分担小話 店主さんのお手伝い
「うーむ。迎撃するには火力が不十分……火薬も冒険者も心もとない。討伐は愚か、撃退すら可不可不定。他国に救援を求めるか……うーむ。」
ギルドマスターは部屋を彷徨き回り、最適解を導き出していた。珍しく苦渋に満ちており、女性役員は不器用に少々驚いた。嵐でも来るのではないかと。
「……よし、ゲイルよ」
「ケイルです」
「冒険者に火薬や燃料の採取依頼を進呈するのだ。急速な事態、貿易船にも可能な限り要請し、物資を確保しろ。大陸内の商人にも伝達せよ。エルメスが壊滅されては、安眠出来るベッドが怪物の庭になってしまうのでな」
「了解しました」
─隠れた雑貨屋─
お客様用の机を囲む、店主さんと俺。アイシャとロンゴは、もう一つの机を挟んでボードゲームで再戦をしている。
「しっかし驚いたよ。君とルイシュが同じ村出身だなんて。もしかして君も、実は隠された能力があるとか?」
「これっぽっちもないです。そんじょそこらにいる、一般男性と同じスペックしかないんだな、これが」
淹れて頂いたコーヒーをグイッと飲み、自分の才能の無さを痛感する。
「へ、へー……てっきりエルメンの村出身の人は多才なのかと……あ、そうだった。君たち、私の仕事、手伝ってくれないかい? というか、手伝う約束だから手伝ってね」
ガタッ……スタスタ……ギイッバタンッ。
「「「……………………」」」
絶句。
アイシャは『仕事を手伝う』と聞き入れると、対戦相手を放置して席を立ち、一心に扉へ向かい、縛りのない自由へ歩み出した。
「……二人は手伝ってくれるよね?」
「そりゃもちろん」「合点承知!」
赤髪に制裁の鞭を打つのは、帰還後すぐにしよう。……と思っても、いつもやってないが。
「でね、内容なんだけど……護衛をしてもらいたいんだ。ちょっと遠くのお得意様に、要望の商品を配達しなくちゃいけなくてね。でも道中は怪物だらけ、そこで君たちだ」
「だったらよぉ、依頼として貼ればいいじゃねぇか?」
「コレが掛かるんだよ」
店主さんは人差し指と親指をくっつけ、小さな輪っかを作った。
「あー……」
人間による『金』を意味するジェスチャーを理解する鬼人。
「本当は全員来て欲しかったけど、銀髪のセリスは無理だね……」
「店主、これって無償でやれってことだよな?」
「あったりまえじゃん」
「そうですか」
護衛か……俺に出来るのは危機察知ぐらいかなぁ……。剣を振り回すだけでも効果はあるだろうけど、隙を晒す大間抜けになるからどうしたものか。
急襲は全部ロンゴに任せて、俺は店主さんの荷物管理とでもいこうか。
「……ん? なぁおい、確かオメェ、転移魔法が使えるねーちゃんの知り合いだろ? だったら送ってもらえりゃいいじゃなぇか?」
俺も思った。わざわざ危険な旅路を通らずに、一瞬で行って帰れる転移魔法を使った方が圧倒的にリスクがない。
結局、本人が一番理解しているだろうし、何かしらの理由があるんだろう。
「ルイシュに悪いなってのもあるけど、一番の理由はルイシュ本人なんだよね。彼女は魔法を乱用するのを良しとしない性格だから、私も無闇矢鱈に使わない方針にしてるんだよ」
「その割には転移魔法を多用してたけどな、あのねーちゃん」
「あれは緊急事態だったから、しょうがないのさ。……じゃあ行こうか。結構な長旅になるから、荷物をまとめといてね」
「長旅ってどのくらい? 片道一日ぐらい?」
「んー、休憩も入れて二日ぐらいかな?」
あーやだなー。
屋根裏で、必需品を指差し確認をして準備万端にする。セリスは『うーんうーん』と蚊のようにか細い声で唸っている。
女子専用と査定された禁足地は、御用だとしても侵入が許されないため、カーテン越しにお出掛けの挨拶をする。
聞こえているか分からないが、留守番とアイシャを頼んだぞと布告。女の子一人は無用心にも程があるが、こんな所を泥棒する物好きはいないだろ。
店主さんは、袋小路で荷車に商品を積み重ねていた。雪崩が起きぬよう布を被せ、太めの綱で固く締め付ける。
「うん! 支度は終わったね? じゃ、出発しましょ」
さて、赤髪は職務放棄したが、愉快で不快な長旅が始まる。
「どんな怪物が襲ってきても、オレ様の魔法でイチコロよ」
「おいバカやめろ。絶対使うなよ? 絶対だからな?」
「……?」
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