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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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三十五話 緊急:ちりは積もりて荒波となる

「あの、わざわざ崩して集めなくても、地面に生えてる宝石を直接入れた方が早くないですか?」


 天才か。破壊したものより、よほど価値が上がるだろうし、なにより回収が楽だ。


「おお確かに。……あーでも、『何でも吸い込める』的なこと言ってたからな……」

「条件が分からねぇから、下手に実行出来ねぇってこったな。地面と宝石は繋がってっから、もしかしたらこの世界が仕舞われる(・・・・・・・・・・)って可能性も……」


 ロンゴの言うとおり。範囲が分からないし、繋がった物も一緒に収納されるのかも分からない。


「じゃ、なんで空気は仕舞われないんだ? おかしいだろうが」

頓智とんちを効かせたつもりかこの野郎」

「野郎じゃない、私はレディだ」


 アイシャ、お前はセリスを見習え。せめて敬語を習得しろ。


「……あ、皆さん、朝日が昇りました」




 ─デクト一行─

 三人もロインたちと同じ計画を立てていた。冒険者たちが寝静まった夜中、抜け駆けをして宝石の採掘をしたのだ。

 彼らが持参した麻袋やかごには、溢れんばかりの多彩な宝石たちがはみ出ている。


「……まずいですねぇ。太陽が昇ってきたよ?」

「早い内に切り上げて正解だったな。ここまで来れば心配要らないだろ。ロインたちはどうなるか知らんが」

「まあアイツらのことだ、死にはしないだろ。鬼人オーガもいるし、魔法使いもいる。認めたかぁねぇが、俺らより戦力はあるからな」


 エルメス城はまだまだ先。視界がオレンジ色に包まれた帰路を、一仕事終えた感覚で安心しきって進む。


「あとは帰るだけだ! こんな楽して安全に稼げるなんて、やっぱ最高だな!」


 計画通りに物事が進み、ご満悦のデクトであった。


 のちの展開など、見据えられぬままに。




 ─ロイン一行─

 銀髪の呼びかけで、河の向こう岸から頭を出す太陽を見る。まだ眩しくない。


 深夜の極寒は嘘のように、なんて暖かく、優しい光なのだ。一日の幕開け、宝石の河のに劣らない壮大さ。神秘的で雄大な自然は、疲弊した俺に活気を与えた。


 だが、万物を照らす神は、この日だけ、地中に潜伏する怪物を呼び覚ます、戦の合図であった。


「……ん?」


 陽光を浴びた宝石たちは、より一層輝きを放ち、生命を吹き込まれたかのように揺らめいた。


 ボコッボコボコッ


 地面を盛り上げる、黄色く、つやのある塊。ただ揺れながらではなく、同色の脚、同色のハサミを地表に突き刺して、一生懸命引き抜いている。

 極小から超巨大まで、おくれを取らずに蠢き、きしみだした。


「……小娘、なんだありゃ?」

「あれは───」

「やっべ逃げるぞ」

「おう待てやアイシャ。今回は逃がさんぞ」


 首根っこを鷲掴みにし、俺の隣へ持ってくる。


 全ての宝石に生命が宿り終え、この大鉱脈を形成する怪物の正体が明らかとなる。


「……カ……ニ……?」


 なんと、カニだ。川や海、はたまた沼や池に生息する、美味しいカニだ。


 顎が合わさって、盾の様な形をし、右腕のハサミは身体にフィットしているが、左腕のハサミは、非対称に細く、小さなもの。宝石を除けば、凹凸おうとつのない丸みを帯びたシルエットになるだろう。

 ニョキッと天に伸びる、棒状の目は真っ黒。個体そのものの大きさによって、背負う宝石の大小が比例する。


 そう。つまり奥に見える超巨大な宝石は……超巨大な、カニ。


「『プラムカシム』の大移動が始まるぞ」

「あー、つまりこの大群が、押し寄せて来るっつーワケだなねーちゃん?」

「オーガ、ねーちゃんって私のことか。……ま、そういうワケだな。退散!」

 シュイイィィィイイ!!!


 最後列を陣取る大将軍が、口から泡を放出しながら右腕を大きく振り回す。


 シュイイィィイイイィィイィイイ!!!


 将軍様の大号令に呼応し、一族は大海へと大進行を開始した!


 大地に轟く無数の足音、立ちこめる砂埃、障害物なんてなんのその。前列の同胞をかして一刻も早く、蒼い海を目指す。

 命ある大鉱脈は動き、歩み、道行く者を呑む大波となった。微々たる力を大集結させ、一種の自然現象を生んだ。


「オーガ! 私を担げ! そして走れ!」

「ロンゴ! 私もお願いします!」


 お前らは……


「だーっ! 自分で走れよ! オメェら重すぎなんだ───」

 バチィイン!


 ロンゴが、二人にビンタされた。余計なこと言わなければ良かったのに……。鬼人オーガの赤い肌は、部分的に赤さが増した。


「喧嘩してねぇで逃げるぞみんな!」


 カニたちは身体を横に向けず、正面を進行方向に向けらながらやって来る。

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