十八話 道具屋へご案内/重量級の大食漢
場所は道具屋。数多くの冒険者がお世話になっている店舗の一つ。
傷薬や飲み薬、携帯食料に煙玉。ありとあらゆるアイテム達が、決まった棚に並べられている。
少し大きな物は壁に掛かっていたり、天井に吊されていたりもする。
入って正面には、顎髭を生やした気前の良さそうな店主が。新聞を広げて椅子に寄りかかっている。
「いらっしゃい。爆薬は品切れだよ……って、アイシャじゃねぇか。また新しいパーティー見つけたのか」
「ようオッサン。髪の毛、少なくなったか?」
「おっ! よく気がついたな! 出禁だ。帰れ」
何も言わずに、速やかに店を出るアイシャ。
「いらっしゃい、若いの。何が欲しいんだい?」
「あ、テントってあります? 出来るだけ持ち運びが簡単で大きいヤツ」
「いやいやまてまて。私を放っておくな」
この店主はアイシャと特別仲が良いのか、ただの常連なのか、一般の人にはしないようなやり取りがされている。
「すまねぇがテントは品切れだ。昨日売り切れてな、仕入れがまだ出来てねぇんだよ。ごめんな」
「なん……だと……」
昨日までに買い求めてたら無事入手出来てたのか……っ!
なぜだかとてつもない悔しさが滲み出る。
仕方ない。求める物は揃っていなかったが、相場ぐらいは分かるだろう。訪ねて、お金が足りなかったらその分依頼を頑張ろう。
「ちなみに、テントっていくらぐらいするんだ?」
「二十万」
「えっ」
「二十万だ。それ以上でも以下でもねぇ」
「おいオッサン、とうとう詐欺にまで手を染めだしたのか」
二十万はオカシイだろ。アイシャの反応からするに、これは適正な価格ではないようだ。ぼったくりをされそうになっているのか?
「いやいや、ちゃんと理由があるんだよ───」
─どこかの草原─
「小娘! そっち行ったぞ! 逃すなよ!」
「お任せを!」
小娘と言うのは止めて頂きたい!
少女と巨漢が、一頭の怪物を仕留めに共闘している。
その獲物は体長六メートル程、四足歩行の巨大な怪物。
全身は茶色を基調とした体色。ブヨブヨとした肉厚の皮膚が垂れ、頭部から尾先までに波模様が走っている。
四肢は太く寸胴の持ち主。そして亀のように平たい頭をもっている。尻尾はスコップのような形状をし、首元にはイボが生えている。
手先には、凶悪な鉤爪ではなく、先端が丸い爪を持っている。
「ていや!」
私の計画ならば、ここでこうすれば……!
銀髪の少女は、向かってきた肉塊の足下に土魔法を発動させ、
グオォォッグオォォッ!
両前脚をドロドロの黒褐色のナニカに沈め、これ以上の進行を防いだ。
やった! 数少ない土(泥)魔法が活躍した! 私にかかれば『ドムデイロ』だってこんなもんよ!
自然界ではあり得ない現象に、その怪物はパニックを起こし、動かせる機能を出し惜しみなく動かした。
「うわっ危ねぇ!?」
尻尾側にいた肌が赤い巨漢は、無雑作に振り回される尻尾に翻弄され、下手に手出しが出来なくなってしまった。
側面に回ればいいものを……。
今のドムデイロは回避が出来ない。ならば! 私の雷魔法でも当たるはず!
「せえええいっ!」
両腕に力を集中させ、宙を駆ける稲妻を呼び出す。
いつもなら的外れな方向へフライアウェイしていくけど、今回だけ私の意思の通りの正確な軌道を辿ってくれるはず!
放たれた稲妻は真っ直ぐにドムデイロに向かって……行くのではなく、ドムデイロの左側を通り抜け……
「そうだ横から殴ればいいじゃんぬわああああああああああ!!!」
「あああああああああ!! ロンゴごめえええええええええん!!!」
偶然、天才的な解決策を編みだした一人の鬼人が、悪事を働いたわけでもないのに天誅を与えられた。
彼には、未だかつて体験したことのない『痛み』が全身を襲っているでしょう。
本当にごめんなさい。
不謹慎ながらも、ちょっと笑っちゃいました。
─道具屋─
「────っつー訳でな、テントの材料が枯渇してんだから生産も追いつかねぇ。物価も上がっちまったんだよ。そこの革袋だって、普段よりちょっと割高だ」
「なるほどなぁ……しょうがないか」
「そうだな。後輩、集会所に戻るか」
「おっと待ちな、お二人さん」
「ん?」「あ?」
まさか特別に用意してくれるとか、まけてくれるとか───
「なんか一つ、買って帰れ」
えっなにこいつ意地汚ぇ。
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