二十話 四月三十八歳《憧れの英雄》
「今日も依頼なのですか?」
早朝、身支度をしていると心配そうに声をかけてくれたのはわたしを気遣ってくれるのは隣いる栗色の髪を可愛くポニーテールで結い上げたわたしの同居人、ブラウニーのエマさん。
「はい、二人ともヴィリくんについて行くって張り切ってるから」
「エレナがしたいなら良いのですよ!でも我慢はしてはダメなのですよ!エレナはもう少し自分の意見を言っても良いのですよ!」
「我慢してるつもりは無いですけど、気を付けます」
「怒っている訳じゃ無いのですよ!けど...んー」
弟のカイはこの屋敷になってからは他の子と一緒が良いと言うので別室で寝泊まりをしている。
朝から内気なわたしの心配をしてくれるエマさんと話をしながら依頼をこなすために街外れに行く準備をして杖を片手に仲良く二人で朝食に向かう。
エマさんはエルフの里で出会って以来仲良くさせてもらっている。
この杖もエマさんがわたしへのプレゼントと言ってエルフの里でわざわざ頼んで作って貰った魔術師の杖でわたしがとても大切にしている品だ。
わたしよりも小柄でとても可愛い人だけど年齢はわたしよりもずっと年上でとても優しくてわたしにとっては本当のお姉さんの様な人
◇
「んじゃ、今日も行ってくる!」
「夕方には戻るよ」
さっさと食器を片付けて足早に食堂を出て行くアルくんとロベルくんに遅れてわたしも席を立つ。
「ヴィリ君、子どもたちはお願いします」
「うん、三人とも気を付けて」
屋敷を出る時に表まで見送りをしてくれるヴィリくんとエマさんに挨拶をして三人でギルドに向かう。
「今月は無理かもしれないけど来月には二星級に上がりたいな!」
「あぁ、屋敷も完成したし、もしかしたら明日にでも旅に行くってなるかもだしなぁ!」
「それは無いだろ!完成して一週間しか経ってないんだぞ!」
わたしの隣で歩くロベルくんが直近のわたしたちの目標を口にすると、数歩前を歩くアルくんが振り返り楽しそうに急かす様なことを言う。
わたしより年下の二人はとても仲が良くいつも軽口を言い合っている。
カイもわたしと居るより友達と過ごすことが多くなっていて、二人を見ていると友達と遊ぶカイもこんな感じなのかなぁ?と思ってしまう。
「そう言えば最近のエレナの支援は冷静って言うか、ヴィリが後ろに居るみたいって言うか....」
「的確ってことじゃ無いか?前より俺たちが戦いやすいからな!」
他所ごとを考えていると不意にアルくんが話を振ってきた、慌てているとロベルくんも同意し同じくわたしに水を向ける。
「そうかなぁ」
「あぁなんか自主練みたいな事やってるの?」
返事を返すわたしにロベルくんは何かしているのか聞いてきた。
「んー前にヴィリくんがロベルくんに言ってた魔法の役割についてと、わたしに言ってくれた全体を見るってことを意識して、わたしの場合...数が多い時は土魔法で時間稼ぎ、余裕があれば水魔法で攻撃って....」
「ん⁈意識してるだけかよ!」
「意識だけじゃないよ!屋敷に帰った後はエマさんに見てもらいながら魔力制御の練習とか」
わたしが思い返しながらひとつずつ整理し喋っているとアルくんが早とちりで過剰評価しそうになり、わたしは慌てて練習内容を口にした。
「あとはたまにフラミルさんが練習に付き合ってくれてる」
「フラミルさんが?どんな練習してんの?」
わたしの練習内容に興味が湧いたのか話の続きを聞きたそうに前を歩いていたアルくんも横で歩き出した。
「えっと、フラミルさんがわたしの周りで走ってくれて、わたしは一定間隔で土魔法のアースウォールで障害を作る。フラミルさんが変則で剣一本を抜いたら単独ってことだからわたしは水魔法アクアランスを打つ、剣二本だったら複数だからアースウォールを打つって訓練なんだけど..」
