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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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四十話 落とした物

─隠れた雑貨屋─

 セリスをおんぶして輸送し、屋根裏に寝かせた。


「…………」

「……………………」


 祭りは収束した。大漁であった者、不況であった者……。集会所では街中の冒険者がわんさか押し合い、カニの気持ちを考えずにぶんどった宝石を精算する。悔し涙を流す者もいれば、嬉し涙を流す者もいる。


 プラムカシムの宝石は『集積鉱石』と呼ばれ、たいへん密度が高く、頑丈で上質。個体差はあれど、微量の『魔力(魔法を扱う際に関与する成分)』を含み、この宝石を使えば誰でもなんちゃって魔法使いになれる。

 装飾品から実用用、はたまた貿易に加担する。大半が高額で取引され、エルメス城の外交には必要不可欠の資源でもある。


「…………君は……」

「……………………」


 大盛況の集会所より外れて、とある雑貨屋には一対一で対面をする男女が。

 男性は阻喪そそう。トンガリ耳の女性は言葉を失っている。

 とんでもない事をしでかしたのは痛いほど分かっている。うちむいた顔は簡単には上げられない。


この状況下の俺に顔を上げる資格は、無い。


「……本当に、無くしたの?」

「…………はい…………」


 説教とまではいかないが、俺を責め立てている。

 ぐうの音も出ぬ失態。目星はついている。あの時だ。


 修道女ルイシュ転移魔法テレポートを受け、足を踏み外し転倒したあの時。それ以外考えられない。


「……まぁ、私が困ることじゃないけど、人の善意をあだにするのは頂けないなぁ……」

「……はい……」


 脳内は『ごめんなさい』という、安易な謝罪の言葉に犯されている。


「たっだいまー……なにやってんだ後輩?」

「説教中だろ? 関わってやるな」


 二人が帰ってきた。亜空筒あくうとうに保管してあった宝石は、筒ごとさっぱり消えてしまったので、換金出来たのは雀の涙。冒険者との乱闘になりながらも、やっと手中に入れた一握り。

 アイシャが手にする財布代わりの袋は、張りがなかった。


 二人は迂回して階段を登り、自室と言っても過言ではない旧物置部屋へ。


「いやまぁ……私も怒ってるつもりじゃないから、この件は水に流していいよ」

「分かりました……そうさせて頂きます」

「……君が敬語遣うと、気持ち悪いね」




─集会所本部─

 

「……ふむ。貴女がおっしゃるのであれば、やはりあの震動は誤りではなかったか」

「はい、ギルドマスターさん」


 お茶を飲む、修道服を着た女性と、オヤジなギルドマスターが言葉のキャッチボールをする。


「最後の記録は三十年前……。貴女の予知・・では、活動が本格的になるのはいつだね?」

「一ヶ月後です」

「おいおいおいおい、え? 一ヶ月後? 揶揄からかってる?」

五月蝿うるさいですね大真面目です。あのカニたちは、『大地』から逃げるべく早期の大進行をしたのですよ。彼らもまた、被害者です」


 重大な報告を淡々と、澄まし顔で伝える風格は、一種の賢者のよう。


「では、わたくしはこれで。ご武運をお祈りしています」

「貴女が加勢してくれたら、苦労もせず事なきを得るんだがなぁ?」

「今回のプラムカシムは特例です。数年前から突如として現れた変異体。当初は本来の生態行動をまっとうするのみでしたが、今年は凶暴化してしまったため、近辺の環境そのものを変動させてしまう可能性があったため、です」

「それ言ったら『大地』が生態行動するだけで地殻変動が」

「滅ぼしますよ、この街」

「もうアンタが『古の龍』だよ。文明崩壊させたの貴女か?」


 厄介者を相手する目で、ルイシュに怪訝な目線を送るギルドマスター。


「乙女に対して『古の龍』だなんて、面白い冗談ですね。これっぽっちも笑えません」


 ティーカップの中身を空にし、微笑みながら速やかに退出をするルイシュ。


「……『大地』の歩行はもうすぐ、か。どうしたものかね……君はどう思う?」


 会話相手を求めて、一人で部屋を警護する女性役員に話をふる。


「一大事だと思います」

「いやそうだが、そうじゃないのだよゲイルくん」

「ケイルです」

「そうか。でも私がゲイルと呼称したら、君は紛れもないゲイルだ」

「不愉快です。退職しやがってください」



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