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十二話 八月三十七歳《ギルド登録》

 故郷を立ってから二週間が過ぎた。

 去年も通った森を抜けて、緑の絨毯に山吹色の花を散りばめた草原を歩き小魚が暮らす小川を渡った。

 この景色を観ていると旅立ちを実感する一つの要素に感じていた。

 しかし長閑な景色にどこからか魔獣が現れる。子供程の大きさのソルジャーアント、群れを作るゴブリン、時には中級魔獣のダイヤウルフや大人と変わらぬ大きさの巨大なジャイアントアントが襲い来る。


 だが、一年前と違い下級魔獣程度なら危なげなく討伐できるようになっていた。

 ロベルが全線で精霊の力も借りつつ敵を引き付ける。その隙にアルが敵を素早く片付ける。エレナが傷を癒やし、敵が複数の時は水魔法や土魔法で足止めをする。三人だけで連携して戦う。

 それは森を出る前、父さんとエイクさんの助言によって決まった方針だ。


 「ヴィリ、お前は危険な時だけ彼らに手を貸せ」

 「皆が自分の力で戦えるようにならなければ意味がないですから」


 だから下級魔獣が出ると僕は後方から見守り、アル達が戦闘をすることになったのだ。

 必要な時だけ風魔法で援護をして致命傷になりそうな場面だけは手を出した。

 戦いを重ねるたびに三人の動きは目に見えて良くなっていく。

 アルの剣は力強く正確に。

 ロベルの守りは硬く屈しない。

 エレナの魔法は素早く仲間を支えた。


 「ふっ!」

 二匹のソルジャーアントとの戦闘では飛び掛かる魔獣を身体強化でアルが一刀のもと斬り伏せる。

 「ぐっうぅ!」

 もう一匹のソルジャーアントはロベルが足止めしていたが盾に体重を掛けられ押しつぶされる。

 「ロベルくん!」

 「任せろ!」

 エレナが牽制で放つ水弾がソルジャーアントに直撃すると二匹目が怯む、その隙にアルが切り掛かると戦いは終わった。

 「よっしゃ!」

 「一年前じゃ考えられねぇな」

 アルが剣を掲げて勝利を喜ぶとロベルは額の汗を腕で拭いアルに同意する。エレナも嬉しそうに頷いた。


 しかし、中級魔獣になると話は別で、ダイヤウルフ一頭なら三人だけでも倒せる。

 だが、群れは違う。

 四頭のダイヤウルフが現れた時は僕も加勢した。

 雷魔法のサンダーレイで一匹だけ残し敵の動きを阻害する。アル達はその隙に一匹ずつの戦闘を四回に分けて行った。

 「群れは……まだ無理だな」

 何とか討伐できたものの、全員息を切らしていた。アルが悔しそうに苦笑するとアルの言葉にロベルもエレナも否定できなかった。

 それでも確実に強くなっている。みんなも同じように実感していた。


 さらに二日後、ようやく僕らの目的地が見えてきた。

 高い城壁に人や荷馬車が絶えず行き交う大きな門。

 商業都市エイルドに戻って来たのだ。

 「よぉーし! ようやく着いたー!」

 「確かにちょっと遠かったな」

 アルが一番に門をくぐり、ロベルも笑いながら後に続く。

 エレナはカイと手をつなぎ、エマは馬に跨り微笑んでいる。

 「よし! まずは冒険者ギルドだ!」

 「ついでに素材も換金して宿を取ろうぜ!」

 三人は旅の疲れも限界だったがアルの提案に賛成し、まずは冒険者ギルドに皆んなで向かうことになった。


     ◇


 冒険者ギルドは以前見た時よりも大きく感じた。

 前回は外観だけを外から眺めたが今日はこれから中に入って冒険者登録をする。

 少しの緊張を感じながら重い木製の扉を開けて中に入る。

 (...ん?酒場?)


 身構えて入ったのに中では何人もの人が酒を呑んで談笑していた。

 「…ここって冒険者ギルドだよね?」

 「あぁ、冒険者ギルドであってるよ」

 ロベルにコソコソと確認を取ると苦笑を浮かべて教えてくれた。ここはギルドで間違いなく、どの街のギルドも基本は酒場が併設されているらしい。冒険者がパーティーとの集合場所にしたり、臨時パーティーを組んだり、報酬の分配をしたりするらしい。