長々と説明するわたしの話を二人は腕組みをしたりしながらうんうんと静かに聞いていた。
「んーロベルもその訓練した方が良いんじゃないか?」
「そうだな、戦闘中結構迷っちまうことあるからなぁ、なぁ今度俺もその訓練参加しても良いか?」
「もちろん!」
「なら俺は今まで通り身体強化の特訓継続だな!」と拳を握り笑みを見せるアルくんに二人で同じく笑みで返し、そうこうしている内にギルドに到着してわたしたちは依頼の掲示板を確認する。
「ん"ーちょうど良さそうなの無いなー」
「そーだーなーんー」
アルくんとロベルくんが二人並んで掲示板の前で腕組みをして唸っている。
一歩下がって見ているとなんだか本当の兄弟の様で微笑ましく思いつつカイがわたしから離れて今は二人がわたしの弟の様な気になっていた。
「なぁ!坊主達、お前らあの新しくできた孤児院クランの仲間だろ?」
後ろから声をかけられて振り返るとギルドの酒場でよくお酒を飲んでいる冒険者の人達に声をかけられた。
「そうだけど、なんだよ!」
アルくんとロベルくんがすぐにわたしの前に出て冒険者の人と話してくれた。
「あ?なんだよ、そんなビビんなって!俺たちはお前達を応援したいと思ってよ!」
「良い狩場があんだよ、俺たちも一星級でよ!そこはあの裁定の羽ペンの素材に使われるシャドーオウルがいる森で結構楽に狩れて稼げんだせ!」
「え!シャドーオウル!三星級の?」
「あぁ!シャドーオウルは強くはねーけど自分より強い奴がいると逃げちまう、でも一星級なら棲家が分かれば取り放題なんだぜ!」
「そんなこと教えて良いのかよ⁈」
「あぁ、ほんとに俺たちはお前らを応援したくてよ!」
教えてくれる冒険者の人は見た目は酔っ払いだけど本当にわたしたちのクランを応援したいと色々教えてくれた。わたしたちはその冒険者にお礼を言って教えてもらった近くの狩場に向かうことにした。
◇
昼時、わたしたちは教えてもらった狩場で探索をしていた。
「全然いないじゃんかよ!」
「やっぱり揶揄われたんじゃないか?」
探し始めて一刻程が経った頃アルくんとロベルくんが朝の冒険者さんを疑い始めていた、わたしもなんだかそんな気がし始めて不安に思っていた。
「はぁーそんなうまい話はないってことかー」
アルくんはすでに諦めの様子で近くの木にもたれかかっていた。
「バキッバキバキー!」
アルくんが木に反動を付けて身体を離すのと同時に遠くない距離のところで木々が倒れる様な折られている様な音が聞こえてきた。
「なんだ!」
「デカいぞ!」
不穏な物音にわたしたちは警戒体制を取り物音から巨大な何かというのはわかった。
わたしたちが相手に出来るのは一星級で無理をしたら二星級。だけどこの辺りの二星級で巨大と言えばジャイアントスパイダーかジャイアントホースくらい。どちらもわたしたちでは討伐困難、そのことに二人も気付いたのか静かに後退し始める。
「GWEOooOWWwwoooo!」
後ずさるわたしたちに気付いていたのか木々を薙ぎ倒し姿を現した。
それは赤い鱗に覆われた巨体を持ち、鳥類とは異なる飛膜を大きく開いて咆哮した。
【ワイバーン】
わたしは初めて見ましたけど一目でそれがワイバーンだとわかってしまった。
「逃げろ!」
「エレナ!走れ!!」
足が震えて座り込みそうになるわたしの前に二人が飛び出して叫んだ。
「だっ⁈ダメ!二人も逃げるの!」
「さっきの音から一瞬だった、みんなで逃げても無理だ!」
慌てて二人の手を引こうとするがすぐに振り払われてロベルくんが冷静に状況を告げる。
「俺たちが出来るだけのことはやる、エレナは急いでヴィリ達に知らせてくれ!」
アルくんが腕に嵌めた丸盾を捨て両手で剣を握りわたしに背を向けたままに叫ぶ。
「だったらわたしも残る!わたしの役目は二人を死なせないことだから!」
