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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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三十三話 緊急:地に降り注ぐ、星々の欠片

─隠れた雑貨屋(深夜)─

 

「……起きろ後輩。朝だぞ」

「………………」

バシッ

「痛ぇ」


 目覚ましビンタをくらい、ハッキリと目が覚めた。左頬がジンジンする。この人は寝ている人の起こし方を知らないのか。どこまで非常識なんだ。


 バカを睨む前に、首を曲げて時計を探す。枕元にある時計は、午前零時を指していた。


「……十二時だが……」

「ロイン、おはようございます」


 言葉通りの深夜。コレを朝だと言える精神はなんだ。セリスも『おはようございます』って。早すぎるわ。


 彼女らは眠気など感じないのか、目を細めたり、欠伸あくびをせずにパッチリと目が見開いている。

 俺の起床を確認したら、アイシャはロンゴの腹の上であぐらをかいた。


「………………」

「…………う……お……ストン……ロクスが……」

バチィン!


 容赦ないビンタをが炸裂した。


 ロンゴが不遇すぎる。せめて『起きろ』ぐらい言ってやれ。

 

「よし、行くか。エルフの店主に邪魔しねぇようにな」


 まことに珍しく、アイシャが他人を気遣っている。天変地異の前触れか。それとも悪巧みか……。後者の方が圧倒的に可能性があるのが、実に不思議だ。


 階段を軽やかにくだる四人。それはまるで、気配を遮断する泥棒のよう。


「じゃあ先行っててくれ。後から追いつく」


 言動が完全に悪の組織のアイシャ。促されるままに出入り口を開け、セリス、ロンゴ、俺の順番で裏路地に出る。

 ふとアイシャが気に掛かって、振り返る。


「どうした? 行ってていいぞ?」

「おい、袋にしまった物を棚に戻せ」


 やっぱりだよ。コイツはこういうことを抜け目なくやるヤツだから。

 

 太陽が照る時刻とは似ても似つかぬ、別世界のような夜道。人っ子一人出歩く者はいない。

 野垂れ死んでいる人はいる。酒に酔って泥酔し、所構わずまぶたを閉じている。


 街は寝静まり、各々《おのおの》の寝床で新たな日を待っていた。


 それでも関所には、警備員がいる。多少怪しまれたが、アイシャが事情を説明すると、すんなり納得してくれた。秘かに応援する意思がみられる。




─荒れ地(深夜二時程)─


「さっっっむ……!!」


 くっそ寒い。凍え死にそうだ。


 空気はえ、地面はつめたく、生物が棲《すめる環境とはとても思えない。


 街中では建造物により、冷たい風が肌に触れることは無かったが、ここは裸地のようなもの。障壁となる岩石はあるが、岩肌自体が冷気を発しているように冷たく、防風として機能していない。


 もっと厚着をしてくればよかった……。後悔がドッと心を蝕む。


 そんな俺よりも、格段に死にそうな御方がいる。


 熱い魂を持つ種族、鬼人オーガその人である。不変の格好、すなわち、ピッタリ張り付いた戦闘服である。暗闇に紛れる漆黒は、怪盗よろしく同化している。

 だが、泣く子も黙る強面は青白くなり、身震いが絶えず、必死に身体を温めようと、筋肉を無理矢理縮こめている。


 今にもぶっ倒れそうな、意気消沈した顔は見るに堪えない。


 哀れ、鬼人オーガの弱体化……。


 以前、バクレツイワモドキを駆除する際に訪れた荒野と同じ場所。天高く太陽が見下ろす時間帯とは真逆、風が執拗に吹き乱れ、不気味な風音を奏でる。


「毎年この辺りだが……」


 先陣を切る、月光に反射する赤髪は、どこから取り出したのか分からぬ単眼望遠鏡を、右目に添えた。


「いますか?」

「うーん……あ、いた。あそこに固まってる。早く行こっ!」

「はい!」


 レンズ越しに見た物を伝えず、銀髪と赤髪は、示唆した方向へ駆けだした。


「……ロンゴ、大丈夫か……?」

「あ……ああ……大丈夫だ……ちょっとさみぃぐらいだ……気にするこたぁねぇ……」


 威厳を保とうとしているのか、やせ我慢をしているのか、どちらにせよ、尋常じゃない震え方をしている。


 走っていれば温まるからと催促し、ロンゴとともに二人を追う。


 変わらぬ地平線を眺め、ロンゴの顔色も元の赤色に戻った頃、不意にキラキラと輝く物体がチラリと見えた。

 幻覚かと思ったが、走る距離が増すにつれて、星ではない輝きが増えていく。


 二人に追いつき、脚を止める。


「なんだこりゃ……」

「こ……これは凄い……! 辺り一体宝石の山……!」

「ふっふっふ……これを全部独り占めすれば億万長者に待ったも同然……!」



 閑散とした夜景をくつがえす、幻想的な光景。


 紅、蒼、翠。荒れ地に出現した無類の宝石は、月光を屈折させ、甲乙を見定められぬ輝きを放っていた。一つ一つは微弱な光だが、一面を満遍なく照らし、廃れた世界をきらめかせていた


「すげぇ……」


 縦に横に、広く流れる地上の『天の河』。向こう岸には、よりたくましい星が落ちている。

 絶句し、心を奪わた。……これから宝石を奪うわけだが。


「タイムリミットは日の出だ。お前ら、ありったけ掻き集めてこい!」

「おー!」「おう!」「お……う……(小刻みに震えながら)」



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