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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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三十六話 緊急:ちりは積もりて荒波となる 続

 結局、鬼人オーガは彼女らの運搬者とジョブチェンジした。

 これからもこういう扱いが絶えないとなると、『鬼人オーガである』という肩書きとプライド、そして誇りがだだ下がりになるんだろうな……。


 今現在の時点でも、威厳なんぞ片鱗も無い。なんなら最初に出会った時から無い。


シュアァァァアアア!!

「うわあああああ気持ち悪い!! セコセコ寄ってくるぅわあああああ!」

「ぐおっ!? こ、小娘! 首絞めるな……!」


 セリスは、カニたち(プラムカシム)の大群に対して戦慄している。異性であることお構いなしに、ロンゴの筋肉隆々な身体にしがみ付く。


 カニたちはワラワラと脚を高速で前後させ、しかし胴体はには無駄なブレがない。洗礼された『完璧ムーブ』は、集合体恐怖症のセリスを深淵しんえんに突き落とした。


「なんだあのカニめっちゃ速ぇ!?」

「だめだ追いつかれる! オメェら援護してくれぃ!」

「ひ……ひひっ……ひぃ……っ!!」


 セリスはもう駄目だ! 涙と恐怖で顔面崩壊している!


「アイシャア! なんか作戦あるだろ!? いつもみたいに直ぐ思いつくだろ!?」


 今はとにかく走り続ける事で精一杯だ。鬼人オーガの肩に揺れている赤髪に、カニの浸食から救われる打開策を提案してもらう。


「んー、あるぞ。銀髪がいつものように魔法を使って足止めをする……」

「ヒヒッ……ヒ……」

「……ことは出来ねぇから、やっぱねぇわ。カニ用の足拭きマットに成りたくなきゃ走れ」

「「他人事だと思うな!?」」


 男二人は憤怒した。


「ったくよぉ! おい小娘! お前だけが頼りだ! 得意の魔法を使ってくれ!」

「……おい銀髪、魔法使わなかったら、あの集合体がもっと接近してくるぞ」

「い、いやあああああ!?」


 悪い想像をしたようだ。症状が悪化し、荒ぶっている。


 だが、それが点火剤となり、彼女は死よりも恐ろしい恐怖を寄せ付けないように、魔法を使う予兆となるオーラを造り出す。


 かざした両手からは炎が噴出し、次第に大きくなっていく。


「アッヅァ! 小娘! 泥使えって!」


 不定の狂気に魅入られ、自棄気味に炎魔法を発動させた。文字通り火を噴いたセリスの手先には、直径二メートル超えの火球が。左右にオマケの火球が一つずつ。


 走りながら風を受けていても、熱がよく伝わる。


「いやああぁぁぁあああ!!」

 ドドドォン!


 大砲のような発射音が三回鳴ると同時に、その熱さも過ぎ去った。


 発射した火球は、弧を描いて上空を飛行していく。着弾地点は最後列の巨大ガニ。


 三発は右バサミ、本体、宝石と見事命中し、爆炎ばくえんを散らした。ご立派な宝石は痛手を負い、ヒビが入り、すすがこびりついて黒く変色した。


ジュイイィィィイイッ!!!

「おー、すっげー」


 アイシャはこの場にいる緊張感は無いのか。全部客観的に物事を受け止めている。


 反射的に脚を止め、敵軍の状況をこの目で確かめる。大分距離が空いている。子ガニたちは進行を停止し、統括者を心配しているよう。


 巨大ガニからはゆらりゆらりと黒煙が立ち上り、司令塔が崩れて事態は収束する……かと思いきや、


「……でもあれ、効いてないんだろうなぁ」

「え? でも直撃しただろ?」


 アイシャは意味深長な事を呟いた。


 効いてないってどういう事だ……?


 言葉の理解が追いつかぬまま黒煙を眺めていると、突然、一本のおおバサミが虚空を切り裂いた。

 荒々しく、我武者羅がむしゃらくうを制する武器は、怒りのままに動かされているよう。


ガキン! ガキン!


 数キロは離れているのだが、自慢のハサミを噛み合わせる威嚇音は、ハッキリと明瞭に聞こえた。


「あ……アイシャ? 効かないってどういう……?」

「そりゃお前、プラムカシムは地底のマグマ付近に生息するカニだから、熱なんて効かないし、あれ程度の爆破じゃ傷も負わんよ」

シュイイィィィイイッッ!!!

「それに、背中の宝石は男の勲章だからな。傷物になったら、凶暴化して───」


 巨大ガニは、目を疑う行動を起こした。

 積年の努力が詰まった宝石がある日突然、その輝きを失った。その衝動にられ、怒りと嘆きに我を忘れ、前列の同胞を食い始めたではないか。


 目の前に居る同胞は、万力まんりきの如く発達したハサミの餌食となり、グロテスクな口へと葬り込まれた。


「宝石の治癒を促進させるために、成分たっぷりの仲間を食うんだよ。そんで、彼らは食われたくないから───」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

「ひいいいいいいいやあああああああ!!」


 波は荒れ狂い、一目散に脚をセコセコと蠢かせ始めた。アレルギーのように過敏に反応したセリスは、ずっと叫んでばかり。


「そりゃ逃げるってもんよ。オーガ、走れ!」

「くっそう! 休憩は無しかあ!?」

「結局走るのかよ! もう限界だって!」

「止まれば天国よー」


 冒険者になってから、走ってる記憶しかない。



指摘、感想等が御座いましたら、誰でもお気軽にコメントをして下さい。



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個人的に士気も上がります。


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