「バカヤロ!俺達三人じゃ絶対無理な相手だ!早く–––」
「ロベル!来るぞ!!」
「くそっ、ゔっん–––!」
「ロベルくん!!」
わたしたちが言い争っていることなど知る由もなく、今相手にしているのは四星級の魔獣ワイバーン。
ワイバーンが戯れる様にその巨大な尾をわたしたちに叩きつけて来た。
振り出された瞬間にはロベルくんがわたし達の数歩前に出て大楯で守ってくれた。
しかしその巨大な身体の尾はとても太くて素早い、いつもは魔獣からわたし達を守ってくれるロベルは少し離れた木の幹まで吹き飛ばされていた。
「ロベルくん⁈」
慌てて駆け寄るといつも盾を持っていたロベルくんの左腕は肘から横向きに曲がっていて、右腕前腕も折れ曲がっていた。折れている右手は骨が飛び出し精霊の権能のおかげか少しずつ元に戻り始めていた。
「っ!ロベルくんしっかりして!」
かろうじて息はあり、意識が飛びかけているロベルくんに呼びかける。
「エレナ‼︎早く逃げろー!」
アルくんの声に振り向くといつも練習している身体強化で木々の間を駆け回りワイバーンの攻撃をギリギリで交わすアルくんがいた。
「早くしろ!身体強化もそんなに長く出来ないんだ!」
駆け回るアルくんで遊ぶ様なワイバーン、アルくんの顔にはもの凄い量の汗が浮かんでいる。
迷っている暇はない、でも二人を置いて逃げるなんて出来ない。
「慈愛の光よ、 彼者の痛みを癒やせ ──Heal」
ロベルくんにヒールをかけその場を離れる。
わたしの足はワイバーンに向かっていた。
「アルくんもう少し頑張って!」
「何してんだ!早く–––」
「時間を稼いでくれたらわたしが魔力を込めたアースウォールを作る!その隙に皆んなで逃げるの!」
「っくそ!わかった!早くしてくれ!!」
アルくんの返事を待たずに魔力に集中する、魔法は扱う魔力量に応じて魔力制御が難しくなる、込めた魔力によって勢い、威力も上がる、初期魔法だけどヴィリくんはわたしより早く高く厚くアースウォールを発動する。わたしは時間はかかるけど精霊の力を借りてなんとか同じ規模を発動出来る。
「アルくん!!」
「おらー!」
合図と同時にアルくんが瞬間移動のように身体強化でその場から飛び退く。
「土よ、我らを守れ──Earth Wall」
詠唱と同時にワイバーンの四方を囲む巨大な壁が迫り上がる。
「行くぞ!」
「うん!」
魔力を必死に込めたおかげで大量の汗と疲労感で膝を着きそうになる。
乱暴にわたしの手を引くアルくんと共にロベルくんの元に駆け寄る。
「ロベル!ロベル!しっかりしろ!逃げんだよ!」
「ん"っあぁ、行ける」
未だ完治しないロベルくんを二人で肩を貸して駆け出す。三人とも満身創痍になりながらその場を離れる。
「どーーーーーーわん!」
走り始めてすぐに後ろで爆発がした。アルくんと同時に振り返るとさっき作ったアースウォールが吹き飛ばされていた。
「GVayowwoooo!」
さっきまで耳に心臓が移動したかのように鳴り響いていたのに今度は胸の心臓が止まったかの様な感覚だった。
天に向かって咆哮する大きなワイバーン、吹き飛ぶ壁の残骸が雪みたいにとてもゆっくり降ってくる様に感じてた。
カイ、エマさん、ヴィリくん、皆んなの顔が思い浮かぶ。
わたしの肩からロベルくんの重さが消えたことに気づき横を見た。
勇気を振り絞る様に二人は剣を握り締め、覚悟を決めた顔をしていた。
そんな二人を見てわたしもワイバーンに向き直る。
今度はアルくんがやられるかも知れない。
またロベルくんがわたしたちを守り傷付くかも知れない。
今度は誰かが致命傷を負うかも知れない。
怖い。
泣いてしまいたい。
今すぐにエマさんの胸に飛び込んで抱きしめて貰いたい。
でも、そんなわたしの横には弟のように感じていた二人が逃げずに立ち向かおうとしている。
わたしだけが逃げる訳には行かない!
