十四話 力の象徴、参上
未だにうずくまっている男性に近付く。微塵も動かず、果たして生きているのか死んでいるのか不明である。
「肌が……赤いな」
「肌が……赤いですね」
代表して俺が肩に手を掛ける。恐る恐る肩を持ち、ひっくり返して様子を窺い、声を届ける。
「あの、大丈夫ですか? 鳥はもう討伐したので……」
男性の顔色を拝見し、安否確認をする。が、口から泡を噴いて、さらに白目をむいている。素人目からしてもよく分かる。どうも無事ではないらしい。
「……ん? コイツ、角が生えてるぞ? ほらここ」
髪のない頭部、そして眉毛があるべき位置には、小指程の長さの突起物が。
そしてひっくり返す時は目に留まらなかったが、よくよく見たら、肩にも同じような突起物がちょこんと生えている。
「私は大方見当は付いてる。……おっ二万ジル発見。いただきっ」
「起きないのでしたら、私のランダムスポーン炎魔法で起こしましょう」
「待て。二人とも行動を止めろ」
さてどうしたものか。このまま放っておいても大丈夫だろうか。大丈夫だな。脈も息もあるっちゃあるため、勝手に目が覚めるであろう。しかし、置いていったら薄情な人間になってしまう……。
でも、変に助けて変な仲間が増えるのもなんか嫌だし。
よし、帰るか。
「みんな、ソイツは多分大丈夫──」
「……いっててて……主に腰が痛ぇ……」
「あ、起きましたよロイン」
腰を押さえながらむっくりと起き上がった、肌が赤い男。その身体は、見上げるほどの巨漢であった。二メートルは超えているだろう。
肌が赤い、筋肉隆々の大男。丸太の様に逞しい両腕、ズッシリとした体躯。顔はとても厳つい強面で、子供が見たら怯えてしまいそう。ピッチリとした、灰色のライダースーツのような装備を着ており、鎧が主流のこの世界では違和感がある。
背中には、メタリックな棍棒が斜めがけになっている。
「あ? オメェらは人間か……そうだ! 黒い鳥がいなかったか!?」
「あー、ソイツならあそこでご臨終。私の見立てだと、もあしかしてアンタ、鬼人じゃねぇか?」
「おうよ! 力の象徴、誇り高き鬼人とは俺の事!」
その力の象徴が、アイシャによって一撃で葬られたナキムクロに敗北してしまったのか……。
一気に威厳が無くなってしまったな。
それにしても、鬼人とな? 絵本や話で小耳に挟んだ記憶があるようなないような……。
「なあセリス、鬼人ってどんな種族だ?」
「鬼人は、彼が言ったとおり力の象徴とされる種族です。温厚な種族で、普通だったら森の奥に住んでいるんですが……なんでここに居るんでしょうね? それに服装も不思議ですし」
田舎からノコノコとやってきた俺でも分かる。この格好は不可思議であると。
セリスの疑問に対する答えは、本人かの口から直接発せられた。
「この戦闘服はな! 最先端の特注品で、激しい動きにも強い摩擦にも耐えられる素材で出来ている! 確か……『エムエロウ』の皮だったか? 動きやすくて、間接の可動に不自由はない! そんで俺がここにいる理由は……集落を飛び出して来たんだ。俺は戦闘と新しい物が好きでな! 退屈な所より、世界回った方が楽しいだろ?」
つまり、変化のない集落に居続ける事に嫌気が差して……、飛び出したってことは、誰にも相談せずに来たのか?
「そうだ! オメェたち、冒険者ってヤツだろ? 仲間に入れてくれねぇか?」
えっ……。ナキムクロに負けて情けない姿を見せた鬼人が仲間になっても……。
これ以上ポンコツは増やしたくないしなぁ……。戦力になる仲間が欲しいし、これは欲望だが、女性が来て欲しい。
「おういいぞ。勿論、ちゃんと仕事して貰うからな?」
「おう待てやアイシャ」
「ありがとな! 俺の名前は『ロンゴ』、これからよろしくな!」
とうとう決定権が与奪されるようになった。
しかし、何でこんなむさ苦しい鬼人を……まあいいか。男仲間が欲しかったところだし。
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