十六話 パーティー爆誕
街に入るや否や、銭湯へ直行した。勿論、男女別々で。出入り口にナキムクロの死骸を放置するなと注意され、四人とも風呂を済ませ、その後に集会所へ足を運んだ。
未だに臭いが付いている気がする。衣服に染み込んだか。
「おい……あのパーティー、色々とすげぇぞ……」
「ああ……あのサイズのナキムクロもそうだが、人間じゃない奴がいるな……。もしかして、鬼人ってヤツじゃねえか?」
「イカれた赤髪に、魔法が微妙な銀髪、それに加えて鬼人か……。異色すぎるパーティーだな……」
今回の依頼の報酬金を頂くため、ナキムクロを丸々一匹受付へ運ぶ。ヒソヒソと陰口を言われているし、周りからの視線が辛い。
今回もアイシャしか活躍していなかったが、報酬金は山分けをするということで片付いた。
リーダーである俺は多めにだが、それぞれの財布にちゃんと収められた。
「……あれ? 俺の金がねぇ……」
ロンゴが何かを呟いた。犯人を知っている気がしたが、知らぬフリをしておこう。
討伐した怪物の肉を、この場で料理にしてくれるとの事なので、遠慮なく振る舞ってもらうことに。
先程まで生物であったモノが、数分後にはもも肉の照り焼きとして運ばれてきた。
……料理になるまで、速すぎでは?
「ところで、何故普段は温厚なナキムクロがロンゴを襲ったんでしょうね。縄張りに侵入しても、少し威嚇するだけであんなに凶暴にはならないのでは?」
「それに関しちゃ、つい先日あの鳥の巣を目の前で潰しちまってな!」
お前が元凶か。集会所から討伐の依頼が出る程って。
「それ以来、しつこく追っかけ回してきてな。逃げても逃げても昼夜問わずに付いて来るんだよ」
「なんで反撃しなかったんだ? お前みたいな鬼人なら簡単だろ?」
「なんでって、そりゃ楽しかったからに決まってんだろ? 常に逃げ惑う、常に全力疾走、常に危険と隣り合わせ! そんな楽しい状況なんだから、長く味わっておかねぇとな!」
あれ? この鬼人、もしかしてただの能天気?もしくはただの……。
「私には分かる。お前、さてはバカだな?」
「陽気と言ってくれよな! ま、本当はコイツの巣を破壊した俺の自業自得。何も悪くねぇコイツをいたぶるなんて、そんなひでぇ事は出来ねぇからな」
「バカは優しい」
アイシャ、お前少しも考慮しねぇな。
「……あの、一つ思ったのですが」
「ん? どうしたセリス」
「もしかして、私の長所と性能が被ってません?」
……ホントだ。怪力を扱えるという点で非常に酷似している。
セリスは体力を多く消耗するが、ロンゴにはデメリットが無い。完全にセリスの上位互換だ。
「そうだな銀髪。こりゃ解雇するしか……」
「どうするんですか! 私の力自慢が無意味になってしまいますよ! たった一つの、唯一真面に披露できる魔法だったのに……!」
骨付き肉を片手に、だいぶ焦った口調で、自分の存在意義を提唱するセリス。何故だか気の毒な気がしてきた。
「がっはっは! 安心しろ小娘。俺は力持ちっつっても、ストンロクスぐらいしか持ち上げられねぇからよ!」
「充分凄いじゃないですかあ!」
セリスが悔し涙を溢れさせている。この時点で力の差が明確になってしまった。
所詮は人間。いくら魔法の力を頼っても、鬼人族の圧倒的な素質には勝てないのだ。
……この鬼人、魔法使ってたよな。くっさいの。
「……なあアイシャ。魔法って限られた才能がある人にしか使えないんだっけ?」
「ん? まあそうだな。『限られた人』、ってのは間違いねぇけど、『才能』とは違うんだよな。魔法にゃいろーんな説があってな、一番可能性があるにはのは『鍛練したら得られる』っつー説だ。物覚えが良い時期に、どれだけ魔法に打ち込めるか、ってやつだな」
「へぇー……」
今までの人生を、何となく生きていた俺には縁の無い説だな。
「にしても、なんでロンゴの風魔法は臭いんだ?」
「多分だが……昔な、俺は体臭を気にしてたんだよ。だから体臭をどうにか出来ねぇかなーって思ってな、『臭いを飛ばす』練習をずっとしてきたせいだと思う」
要するに、奇行に走っていたら謎の魔法を使えるようになったと。魔法って怖い。
「な……ロンゴも使えるんですか!? 何で使えちゃうんですか! 私の長所を悉く奪わないでくださいよ! 私が居る意味が無くなっちゃうじゃないですか!」
水を飲み終えたセリスは、ロンゴによるその衝撃的な発言を聞いて、机を強く叩き、向かいに座る巨漢に愚痴を飛ばした。
そっか。あの時セリスは気絶してたな。
「ま、使えるっつっても、ちょーっと癖のある風魔法だけどな」
「落ち着けセリス。お前は風魔法以外にも沢山使えるじゃねぇか。そんなに扱えるのはお前だけだぞ? もっと誇りを持てって」
聞いた限り、使えなさそうだけど。
「ぬう……まあいいですが」
その後、パーティー内で会話を弾ませながら、ふと感じる事があった。
アイシャは現場での実体験があり、知識も豊富。剣、というより武器を扱い慣れている。
セリスは諸々の魔法を扱える。性能は不安定だが、いざという時に役立つと思われる。
ロンゴは単純に強い。それと風魔法も使えが、信じがたい程臭い。とにかく臭い。何故臭い。
比べて剣の腕も立たず、魔法は使えない、そんなリーダーがいるらしい。
……もしかして、このパーティー内で一番の無能は俺ではなかろうか。
夕飯を済ませて、四人で集会所を出た。すっかり暗くなった街中は、日が昇った時間帯とはまた別の雰囲気が漂っている。
民家の灯り、街灯の明かり、そしてそれらの灯りに反射する鬼人の頭頂部。
哀愁感のある夜道がそこにあった。
「そういや、道具屋に寄るっつってたのに、もうこんな暗くなってきたな。店、やってないぞ」
「依頼のせいでな?」
「今日一日だけで大分疲れましたよ」
「依頼のせいでな」
「何故か分からんが、服も臭くなっちまったしよ」
「お前のせいでな?」
なんでこんな奴らが一緒のパーティーに居るんだろうな……。
セリスはまだ常識的な思考を持っているが他二人。アイシャと、まだ詳細が明らかになってないがロンゴ。ちょっと頭が曲がった面妖な奴である。
はぁ……と疲れによる溜息か、不安による溜息か、どちらとも取れる溜息を吐く。
そうだ、一つ確認を。
「・・・・・・ロンゴ、宿って取ってある?」
「俺は元から野宿生活だ」
仕方が無いので、例の如く裏路地でひっそりと眠りにつくことにした。
こんな所で四人が寝転んでいるとは、なかなかシュールな構成である。
「……なんか臭くね?」
「悪かったって」
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