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狂愛の魔王  作者: ラー油
4章:天敵

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73/117

73.犬猿の仲

 「遊んでほしいって、二人はそんな関係なの?」

 「いや、昨日初めて会ったよ」

 僕がそう答えるとノエルは頭を抱える。

 「昨日会った小学生の女の子に遊ぶように言われるって何をしたんですの?」

 そんなこと僕に聞かれても困る。

 「ノエルに言ってない、大成に言ってるの!」

 「まあ、暇だし遊ぼうか」

 「本当!」

 僕が承諾するとノエルは啞然とした目を向ける。

 「しょ、正気ですの?明らかに怪しいですわ」

 「大丈夫だと思うよ」

 「ふっふっふ、そういう事だから大成は借りていくよー」

 結月は煽るように腰に両手を当ててそう言うと僕の腕を引っ張る。

 「ま、待ちなさい!」

 「何で待たないといけないの?」

 結月がそう言うとノエルは言葉が止まる。

 「わ、私もついて行きますわ」

 「ダメ」

 「見てるだけだから」

 「いーや!」

 「まあまあ、ノエルも一緒じゃダメかな?」

 僕はそう提案するが首を横に振られる。

 「明日学校に行きたいなら今すぐ家に帰って」

 「私を脅すつもりでして?」

 結月は小さく笑いながら眼帯とサングラスを外す。

 「ゆ、結月、ストップ!」

 何をするかを察した僕は慌てて制止するが結月はマントを外して〈メデゥーサ〉の身体を見せる。

 「っ!」

 ノエルは声を出すより先に全身が石になる。

 「よし、これで邪魔者はいなく――」

 「誰が邪魔者ですって?」

 結月が言い終わるより先に石化をぶち破ったノエルが自分の腕に鎖を巻き付けてそう言う。

 「な、何で解除できるの!能力は何!」

 結月はムッとしながらそう聞くが僕も同じ感想を抱く。

 〈鎖の操作〉の能力なら石化を破れるとは思えない。

 つまり鎖に効能があるらしい。

 「この子は危険ですわ大成」

 「僕は平気なんだけどね」

 「平気って?」

 僕は肩を落としている結月の目を見る。

 「……石化しない?オンオフ出来るんですの?」

 「オンオフ出来るなら苦労しない」

 「そういうことね……」

 ノエルは納得したように頷くと僕達の後ろに回る。

 「理由は分かったけど納得したわけではないですわ」

 「何でノエルの許可がいるの」

 二人は険悪な雰囲気ではあるが和解した様子で歩き出した。


 「こんな場所があるのか」

 結月に案内された場所は外れにある小さな広場だった。

 「ここはね人が全く来ないの」

 結月はそう言ってマントとサングラス、眼帯を外す。

 「これをノエルに渡してほしい」

 「分かった」

 僕はサングラスを受け取ってノエルに渡しにいく。

 「何で大成は石化しないんですの?」

 「さあ、僕にも分からない」

 ノエルが結月に聞いていたが返答は無かった。

 「今回はちゃんと守りますわ」

 「そんなに気負う必要はないと思うよ」

 「これしよ!」

 結月はそう言ってテニスボールとボールがくっつく手のひらサイズの盾のようなものを差し出す。

 「懐かしいな」

 僕はそう呟きながら手のひらに盾をくっつける。

 「行くよー」

 僕はそう言って山なりにボールを投げる。

 「あ、う」

 結月は飛んできたボールを防ぐように盾を前に出す。

 「パン!」

 「と、取れた!」

 結月はくっついたボールを見て嬉しそうにするが僕とノエルは目を合わせる。

 「行くよー大成!」

 結月の元気な声と同時に飛んできたボールを受け止めるように盾を前に出す。

 「行くよー」

 僕はそう言って次は山なりではなく遅いスピードで真っ直ぐ投げる。

 「っうぅ」

 結月は飛んできたボールを怖がるように地面にしゃがみ込む。

 「あ、ご、ごめんなさい」

 結月は怯えるようにそう言うと慌ててボールを拾いに行く。

 「結月」

 僕は名前を読んでゆっくり近づく。

 「あ、う」

 狼狽する結月に腕を伸ばして頭を撫でる。

 「僕は君に石を投げたりなんかしない」

 「っ!」

 結月は勢いよく顔を上げてこっちを見る。

 「な、何で私にそんなこと言ってくれるの?」

 逆に誰が石を投げつけられていいのだろうか?

