二十二話 異常な早さでの昇格
─集会所(俺側)─
無事に帰還した。今回はきっちりと素材を剥ぎ取ったため、報酬金は貰える。死の淵を垣間見たが、これで十万ジルって……俺の命が安く感じる。
依頼の達成報告をしに受付へ。相も変わらず、他所からの視線が痛い……ということもなく、ごく自然にそれぞれの時間を満喫している。
いつも通りの受付嬢さんの窓口へ。
「すみませーん。依頼、達成しました」
「あ! ロインさんですか! 実はですね、討伐依頼、それも『緑位』ではとても危険な依頼を達成したことで、青位への昇格が認められます! おめでとうございます!」
なんと。まだ一週間も経ってないが、遂に階位が上がったか! これは大変喜ばしいことだ!
ていうか『とても危険』って、そりゃ変だと思ったよ。新米冒険者用の依頼にしては、ガチで殺しに来る怪物ばかりだったし。採取依頼とか何一つ請けなかったからな。
やっぱりアイシャに依頼を選ばせるのは良くないな。
……あれ? 今振り返ってみたが……俺、依頼の最中何もしてなくね?
「つきましては、ロインさんのパーティーメンバー全員が青位に慣れますので……皆様が集まってから、またお越し下さい」
「あ、ありがとうございます」
なんか働かずして昇格している気分だ……。こればかりは、初期からから付き合ってるアイシャに申し訳ないな……。
まあ恨みは山積みだが。なんならさっきも積算された。
「ま、私がいればこんなもんよ。私が加入して良かっただろ?」
「そう……だな」
お前に殺されかけた事が何度あったか……そこまで無かったわ。二回ぐらいか。
彼女のおかげであることは否定は出来ない。だが、アイシャに向けた得体の知れない負の感情が流れ込んでくる。
報酬金十万ジルは二人で分けた。懐が潤った……。
まだ十一時過ぎだが、一足早く昼食を食べよう。懐事情に関して気にすることは無いので、今日は昇格祝いとしてちょっと贅沢でもしよう。
「高い物頼もうかな。本当は夜の方が盛り上がるが……まあいいさ。セリスたちが来るまで待つか?」
「こんだけ金あっても、フカフカのベッドで寝ることは叶わない、と……」
「それは言うな。質問に答えろ」
─どこかの草原(銀髪、鬼人側)─
一方その頃。
「ロンゴ、どう処理するんですか? これ」
「鼻押さえながら聞くなよ……。ま、ドムデイロは依頼の対象だからどうにかするとして……問題はこっちのドラゴン」
「ハルムサント」
「ハルムサントだな。まさか倒せるとは思っていなかったからなぁ……。素材持ち帰って、集会所に報告するか?」
草木は薙ぎ倒され、草原は荒れ、視界がおどろおどろしい緑色の空気でコーティングされた箱庭に、無念に倒れ息絶えた巨獣を虚ろな目で眺めながら、二人の冒険者が相談をする。
「でもどうでしょう。ハルムサントは赤位の怪物ですし、色々と問題になるのでは……」
『緑位の冒険者』が赤位の怪物を討伐するという事例は過去にはごく僅かしか無いのです。つまり、『異常』です。
そんなことが起これば、あらゆる人物からの注目は最高峰になってしまいます。
「なんなら、あえて集会所に持ってって『え? コイツが赤位? そんなに強くなかったが……』って言えば問題ないだろ。一躍有名人だぜ?」
「……まったく。貴方はなんてバカなんですか」
私はニヤリと笑みを浮かべた。
─集会所(俺側)─
時計は七時を指している。言わずもがな、午後の、である。
あれから八時間が経過。
冒険者たちは、単独もいるが、大半が複数人で一つのパーティーを構成しており、打ち解けた仲間達と酒を酌み交わしたり、仲間内で盛り上がったりと、宴会のような華やかな雰囲気で包み込まれている。
「……アイツら来ねぇ。気になるな……。後輩、腕相撲しようぜ」
「俺はお前の思考回路が気になるな」
大丈夫かな。あの二人の魔法は強力(強烈)だし、ロンゴのパワーもあるから最悪の事態はおこらないと思う。だが、あまりにも遅いため、どうも気掛かりだ。
何事も無ければいいが……。
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