二十七話 依頼:蛮勇なる無法者 続
「なあ、最近この辺にトロールが住み着いたらしいぞ?」
「やめてよそーゆーこというの。トロールなんて出るわけ無いでしょ? ここはまだ太陽が差し込んでいる場所なんだから」
「もしかしたら、その個体は迷い込んだのかもな。それとも家畜を襲って味を占めたか。対峙したら、俺たちでも手こずるぞ」
男二人、女一人構成の三人パーティーが、針葉樹林の中を彷徨っていた。首元に提げられている『冒険者の証』をみると、美しい赤色である。彼らはかなりの腕前のようだ。
「ま、トロールは知能の低い木偶の坊みたいなものだがな! 俺たちだったらすぐに討伐できるだろ」
「あなどれないよ? トロールの力はバカに出来ないから───」
ガサッガサガサガサッ
「むっ……?」
不意に擦れる植物の音が。前方から、こちらに向かって来るようだ。
三人が警戒態勢を怠らず、それぞれの武器を手に、瞬時に状況に対応した。
どんな怪物が出て来るのか……と力強く武器を握り締めたが、
「~~~~ッ! ……あっ? おまえら早く逃げろ!」
「え?」「は?」
飛び出したのは、死に物狂いでパーティーの間を走り抜けた、一人の青年であった。
状況が掴めず、呆ける三人。しかし、説明を聞くよりも数段早く察せられる展開が、自分の頭で整理するよりも早く訪れた。
グゴッフゴッフゴッ
斜め上から天狗鼻の巨人が、巨大な四本指の手とセットで現れた。
狩りは作戦を立て、罠を仕掛けてなんぼである。強大な相手になる程、その準備は入念にするべきだ。
このパーティーは、こんな怪物を討伐しに来たのではない。彼らは別の討伐依頼を請けてきたのだ。
「と……トロールだ! 逃げるぞ!」
「うわあ!?」「あのガキ!」
グオオオォォォオオオ!!
スミマセン。
『アイツら身代わりにすれば助かるな』って、それを本当に実行してしまって、本当にスミマセン……!
─別の場所─
「ロインだけ置いて行っちゃいましたね。大丈夫でしょうか」
「ま、危なくなったら他の冒険者に擦り付けるだろ。私ならそうする」
「……トロールでもまあ、心配っちゃ心配だな。ぺちゃんこになって埋まったらどうする?」
「涙を出し惜しんで金だけ奪う」
アイシャのどうしようもない発言により、一同沈黙する。
残りの二人は『平常運転か』と、遺体となっても容赦ない扱いを受ける男に同情した。
「しゃーない、助けに行くか。危険だけど、解決策があるんだが……やってみるか?」
「あ、情けはあったんですね」
「一つ言っておこう。『情けは人のためならず』だ。一応、後輩は私の生命線だからな。囮にもなるし」
結局、自分のためですか。
アイシャが提案した『ロイン救出作戦』は、危険極まりないものでした。
あのアイシャが、身を危険に晒す方法を摂るとは、にわかに信じられませんでした。
この作戦は、『他のトロール』を利用したもの。
トロールの雄は縄張り意識が強く、テリトリーに侵入した他の雄を追い出すため、力比べで決着をする。また、好条件の縄張りを奪い合う際にも争いをする。
その習性を活用すれば、トロール同士で喧嘩が始まるから、別個体のトロールを引っ張ってこよう、という作戦です。
……別個体を探している間も、ロインは死と隣り合わせな訳ですが……。
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