断で考案する。


 ……冷蔵庫、ないかな? 食べ物だから、なくっちゃ困るのですが……きっと、店主さんの自室にあるのでしょう。勝手にお邪魔するのは心が引けますが、やむを得ません。


「失礼しまーす……」


 ちょっとだけ、野菜を冷蔵庫に詰めたら直ぐに退出するから。部屋を荒らすとか、余計な事は絶対しない。


 冷蔵庫は、入って右手側にたたずんでいた。ササッと空席に野菜を並べ、パパッとこの場からおさらばした。


「……ん?」


 この異本に、注意を惹かれなければ。


もし、面白いと感じて頂けたならば、評価をしていただけると幸いです。

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