 その酒場はギルドに入って左側、右側には素材の換金や納品をする場所があった。


 そして正面に受付が並ぶ。

 「こんにちは!冒険者登録に来ました。よろしくお願いします!」

 気を取り直して先に進み元気よく受付のお姉さんに挨拶をした。

 「あら、珍しい、エルフの子?こちらこそユウナと言います。宜しくお願いしますね」

 お姉さんはユウナと名乗り笑みを浮かべて挨拶を返してくれた。

 「冒険者登録でしたね、それではまず登録料として一人銀貨五枚を頂きます。」

 「はい、大丈夫です、四人分で金貨二枚」

 「金貨二枚確かに頂きました。では次に名前と出身地をお答えください」

 僕たち四人は順番に答えると、その後小さな水晶が運ばれてきた。

 「そしたら一人づつ、この水晶に手を置いて『裁定』と唱えてください」

 「?はい」

 何が起こるのだろうとドキドキしながら言われた通り水晶に手を乗せる。

 「…裁定」

 すると水晶が淡く光り、隣の羽ペンが勝手に紙へ文字を書き始めた。

 「おぉ!すげー」

 「これがあの裁定の羽ペン!」

 「!」

 僕の後ろでアル、ロベル、エレナがそれぞれ驚きの感想を述べていたがエレナは口に手を当て静かに驚いていた。

 「これは……」

 「こちらの魔道具は裁定の羽ペンと言ってステータスや熟練度などがわかります。基本は白い羽ですが国の記した戒律に違反した場合黒く染まり、罪状が赤字で記されます」

 実際、これは何なのかと疑問に思ってユウナさんに尋ねると笑みを浮かべて僕らに説明してくれた。僕は話を聞きながら羽ペンの動きを眺めていると、やがて美しい彫刻が施された銀色のペン置きへと静かに羽が舞い戻る。


 「え?四星級⁈....」

 「ん?どうしたの?」

 ユウナさんの呟きが耳に入る、顔を向けるとユウナさんは固まり隣の受付のお姉さんが近づいて来た。

 「この子、四星級なんです!」

 「え!すごいですね!もしかしてどこか高ランクパーティのお弟子さんとかでしたか?」

 ユウナさん達は羽ペンが書いた紙を見て驚いていた。

 「四星級だとすごいんですか?」

 さっきの説明には無かったけど多分強さのとかだと思うが念のため確認してみる。

 「あぁー、そうでしたね、失礼しました。星級とは冒険者の能力値を一〜七段階で階級分けしたモノです。そして星級についてですが冒険者として一人前の技量があれば一星級。熟練の冒険者程度なら二星級。街単位で一人か二人いるくらいの実力者で三星級。

そしてヴィリアルくんの四星級は領地規模でトップクラスの実力者という感じですね」

 「…ありがとうございます」

 一気に説明されて置いていかれない様に頭の中でメモを取り説明が終わった所でユウナさんの丁寧な対応に感謝を伝える。

 「やっぱヴィリはすげぇな」

 「いやぁ……」

 少しだけ呆れ気味なロベルに気まずくなり苦笑で返してしまった。

 「次は、アルフレッドくんやりますか?」

 「はい!」

 次は俺だと言わんばかりに並んでいたアル。ユウナさんがハニカミながらアルに声を掛けると元気に手を挙げて、そのままの勢いで水晶へ手を置き唱える。

 「裁定!」

 結果は一星級。

 続いてロベルがガシっと水晶に触れ、最後にエレナが優しく水晶に触れた。二人も一星級だった。


 結果を見たアルが肩を落とす。

 「やっぱ俺たちは一星級かぁ……」

 「ぶっ、まぁ駆け出しなら普通だろ」

 アルが口を尖らせ落胆し、それを見たロベルが笑う。

 受付のユウナさんも笑顔でロベルの言葉に同意した。

 「はい。皆さんは登録初日で一星級中位程です。十分優秀ですよ!」


 その言葉にアル以外のロベルとエレナがホッと安心したような顔になった。

 だが、次の瞬間にはユウナさんが難しい顔をして言葉を続けた。

 「ただ、一つだけご相談があります」

 「はい?」

 「ヴィリアルくんだけは四星級ですので、同じパーティで依頼を受け続けることは、あまりおすすめできません」


 その言葉を聞き、場の空気が一変した。

 「「「え?」」」

 「なんでぇー⁈」

 アルがカウンターに手を付き前のめりで聞き返した。

 急に飛び出して来たアルにも躊躇わず受付のユウナさんは丁寧に説明を続ける。

 「理由はいくつかございますが、まずヴィリアルくんの高ランク依頼に合わせれば、今の皆さんにはとても危険です。逆に低ランクの依頼だけを受け続ければ、ヴィリアルくんは十分な経験を積めませんし、皆さんもヴィリアルくんへ頼る戦い方に慣れてしまうと、いざという時に対応で出来なくなる恐れもあります」


