分担小話 不死身の生命体/男の隠れ家
完封した。ボスと子分、合わせて三人に連勝した。いやぁ痛快。
まさか『身体で教えてやる』ってのがジャンケンだったとは。如何わしいモノを想像した私の心は、もしかしたら汚れているのかもしれない。人は見かけによらないなぁ。
彼らは大人しく負けを負けと認め、通りたい道を譲って貰い、さらなる領域へと進出する。
「……そうだ。アンタたち、この女の子を見てねぇか?」
「あん?」
ひらりと、とある女の子の肖像画を差し出す。依頼で捜している子だ。
「……知らねぇな。だが、女の子を捜してんだったら、この奥の二番目の分かれ道を右だ。そんで、真っ直ぐ進んで突き当たりの扉に入ると良いい。両脇が赤く彩色されてるから、すぐわかるだろ」
「そ、あんがとね」
懇切丁寧に教えてくれた。こんな奴が何故ここにいるんだろうか。
助言に従って、振り返る事無く、何も恐れず進行していく。心なしか、ヒンヤリしていても、湿度が高く感じる。
「……おや、こんな大きいのは珍しいな」
二番目の分かれ道を右に曲がると、とある怪物にエンカウントした。
体長は、1から1.5メートル。不定形なカラダ。固体か液体か、面積が増えたり減ったりし、ブルンと脈打つジェル。透き通った青、中心に向かうにつれて濃くなっていく。感情も思考も読み取れない、顔を失ったモノ。
人々は、この怪物をスライムという。
『シズクムシ』だなんて名称もあるが、今ではスライムが共通の名称となっている。『ショゴスの破片』だなんて俗説も。
植物の葉や根、鉱物、怪物の死骸など、好き嫌いのない食生活をしている。歯舌と呼ばれる器官で食物を削り、舐め取っている。
これもれっきとした生物。多細胞のカラダは、切断しても破片が再生し、また新たなスライムが増える。体表面は粘膜で護られ、カラダに含まれる水分の蒸発を大幅にカットする。
ただし、塩や砂糖を掛けると水分が奪われ、干上がってしまう。
「なんで街中にいるのやら。……処分も出来ねぇし、無視するか───」
「あ、こんな所まで逃げてたのか……、? 誰だお前」
「こっちの台詞だ」
スライムの向こう側から、パンクな男がやって来た。鶏冠のようなモヒカンとは、なかなか良いセンスだ。嫌いじゃない。
「理由は知らんが、帰った帰った。この先にゃなんもねぇよ。じゃあな」
「あやしっ」
健常者ならば、スライムを触ること自体に寒気を覚えるが、この男はお構いなしに担ぎ上げた。
「……付いてくる必要、ないよな?」
「お気になさらず。この先に在るはずの、児童保護施設に興味がありまして。私は、とある女の子を捜していてね。行方不明になってるから、もしかしたらこの辺りにいるかなと」
男は足を止めた。
「……ついてきな。案内する」
「いやここ真っ直ぐだろ。知ってんぞ」
こんな易々と案内しちゃっていいのか。『特別ヤバイ場所ではない』って事を暗示しているのか、門前払いも嫌々な感じもない。
例の扉がある。両脇に赤い彩色、間違いない。スライムの粘液が滴って、男の服がテカリンチョしていて、見るのも不快だ。どこに需要があるというのだ風呂は入れ。
「ここだ」
「知ってる」
「……まあ入れや。変な気を起こすなよ」
「へいへい。何があるか分からんがね」
ヌットリした手で扉を引いたため、取っ手が煌めいている。衛生面が絶望的だ。
招待されて中に入ると、この男と同じ方面の男どもが三人、机を囲って座っていた。
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