覚悟を決めて二人に並ぶ、震えて力が入らない両手で杖を強く握り締める。
隣にはまだ完治していないロベルくんは口の端から血が流れている。
身体の中がまだ治っていないのがわかる、早く見てあげたいのに目の前の敵がそれを邪魔する。
そう思い二人を見るとアルくんが優しくロベルくんの背中をトンと叩き敢えて力強くわたしたちに指示を出す。
「もう一度だ、俺が引き付けるからもっと硬いの頼む、ロベルはエレナを守れ!」
「わかった、任せろ」
「うん」
今度は三人で方向性を決めて立ち向かう、お互いのやるべきことを確認して覚悟を決めた。
「行くぞ!」
「大地よ、縛れ──Root Bind」
「GYAWAWAWAAAAAA!」
合図とと共に駆け出そうとしたアルくんだったけど突如巨大な木の根っこのようなモノに捕まるワイバーン。
「え!.....エレナ⁉︎」
何が起こったのか理解できずに固まっているとアルくんもロベルくんもわたしを見ていた。
「ちっ違う!わたしじゃないよ⁉︎」
驚く二人に慌てて両手も首も振って否定を返す。
「はぁああああー!」
ワイバーンの方から人の声が聞こえて三人で振り返ると騎士のような鎧を着込んだ剣士がワイバーンに切り掛かっていた。
ワイバーンはロベルくんを吹き飛ばした尾を剣士に向けて振るう。
「わしに任せな!」
剣士の前に飛び込んできたのは大斧を手に持つ少し小柄な戦士、数メートル押し込まれたけどドワーフの人が大斧でワイバーンの尾を受け止めた。
「な!なんだあの人達は!」
アルくんが剣を握り締めたままに叫ぶ。
「はぁっ!」
その間にも剣士の人がドワーフの人と入れ替わりワイバーンの尾の先を切り落とした。
「GWEOooOWWwwooooyywoooo!!!!」
切り落とすのとほぼ同時に拘束が破られその場から飛び立つワイバーン。
その光景を眺めつつ助かった安堵感と疲労によってわたしたちはその場で座り込んでしまった。
「大丈夫でしたか!怪我は⁉︎」
剣士の方が駆け寄り声を掛けてくれてハッと意識を取り戻すとロベルくんを見る。そこには少し日焼けたようなエルフの女性が既にいてロベルくんを見てくれていた。
「大丈夫よ、私が代わりに治療するからあなたも少し休みなさい」
「あ、有難うございます」
エルフの女性がロベルくんを治療してくれている間に他の方にもお礼をと思い立ち上がる。
「んっ、はぁ⁉︎」
あまりの疲労と恐怖のせいで腰が抜けてしまったようだった。
「無理に立たないで」
四つん這いでなんとか立とうとしたわたしに優しく声を掛けてくれたのは先ほどの剣士さんだった。
「ありがとうございます」
差し出された手に掴まり近くの倒れた木に座らしてもらう。
「助けて頂いたのにこんな格好ですいません」
「..........」
「.........ぁあ!すまない、仕方のない事だ、気にする必要はない」
頭を下げてお礼を言うとやはりワイバーンと戦って少し疲れている様子の剣士さん。
「やはりどこかお怪我をされましたか?簡単な治療魔法しかできませんが仰ってください」
「あっいや、怪我はどこも....少し疲れたているのかも」
「?では....あの、隣に座られます?」
「はは、お気遣い、感謝する。そうさせてもらうよ.....」
何故か急にぎこちなくなる剣士さんを不思議に思いつつ足腰が言う事を聞くのを待つことにした。
「君のお名前をお聞きしても?私はこのパーティー《セントフォース》のリーダー、ギルだ」
「え、あ!エレナと言います。この度は助けていただき本当にありがとうございます」
「いや、大したことはしていない、君たちが無事で何よりだ」
「.....いえ、わたしの所為でロベルくんが怪我を、あの時わたしが取り乱さなければあんな事にはならなかったのに.....」
始まってすぐに二人は何をしたら良いのか考えて行動に移そうとしていたのにわたしが足を引っ張ったからロベルくんは....
