二十話 道にはびこる爆裂注意!
─どこかの草原(銀髪、鬼人側)─
「おい小娘。ドラゴンが乱入してくるなんて聞いてねぇぞ」
「あれはドラゴンではありません。ワイバーンの一種、『ハルムサント』です」
小娘呼ばわりは止めて頂きたい。
ハルムサントは凶暴な捕食者。どんな環境にも適応出来る、『空の覇者』の称号を持つ怪物だ。
刺々《とげとげ》しいシルエットの全身は、見た者を震え上がらせるほど勇ましく、獰猛な印象を与える。全身は黒に近い青。体長は十メートルを超え、翼は飛ぶことに特化している。後脚は、獲物を掴み易いように鳥のような形状をしている。
現在、私達の討伐対象は、天空から舞い降りた一頭の怪物によって捕食されかかっている。
空からの急襲によって、私達は退避せざるを得ない展開になってしまいました。
遠くから勝負の行く末を見守っているのですが、その迫力はなかなかのもの。食糧にありつき猛攻する狩人と、易々と喰われてなるものかと抵抗する巨獣の攻防は、激戦と呼ぶに相応しいものです。
双方生き残りを賭けている姿は、言葉を呑みます。
……ちょっとさじを投げても問題ないかな?
そう思って両腕をコッソリと伸ばした時、
「なあ小娘。俺、あのドラゴンにすげぇちょっかい出してぇ」
隣で二頭を観察するつるりんちょが馬鹿げた事を言いだした。
頭つるりんちょはそう言うと、右手から汚水のように濁った緑色をしたオーラを纏い始めた。
風魔法を放つ気ですか!
そんな事をしたら、こっちの危険が危ないって分かるでしょう。ダメに決まっています!
「……実を言うと、私もそのつもりでした……!」
そう。ダメに決まっているからこそ、それを実行したくなるのが人間というもの。
この本能には抗えません! 唸れ! 私の特大風魔法!
私と鬼人は何の躊躇いもせず、組み合う怪物に向けて魔法を解き放った!
─荒れ地(ロイン一行)─
舞台は荒れ地。見るも無惨な一帯は、草木は僅かで地肌が露出している。
ナキムクロの依頼の時より遠くの地、そこに行き着く為にキャクチョウを借りることにした。
乗ってみると、それはもう快適。なびく風が身体を包み、自力で全力疾走するよりも断然速い移動速度。操作を誤ったら振り落とされてしまう。
どういうワケか、俺のキャクチョウはやけに張り切っている。キャクチョウ舎の管理人に操り方を教わったが、どんなに命じても、自慢の移動速度を緩めない。むしろボルテージが高まっている。
顔は凄惨なものになっていただろう。
「おい後輩、速すぎだってば」
「コイツが言うことを聞かねぇんだよ」
キャクチョウから降りて、専用の杭を地面に打ち込む。そこに手綱をくくり付けて、キャクチョウが逃げないように固定する。
ついでに、おやつもあげよう。
「さて、『バクレツイワモドキ』の駆除だが……後輩、地雷処理班になれ」
「『班』って事は、お前も一員だな? リーダーから命ずる。お前が犠牲になれ」
バクレツイワモドキ……名前だけで容易に想像できる。岩みたいな外見で、なおかつ爆裂する。
アイシャによるうんちく。
バクレツイワモドキは、腹部に備わる噴出口からガスと火薬を噴き出し、発達した大顎をつかって、猛スピードで打撃を起こして火花を散らし、その火花に引火したガスと火薬が爆発を起こすのだと。
緑位(初心者)に請けさせて良い依頼ではないだろうよ。
周囲を見渡すが……確認出来るのは、薄橙色の土と大小様々な岩。点々と植物も生えている。
「岩に擬態してるから、うっかり踏んだ運搬車が被害に遭ってるんだと。死者も出てるし、数も多いらしいよ。帰ろうかな」
「お前が選んだ依頼だ。責任持て。……というか、岩に擬態してるんだったらどうやって特定するんだ?」
「はっはっは。……ま、それはこのように」
そう言うとアイシャは、足下に転がる掌大の石を掴んだ。
「この石を投げ当てて、ガスが出た岩を砕くのみよ」
「ほーう。ま、それが妥当か……ん?」
目の錯覚だろうか。アイシャが掲げている石から、黒いモヤのようなモノが漂っている。重力に負けて落ちていることから、空気より重いことが分かる。
「……なあアイシャ、もしかしてそれ……」
「お?」
なーんか、折り畳んだ六本の脚のような物が見える。
「あっやっべ」
アイシャはそう呟くと、手に持った石を空高く投げ飛ばした。
「走れ後輩!」
「えっええっ!?」
言われるがままに、アイシャが石を投げた方向とは真逆に疾走し始めた!
何事かと聞く前に、次の事態は想定出来た。
大きく弧を描いた石は、地面に落下する前に……
カキンッ
ドゴオォォォオオオンッッ!!
金属音を響かせた途端、盛大な爆発を生み出した。
五体満足に帰れねぇぞこれ! 当たったら即死だろ!
「とまあアレがバクレツイワモドキだ。十匹の駆除で十万ジルだったか」
「お前……死にそうになったのによく冷静でいられるな……」
そりゃ設定金額も高いだろうよ。トストプとか比べものにならねぇよあんなの。
「よっし、さっさと終わらせて帰ろうか」
「お……おう……。余計なことはするなよ……?」
……肝が座ってるなぁ、この人は。
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