十九話 その不穏、大地の歩み
この上なく要らない雑貨を買わされた。
最初は塗り薬だけと会計をしていったのだが、あれよあれよと宗教勧誘並みの商品の宣伝が為され、
あ、これ買わない限り続くヤツだ。
と察したため、塗り薬とよく分からない物を強制的に買わされた。説明は聞いていなかったが、よく分からない小箱? のような物。開かない。
これは訴えても良いと思うんだ。
こんな店二度と来ないと誓い、沸々と炊き上がる怒りを押し殺して店を出る。
悪評でも流してやろうか、と企んでしまった自分がいたが、まあいいさと言い聞かせてアイシャとともに集会所へ回帰した。
─集会所(俺側)─
時刻は八時半、セリスらと別れて一時間が経過したようだ。あの店にいる間は、不思議と時間が長く感じたものだ。
「さーて、やることがなくなったんだが……アイシャ、依頼でも請けるか」
「そーだな。セリスの敵討ちにストンロクスの討伐でも行くか」
「セリスは現役だからな?」
そもそもストンロクスは赤位だろ。身の程を知れ。
朝に来た時より、集会所にいる冒険者は多くなった。ざっと十人は超えているだろう。
会食をしているのか何なのか、それぞれの事情は知りもしないが、ワイワイガヤガヤと賑わい始めている。
まだまだ緑位なので、依頼を請けても報酬はパッとしない。これからどんどん昇格していかねば。
「おーい、トロールの撃退が」
「却下」
─どこか遠くの地─
空飛ぶ気球……いや、船といった方が正しい造形をした乗り物の中に、
「……む? なあオイ、コイツを見てくれ」
「なんだ? ワイバーンでも接近してきたか?」
黒い髭を濃く生やした身長の低い男と、彼の呼び掛けに応える、頭が寂しい背丈の高い男が。
髭の男は渋い顔をしながら、手に持った棒状の器具を相方に見せた。何かを記録出来る物のようだ。
「……コイツは……震動か? なんとも不自然に揺れているが……」
「そうだろ? ここらじゃ地震も起きねぇし、これほど広範囲に大きな震動を起こせる怪物はいねぇ」
「妙だな……一応、集会所本部に連絡するか?」
「そうだな。何か誤作動を起こしたのかもしれんが───」
グオォォオッッ! グオッ! グオッ!
不測の事態に悩んでいると、ナニカが声を出して飛来してきた。
華やかな彩りを持った怪物が、近くを通り過ぎた。
全長は四メートル程、全身は緑色でクチバシがある。背中は羽毛で覆われ、尾先はヒョウタンのような形をしている。大きく広げられた翼には、長い爪が二本生伸びている。
骨格は、俗に言う『ワイバーン』のようなもの。
「ジャグワンが向かってきたぞ。餌になれよ髭」
「突き落とすぞハゲ」
─集会所(俺側)─
「この依頼お願いします」
「あ、ロインさんですね……。えっと、依頼、頑張って下さいね!」
目を泳がせているが、大概悪評でも流されたんだろうな。十中八九、俺のパーティーメンバーについて。
なんか『お気の毒に』とでも言いたそうな気まずい表情をしている。
俺も好きでこんな人材を集めてるんじゃないんだけどなぁ……。
「私が居るから大丈夫。コイツが死ぬことはねぇよ」
お前がいるから窮地に陥るんだよ。諸悪の根源がなにをぬかす。
「ははは……そうですか……」
ほれみろ、苦笑いをしてるじゃねぇか。出来れば話しかけられたくなかったって顔してるぞ。
一体感どれだけ評判が悪いのやら……。
俺はお前がいるせいで大衆から哀れみの情をかけられるんだから、少しは配慮して欲しいものだ。
「それじゃ───」
「じゃ、行くか! 今回もちゃっちゃと終わらせよ!」
「お気を付けて……」
頼むから、少し黙ってろ。
指摘、感想等が御座いましたら、誰でもお気軽にコメントをして下さい。




