二十一話 乱入:荒野の砲台、バクガント
お詫び
この回の投稿を忘れていました。
前後の話が噛み合わず、ご名誉をおかけしました。
申し訳ありません。
地道な作業が始まった。照りつける太陽を背に広大な荒野で腰を屈め、石とバクレツイワモドキを見抜いていく。
ヤツらは刺激を与えなければ微動だにしないので、わざわざひっくり返したり突いたりする必要がある。
最初の一匹以降、全く見つからない。どこを探してもスカばかりで、動く石ころは姿を見せない。
キャクチョウは巨岩の影で一休み。勿論、手綱で繋がれていて逃げることはない。
「おーい、こーはーい。こっち来てくれー」
なんかうっきうきした声色の呼び声が聞こえた。嫌な予感が凄くする。
コイツの場合はそうでもないが、呼ばれたからには無視はできないので、素直に要望通りに行動する。
「どんな悪巧みを思いついたんだ?」
「ここにバクレツイワモドキがいるだろ?」
屈んだアイシャが指差した先には、なんの変哲も無い石ころが。だがきっと、これは駆除対象で間違いないだろうな。
「ああ、いるな。それがどうした? さっさと駆除しろよ」
「コイツを利用して面白い事をしようと思うんだが」
「そうか。やめとけ」
どうせ連鎖爆発でもするんだろ。お前が考えてる奇行は明白に分かるぞ。
暑くてイライラしているのもあり、こんな茶番に付き合ってられねぇ。
冷たくあしらって持ち場に戻る。再び石ころの選別作業に専念しよう。
そういやセリスらは大丈夫なのだろうか。ロンゴと二人きりということもあって、変な意味とかではなく、単純に不安だ。
「よっせい」
ドゴオォォォオオオンッッ!! ドゴンドゴンドゴオオォォオン!!
「アイシャゴルァア!!」
びっくりしたなあ!? 心臓止まるかと思ったぞ!
空気を振動させる轟音が押し寄せてきた。しかも四連続。
「おー、少なくとも三匹は巻き添えに出来たな。綺麗に掃除が完了したと」
爆発を掃除だと例えるのはなかなかの猛者だな。そういう系の時代背景の住人か?
「お前のマジでいいかげんにしろよ? 一緒に居るとヒヤヒヤする───」
グゴゴゴゴゴゴゴ…………
爆発が要となったかのように、地響きが訪れる。
両足で立つこともままならない程の震動は、次第に大きくなり、まるで震源地がすぐ側にあるような感覚に……。
「お、おい! なにか来るぞ!」
「私、なにかやっちゃいました?」
「いつもやらかしてるんだよお前はよぉ!」
ドオォォオン!
視界の片隅にあった塊が、周囲の土を盛り上がらせながら左右に震えた。
地中から土をかちあげ、砂の柱を造り出して、地響きの正体が全貌を現した。
砂岩に擬態できる赤茶色の外殻は全身を守り、強固な岩石の如く一切のヒビがなく、流れ落ちる砂埃を貫く。窪みから這い上がった前脚は、ヘラのようになっており、爪は石器のはめ込んだよう。額には二個の大きなコブが付いており、口内には人間のような歯が揃っている。
上半身だけ地面から出して、こちらの様子を窺う。見ただけで、動きが鈍い事が予想可能だ。
「落ち着け。コイツは『バクガント』だ。下手に刺激しなけりゃ、襲ってはこねぇ。ゆっくり下がれ。絶対に走るなよ」
「お……おう……」
焦らず慎重に、着実に距離を開ける。緊張により、一歩一歩後退する時間が長く感じる。
「いいか後輩、何があっても目をそらすな……おっ?」
「えっ?」
別の物に興味が湧いたような声がした。不覚にも、釣られて同じ方向を見てしまった。
視線は後ろ斜め下。二人が凝視するそこには、黒い煙が流れ出る禍々しい石ころ。
この石ころが秘めている、莫大な破壊力は熟知している。なんせさっき見たから。
「えっあっ」
アイシャに助けを乞おうとしたが、横には彼女の姿形がない。
なんと彼女は爆走していた。バクガントから離れるように。
「おまあああああああっ!」
グロロロロオォォォォオオ!!
いち早く危険を察知した、赤髪をなびかせながら逃亡するアイシャを追う。
ドゴオオォォオン!!
「また見捨てやがったなあああああ! 『私がいれば死ぬことはない』って言ってただろおおおおお!」
「逆に言えば私がいなければ死ぬ可能性はあるんだよ! 命が惜しいから私は逃げる! 以上!」
あのクソアマ、生かしちゃおけねぇ。
バクガントはというと、口をがっぽりと開け、赤熱した口内から人間目掛けて火球を飛ばした。
ドオォォオン!
「ひいいいいいい! 死ぬアッヅ!!」
命中はしなかったが、着弾した火球は破裂し、灼けた破片を撒き散らした。不幸にも破片が腕に被弾し、焼きごてを押し付けられるような痛みを味わうことに。いや味わってはないが。
その後、射程圏内から脱出し、しばらくしてからバクレツイワモドキを駆除しに戻った。
バクガントは追ってこなかったものの、腕に火傷痕が残ってしまった。




