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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第二章 [苦難極まる冒険者生活]
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十七話 道具屋に行かねば

「……んあ……朝……か……」


 アルメス城城下町、朝は清々しくない。陽光はそり立つ壁に遮られ、昨夜就寝した路地裏はやや湿り気がある。ひんやりしていて気持ちいいのは、数少ない利点であった。


 上半身を気怠げに起こし、周囲を見渡すと、


「……あれ?」


 セリスは俺の荷物を枕にして、並んだ木箱の上で横になって寝ているが、残りの異端二人の姿が見当たらない。


 嫌な予感がして腰に吊した財布を手に取り、その中身を確認するが、お金は盗まれてはいなかった。


 ひとまず、セリスを起こそう。肩を揺する事はせず、声を掛けるのみで。


「おーい、起きろ。もう朝だぞ」

「……ん……まだ食べれますよ……」


 テンプレから少し外れた寝言を……。


 無理矢理起こすのも悪いし、自力で目覚めるのを待つか。


 奴ら二人はどこにいるんだろうな……集会所か? それが一番可能性が高いな。道具屋に行ったかもしれんし、適当にフラフラと出歩いているかもしれん。


 何にせよ、不祥事だけは起こさないで欲しい。全部俺の責任になるからな。


 ……この娘の寝顔、かわいいな。なんともまぁ、守ってやりたくなるような。どんな荒くれ者でも、この顔を拝見したら力で解決する手段を手放しそうだ。


「…………」

「……あぁ……ロインがドブ溜まり虫になっちゃった……」


 鼻摘まんだら起きるかな。乾燥したらいけないから口も押さえておこう。


 至って冷静に、落ち着いて気道を塞ぎ、彼女のお目覚めを待つ。


 段々とセリスの眉間にシワが寄せられていく。


「…………ッッ! っはがっ!!」

「おはようさん。良い夢見てたか?」

「なんか……凄く苦しい夢を見た気が……」


 可哀想に。とても怖い夢を見ていたのだろう。


「アイシャとロンゴ知らないか? 朝起きたらいなかったんだが」

「知りませんね。先に集会所で朝ご飯を食べているのでは?」


 やはりそう考えるのが妥当だろうな。金も盗られてないし、今は安心しておこう。


「よし。朝食も食べたいし、集会所に行くか」


 人気が全くない、暗い路地裏から顔を出し、朝日が射し込む明るい大通りへ。早朝かどうかは分からないが、人々は道を行き交っていた。


 道具屋……は後でいいだろう。隣を歩くセリスと雑談をし、集会所へ。


 扉を開くと、昨日と同じく職員の方が挨拶をしてきた。


 席は隅から埋まり、中央付近の席には誰一人として座っていない。受付嬢の方々は、仕事仲間と私情を含んだ会話をしている。


「静かですね。皆落ち着いています」


 時計に目をやると、針は七時半を指していた。


 見渡す限り、冒険者は五名しかいない。そんな少数の冒険者の会話から、聞き覚えのある声が混じる。


「……その時私は怒りのあまりに気を失って、気付いたら相手がボコボコになって私は返り血を浴びていたんだよ」

「おいおいマジかよ。強ぇんだなオメェ」

「まあ嘘だけど。こんな話を信じるとか笑えるわ」

「おいおい嘘かよ」


 他人のフリしておこうかな。同じパーティーメンバーとして、聞いてるだけで恥ずかしい。


 一段とはっきり聞こえた声の方向へ顔を向ける。直線上には、長机を間に、向かい合って長椅子に座った人物二人が。


 ただでさえ目立つんだから、声を抑えてもらいたい。

 とりあえず挨拶でもしておこう。


「おはよう、お二人さん」

「おはようございます」


 話に夢中だったが、自分らへの挨拶だと分かったようで、あちらも挨拶を返す。


「おっ、来たな。おはようさん」

「よう! 遅かったな!」


 随分早いと思うんだが。


 とりあえず朝食を頂こうと、偶然通りかかった職員を呼び止め、パンの朝食セットを注文する。


 セリスも同じ物を所望した。


 先に来たアイシャとロンゴは食べ終わったそうなので、俺ら二人が朝食を食べ終わるのを待つ、とのこと。


 しばらくして。目玉焼きとハム、葉菜が挟まったサンドイッチに加え、細かく刻まれた野菜が入ったスープが、二人分配膳された。


「後輩、今日はどうする? そろそろ大物を狙いたいんだが」

「まずテントを買ってからな。流石に連日屋外だと骨が痛いんだよ」


 先程は後で良いと思っていたけど、宿屋の前例がある。やっぱり早急に行った方が良いかもしれない、と考え直した。

 寝返りをうっても、朝起きたときには全身が痛い。下手したら骨が折れるのではないか、という程度には痛い。この問題は早急に対処したい所だが……そもそもテントが売っていなかったらどうしよう。


 宿屋は当分……というより、部屋が空いた途端、他の冒険者による競争が始まるだろうから、無いも同然である。


「あー、それなら良いとこ知ってっぞ。後輩、一緒に回ろうか?」


 なんか妙に優しい……裏があるのではなかろうか。


 まあ期待はしていないが、行ってみる価値はあるだろうな。


 食事を取り終わり、アイシャと俺、ロンゴとセリスで分かれて別行動をした。


 魔法を扱える二人組は、早速依頼を請けに行くとのこと。


 ロンゴは冒険者登録をしていないのでは? という質問を投げかけたが、ついさっき済ませたとのこと。


 その無駄に早い行動は何なんだ。生真面目か。

 

 ひとまず解散という訳で、それぞれのタイミングで集会所を後にした。


「おい小娘、この[トストプの親玉の討伐]なんだが、最近、親玉だけで暴れ回ってるってあるが」

「ふ、不思議なこともあるんですね……」


 去り際になんか聞こえた。


 原因が俺たちかもしれない何かが。



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