 ユウナさんの言う一緒にパーティーを組めない理由を聞き、誰も何も言えなかった。

 言われてみれば里でも父さんやエイクさんにも似たことを言われていた。

 でも…僕は静かに口を開く。

 「…でも僕は、みんなと旅がしたいです」

 ユウナさんは我儘を口にする僕らに優しく微笑んだ。

 「そのお気持ちは素敵だと思います。だからこそ焦らず、一番良い方法を皆さんで考えてください。ギルドもそのためのお手伝いは出来ますから」

 その言葉に僕たちは小さく頭を下げた。


     ◇


 登録を終えた僕たちは換金を忘れて外で待っていたカイとエマの二人と合流し宿を取って夕食を済ませ、六人で一つの部屋へ集まるが誰も口を開かなかった。

 「..............」

 「..............」

 なんとも言えない重たい空気が部屋の中を圧迫していたが、やがてアルが頭をかきながら沈黙を破る。

 「でぇ……どうするよ、俺ら?」

 「..............」

 やや間を置きロベルが嘆息交じりに腕を組む。

 「俺は受付のお姉さんの言ってることは正しいと思う」

 「でも、このまま別々ってのも嫌だ!」

 ロベルの発言にすかさず嫌だと答えるアル。

 エレナも手を挙げて静かに頷く。

 「私も……皆さんと一緒がいいです」


 僕は四人の顔を見回した。

 「僕もみんなと一緒に旅がしたい、世界を観てまわりたい!」


 アルは拳を強く握り締める。

 「…だったら俺たちはもっと強くなる!そんで、ヴィリに追いつく!」

 「簡単じゃねぇぞ?」

 「だから燃えるんだろ」

 アルの決意のようなその言葉にロベルが苦笑しアルもロベルを見てニカっと笑い返す。


 みんなの顔に笑みが伝播し重かった空気が少しだけ軽くなった。旅は始まったばかりで越えなければならない壁はまだまだ高い。

 それでも僕たちは信じていた。

 仲間とならきっと越えられると。

 その夜、僕たちは遅くまで旅の未来について語り合った。




ヴィリアル・レイダル・ホルテンシア

四星級

項目数値

武勇672 四星

頑健648 四星

俊敏701 五星

精神689 四星

魔量731 五星

魔制675 四星


魔法適性

炎

風

土

雷

水

光

無


特記事項

上級魔法師

精霊術士

神獣契約者


契約神獣

(ミルス)


神獣の加護

【永劫脱皮(ヨルムレガシー)】

【知識循環(ロストアーカイブ)】

* 毒・病気への高い耐性。

* 自然治癒力が高い。


⸻


アルフレッド・ライナー

一星級

項目数値

武勇310 一星

頑健292 一星

俊敏284 一星

精神133 一星

魔量315 一星

魔制367 一星


魔法適性

無


特許事項

初級魔法師


⸻


ロベル・ウォーデン

一星級

項目数値

武勇286 一星

頑健318 一星

俊敏247 一星

精神342 一星

魔量336 一星

魔制318 一星


魔法適性

炎

雷

水

無


特記事項

 初級魔法師

 精霊術士

 精霊契約者


契約精霊

(リーヴ)

* サラマンダー生命の精霊

* 高い自然回復能力

* 炎・水・雷を司る精霊


精霊加護

《器官再生(ボディリカバリー)》

* 自然治癒能力向上

* 炎属性攻撃無効

* 水属性攻撃無効

* 雷属性攻撃無効


⸻


エレナ・シェパード

一星級

項目数値

武勇132 一星

頑健156 一星

俊敏112 一星

精神271 一星

魔量391 一星

魔制357 一星


魔法適性

風

土

水

光

無


特記事項

 初級魔法師

 精霊術士

最後まで読んで頂きありがとうございます。

今回でようやく冒険者登録に辿り着きましたがやはりヴィリの実力を加味するとこのくらいになるかと思われます。補足のお話として使える魔法は魔法制御(魔制)のレベルで制限しようと考えてます。正直悩み中です。

人間の一般冒険者でも魔法適正は無属性を除けば0〜1種類、冒険者の魔法師でも2〜3種類です。なのでもしかしたらエレナを破格で設定し過ぎてかもしれません。

その辺の匙加減が難しくもしかしたら変更してしまうかもしれませんがご容赦下さい。

楽しんで頂けたら幸いです。

もし気に入って頂けましたら私の励みにもなりますので、いつでも読めるようにブックマークをお願い致します。

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