 これを言うのは違うので別の言葉を絞りだす。

 「ボールを怖がってる感じだったからさ!」

 「そういうことじゃなくて……」

 結月はそう呟くいた後表情を緩ませるち勢いよく立ち上がる。

 「えへへ、再開するよ」

 それから結月はボールを怖がることはなかった。


 「次はこれ!」

 ひとしきりキャッチボールを終えると次はバドミントンのラケットを渡される。

 「コートを書こ……う」

 木の棒を持った結月は言葉を止めてノエルを見る。

 「ノエルの能力って鎖を創り出して好きに操れるんだよね?」

 「そうですわ」

 「じゃあさ、鎖でコートを作ってほしい」

 「何で私がそんなこと……」

 「ネットだけでもいいから!一本だけ、お願い!」

 結月は渋い顔をするノエルに手を合わせる。

 「僕からもお願いノエル」

 「わ、分かりましたわ」

 ノエルはそう言うと渋々コートとネットを作ってくれる。

 「ありがとうノエルー」

 結月はニヤニヤ笑いながらムスッとしたノエルにお礼を言う。

 「それじゃあ、行くよー」

 結月はそう言ってサーブを打つが綺麗に空振る。

 「あれ、もう一回」

 そう呟いてもう一度サーブを打つが綺麗に空振る。

 「えっと……」

 「サーブを打つ時はシャトルは上に投げないの、ラケットの前に落とすだけよ」

 「わ、分かってる!」

 結月はそう言うと今度はシャトルを落とすようにしてサーブを打って見事に僕のコートに飛んでくる。

 「ナイスサーブ」

 僕はそう言うと結月のコートの手前側に山なりに打ち返す。

 「えい!」

 結月は勢いよく振りかぶって打つがシャトルはネットの真下へ叩き付けられる。

 「あう」

 「もっと肩の力を抜こうか」

 僕はそう言った後同じ位置にサーブを打つが再びシャトルはネットの真下に叩き付けられる。

 「シャトルの上を叩く必要はないですわ、小さいんですもの」

 ノエルは余っていたラケットとシャトルを手に持ちながらそう言う。

 「下をこんな風に打つか斜め下を叩くように打った方がいいですわ」

 ノエルは見本を見せるようにシャトルを打ちながらそう言うと結月は渋い顔で頷いた。

 「じゃ、じゃあ、行くよ?」

 僕はそう言ってもう一度山なりのサーブを打つ。

 「え、えい!」 

 今度はシャトルの下を打ったことで僕のコートの前の方に飛んでくる。

 「よっと」

 僕は腰を落として前のフットワークでシャトルをコートの後方に返す。

 「おっとっと」

 結月は不安になる足取りで後ろに下がると全力でシャトルの斜め下を叩く。

 「ほい」

 僕は大きく後ろに飛んできたシャトルを今度は真っ直ぐ飛ばしてみる。

 「う、うわぁ」 

 焦って振ったラケットの縁の部分に当たって僕のコートの前方に飛んでくる。

 「と、どけ!」

 僕は可能な限りのフットワークでギリギリ拾う。

 「チャンス!」

 「っ!」

 嬉しそうな結月が後ろに飛ばしたシャトルを追いかけようと思ったが足が上手く動かない。

 股関節の感覚が無く重心の移動が思うようにいかない。

 「ど、どうしたの?」

 「ごめん、足が絡まって」

 僕はそう言って立ち上がるとノエルが近づいてくる。

 「大丈夫ですの?明らかに動きがおかしかったですわ」

 「本調子とは言えないけど結月の相手は出来るかな」

 「この前の蹴りでやったんですの?」

 「まあ、そうだね」

 僕がそう答えるとノエルはコートから出るように指示する。

 「私が相手をしますわ」

 「えー、大成がいい」

 「私で我慢してくださいまし、大成は怪我してるんだから」

 ノエルがそう言うと結月は引き下がって自分のコートに戻る。

 「まあまあ、私だって手加減の心得はありますわ」

 ノエルはサングラス越しでも分かるぐらい悪い顔でそう言うと結月を前後に動かすようにラリーをしていく。

 「頑張ってー結月ちゃん」

