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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第三章 [自然の摂理は波瀾万丈]
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三十一話 不穏

─隠れた雑貨屋─

 ふと感じたが、どうして表に店を構えないのだろうか。こんな人通りのない、近所の子供と虫が好みそうな所で。

 看板による案内も宣伝もしていないのに、人は来るのだろうか。

 

 ……まさか、表に出せないような物でもあるのか。それとも、彼女自身が危ない存在なのか……。


 まあそんな事は無いだろ。明るく元気で、後ろめたい過去がある様には思えん。


「店主ー。依頼終わった……ぞ……」

「おー、お疲れ様! 集会所から連絡来てるよ」

「……っ! ……じゃあまた……」


 全身を黒い布で覆い、フードを被った女性が。俺が入ってきた事に、大袈裟なまでに反応していた。

 足早にこちらへ向かってきて、俺を避けて店を出た。


 怪しすぎだろ……。


 後ろから付いてきた三人も、若干動揺していた。しかし、誰も口にはしなかった。


「ありがとーございましたー」


 人の事を何でもかんでも聞くのは、普段だったら気が引ける。でもあの女性に関しては別だ。こんなに怪しい動きをされたら、気になってしょうがない。


「あの……さっきの人は……?」

「うーん……ウチのお得意様、かな? 週に一度来てくれる人だよ。あ、勿論プライベートは言わないから」


 この店、長居はしたくないな。どうにか寝床は得ることが出来たが、あのような客人ばかりだと精神がり減る……。

 いつか殺し屋が来るんじゃないか……?


「キミたちの寝床に布団運んどいたから、好きに使ってね。洗濯してあげてもいいけど、料金は重なるよ」

「やった。後輩、面倒くさいからやって貰おうぜ?」

「お前ら朝から暇だろ……。ちなみに一泊の合計、いくらになる?」

「一人五十万で」

「無しだ。お前ら、自分の布団は自分で管理しろよ」

「はっはっは! 冗談だよ。合計で一人、一万ジルだ」


 宿屋よりかは二倍近く高いが、文句贅沢は言ってられないな。お願いしておこう。


 こっちは誰かさんが脅した身だし。


 そもそもの話、雑貨屋に泊めもらうやからなんぞ前代未聞だろう。常識のある人だったらそんな事はしないし、考えつくことも無い。


「あと、部屋を貸す条件として───」

「じゃ、私は部屋見てくるわ。自分の領地を確保する」

「抜け駆けは許せねぇ。オレもついてくぜ」

「あ! 待って! 枕だけは決めさせてください!」

「はしゃぐな阿呆ども! 店主の話を聞け!」


 子供のように我先と、互いに押し退けて屋根裏へ突撃していった。

 見ているこっちが恥ずかしい。

 こんなヤツらの責任者って……。それだけで生涯の恥になりかねん。


「はっはっは! 元気でいいじゃないか。それで条件なんだけど、一つは私物の管理を徹底すること、ゴミとかは自分達で片付けてね。もう一つは、何よりも最優先で私の手伝いをすること」

「ほう? それって商業的な?」

「ま、大まかにはそうだね。雑用もこなしてもらうよ?」

「……アイツらはともかく、俺は了解したよ。遠慮無く言ってくれ」

「よろしい! ……そういえば君、あの『筒』は役に立ったかい?」

「筒? ……あ、コレか。そういえば貰ってたな」


 右腰に、紐でキツく縛られた筒を取り出した。


「それだよ! ……もう、せっかく無料であげたんだから、ちゃんと活用してよ?」

「あ、ああ。ごめんな? 生きるのに必死で忘れてたよ」

「まったく……うーん、にしても、『筒』呼ばわりだと特別感がないな……よし! 命名しよう! そいつは今日から『亜空筒あくうとう』だ!」

「アクウトウ……?」

「うん! 大事にしてくれたまえ!」




 ─集会所本部─

 時刻は一時、昼過ぎちょっと。

 二人の男が、個室で会話をしている。


「……それは本当か」

「はい、間違いありません」

「まじかよおい。こんな早い時期に来るか?」

「速やかに迎撃準備、もとい冒険者の集合をするべきかと」

「ウッソだろ……予想なら二ヶ月後の筈なんだが? ……非常事態だ。各地で観測されている不可解な震動も見過ごせないが、今は目の前にある問題が先だ。……すぐに銅鑼を鳴らせ。街中の冒険者を募るのだ……!」




 ─隠れた雑貨屋─


「占領完了、今日からここが私たちの陣地だ。よろしくな銀髪」

「枕、選ばせてくれてありがとうございます」

「くそう……男は不当な扱いを受けるのか? オレらにだって権利はあるだろ?」

「女性はプライベートを遵守する必要があるからな。優先されて当然だろ? 悔しかったら女になれば良いじゃねぇかははは」


 カウンター奥の扉を開くと、右手側に階段、左手側に別の扉が。こちらには店主さんの部屋があるため、立ち入り禁止となっている。

 階段を登ると、手すりに寄っ掛かったロンゴの背中が見える。


 使用許可が降りた屋根裏は、一つの部屋みたいなものである。

 天井は『ハ』の字になっていて、端っこに道具箱やらなんやらが放置されている。そして……カーテン代わりの布が、部屋を中央で分断していた。


 カーテンの向こうは、女性陣が占拠しているんだろうな。


「おーすっげー。天窓付いてるぞ銀髪」


 間違いない。


 ロンゴが悲しい表情をしている。有無を言わせずに分別されたのが、聞かずとも分かる。


「わあ! 屋根に登れますよ! 良い景色です!」


 ロンゴは寄っ掛かったまま腕を組み、神妙な顔で斜め上の虚空を見上げる。


「……相棒、オレたちにゃ自由がぇみたいだな。……こうなりゃ、力で捻じ伏せてどっちが上からわからせて」

「それだけはめとけ。多方面の問題に関わるから」


 一先ず、荷物を端にまとめる。おもむろにカーテンへの接近を試みて、一歩二歩と遠慮無しに足を運ぶ。


 そしたら、膝の高さににセリス、その上にアイシャの顔がぬっと生えてきた。こちらもまた神妙な顔をしている。


「「……………………」」

「………………………」

「後輩、襲う気か?」

「しねぇよバカ」


 引っ叩いてやろうかと心にした時、


 バアァァアン……バアァァアン……バアァァアン……


 不安を煽るような鈍い音が、三回街を浸透させた。銅鑼を鳴らしたような、鐘を鳴らしたような。


「……なんだ今の?」

「これは……集会所からの要請だな。後輩、急いで行くぞ」



指摘、感想等が御座いましたら、誰でもお気軽にコメントをして下さい。




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