「それこそ仕方のない事、相手は四星級、取り乱したって誰も責めないよ」
「....ありがとうございます。でも事実です。最初から三人で協力していたらもっと上手く出来ていたはずです」
ロベルくんに謝りたくて早く歩きたいのに力が入らない。
「......」
「......」
「お兄さん達さっきは助けてくれてありがとなぁ!」
「あ!いや、大したことではないよ」
俯き悔しさから泣いてしまいそうでいると先に元気になったアルくんが剣士さんにお礼を言いによって来ていた。
「街に帰ったらお礼をするぜ!」
「いや、礼など...」
横に座ったままの騎士さんがアルくんと話し始めて一緒に寄って来たであろうドワーフさんと近くで控えていたのだろうケンタウロスさんも話に加わった。
「おい坊主、そもそも何でこんな所に居たんだよ?」
「え?あぁ、それが街の冒険者達にここがいい狩場だって言われてきたんだけどー」
「ふむ、もしや騙されておったのではないか?」
「はぁーやっぱりか」
「ここら一帯は最近ワイバンーンが棲みついて居るって話で低ランクには依頼が出てなかったと思うが?」
「な⁉︎....アイツら知ってて....」
「よければ街のギルドまで私達も同行しよう」
◇
その後足が言う事を聞くようになってすぐにロベルくんに謝罪をすると「お前の行動も俺の行動も間違ってない。回復役の仕事、戦士の仕事をしようとしただけだ。ただ皆んなが最初から諦めてたからダメだった。最初から協力してたら良かったのになぁ」と苦笑混じりに話してくれた。
対峙した瞬間から勝てないと諦め逃げたのがいけない。そう言われて少しだけ気持ちが楽になった。
ギルドに向かうと今朝方に掲示板の前で声を掛けて来た人達がまだ居た。
アルくんが剣士さん、ギルさんに教えるとドワーフの戦士ドグルさんとケンタウロスのヴォルドさんが二人づつ捕まえて引き摺っている。
「あとは我々に任せて」とギルさんが振り向きながら告げ、「あなた達も事情を聞かれると思うからその辺で休んでいなさい」とダークエルフのローサさんがわたしの両肩に優しく手を置き労ってくれる。
しばらく待つとギルさん達が出て来た。
「どうぞ、お疲れでしょうがもう少しの辛抱よ」
そして事情説明を少しするとすぐに解放されてその人達はどうなるのかと尋ねると冒険者資格は剥奪しどこかの領地の開墾作業をさせるだろうとのことだった。
ギルドの奥の部屋から出ると泊まっている所まで送ると言ってくれたギルさんに感謝をしつつもそこまでしてもらうは甘えすぎだと丁重にお断りした。
後日お礼をするとだけ約束しギルド前で別ることになった。
そしてわたしたちは重たい身体を引き摺りながらゆっくり帰路に着く。
途中から三人で肩を貸しつつ並んで歩いた。ボロボロになったお互いを見て今日の冒険譚を話して笑い合った。
怖い思いをしたのに今は三人で笑えてることに少しだけ涙が出て来た。
その時は予想も想像も出来なかった。屋敷に着くと三人で自分の目を疑った。
騒がしい屋敷の広い庭には血まみれで腕に沢山の矢を受けたフォーさん、さっき助けてくれたギルさんがヴィリくんと剣を交えて悪党と罵っていた。
今日の出来事が頭をよぎった。
ギルさんは命の恩人、でもヴィリくんもわたしたちの一番の恩人でフォーさんも大切な仲間だ。
なのに何故悪党と罵られているのか?
考えがまとまる前にわたしは飛び出していた。
「何しをしてるんですか!」