 ノエルは楽しいそうに息を切らしている結月にそう言うと後ろにかなりの高さで打ち上げる。

 「くっ!」

 結月は歯を食いしばり追いかけるがラケットは空を切る。

 「もう限界でして?」

 「……やっぱりノエルは嫌い」

 結月はそう言うと僕へ視線を送ってくる。

 「ある程度は動けるようになったしやりますか」

 僕はラケットを手にとってそう呟くと結月のコートに立つ。

 「結月は前をお願い」

 「りょーかい!」

 結月は笑顔で敬礼する。

 「怪我してようと手加減はしませんわ」

 「ああいうのを悪女って言うんだよね?」

 「……否定は出来ないな」

 僕は悪く口角を上げたノエルを見てそう答える。

 「い、言いましたね大成。覚悟してくださいまし!」

 ノエルはそう言って僕に向かって山なりのサーブを打つ。

 「まずは様子見」

 僕はそう呟いて六割程度の力でノエルの正面に打ってみるとバックハンドで結月のリーチを絶妙に超えた返球をされて失点する。

 「届かなかった」

 「今のはノエルが上手いよ」

 「2対1以上のハンデがいりまして?」

 「絶対勝つよ大成」

 「絶対勝とう結月」

 僕は本気でやることを決める。

 それから試合は五分五分に進んで僕達のマッチポイントになる。

 「追い込んだぞノエルー」

 「……負けたくないわね」

 ノエルはそう言うと余っていたもう一つのラケットを鎖で掴む。

 「ず、ずるい」

 「これでフェアですわ」

 そんなこんなでラリーが始まるといつも決まっていたのが決まらなくなってラリーが長引く。

 「これでどう!?」

 結月はそう叫びながら短く落とすが鎖が凄まじいスピードで動いて打ち上げる。

 「これで終わってくれ」

 僕はそう呟いて跳躍すると全力でスマッシュを隅っこに向かって打ち込む。

 「くっ!」

 ノエルは器用に身体を捻って打ち返すと絶妙な高さで返って来る。

 「同じ手は効かない!」

 結月はそう言うと尻尾で跳躍してスマッシュを叩き込んでゲームセットとなった。

 「そんなこと出来たのね」 

 「いぇーい、私の勝ちー」

 結月はノエルにピースを向けながらはしゃぐ。

 「大成出てくださいまし、結月とサシでやりますわ」

 「ふふん、今なら勝てる気がする」

 結月はそう言ってノエルと1対1で勝負するが見事にボコボコにされた。


 「ひ、酷いな」

 思わずそう口にしてしまうほどノエルは手加減をせずに身長差も存分に使っていた。

 「年上を舐めないことですわ」

 「こんな高校生にはなりたくない!」

 これはノエルに刺さったのか表情が崩れる。

 「高校生なんてこんなものよ。ね、大成?」

 「小さい頃は高校生は想像出来ないほど大人だと思ってたよね」

 「それって私は大人じゃないってことですの?」

 「し、親しみやすいってことだよ」

 「本当に思ってるなら目を見て言ってくださいまし」

 ノエルはそう言ってサングラスを外して見つめてくるが五時の鐘が鳴って助かる。

 「もう五時か」

 「子供は帰る時間ですわ」

 ノエルは再びサングラスをかけると結月にそう言う。

 「そうだね……」

 結月は誰がどう見てもしょんぼりしながら片付けを始める。

 「大成……明日もさ、遊んでほしい」

 「うん、明日も遊ぼうか」

 今の股関節と足の状況じゃ激しい運動なんて出来ないし暇だ。

 「やった!」

 結月は嬉しそうにはしゃぐとノエルを見る。

 「べ、別に何も言ってませんわ」

 ノエルがそう言うと結月は視線を逸らして手を伸ばす。

 「サングラス返して」

 「あ、うん」

 苛立ちを隠しれていないノエルはサングラスを手に乗っける。

 「じゃあねノエルー」

 結月は最後にノエルに向かって舌を出しながらそう言うとマントを被って去っていった。

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