表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂愛の魔王  作者: ラー油
1章:僕の能力

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/117

22.魔王

 「ブーン」

 柊さんが部屋に来てから1時間程経った後静かな部屋に携帯の音が鳴る。

 「…………!」

 僕はメッセージの送り主に驚いて飛び上がる。

 「……行かないと」

 僕は急いでパジャマを脱ぎ捨てて適当な服を着る。

 「急げ、急げ」

 そう言いながら階段を下りて玄関の扉を開けていつもの場所へ全力で走った。

 「はぁ、はぁ……着いた」

 膝に手をついて息を整えた後木々の中に入っていく。

 「………………」

 いつもの場所に近づくにつれて呼吸は浅く、足取りは重くなっていく。

 「……早かったね大成君」

 低い柵から両手を離して小さく手を振られる。

 「連絡返せなくてごめんね。余裕が無くてさ……」

 「……ごめんなさい!」

 ぎこちない笑顔を浮かべる愛華に思わず僕は頭を下げていた。

 「何で大成君が謝るの?」

 覇気のない声でそう言われて僕は自然と涙が流れてくる。

 「だって、だって!僕が、僕が!……僕がいなかったら君はこんな目に合わなかった」

 「それは違うよ、大成君は悪くない」

 愛華はきっぱりと僕を認めてくれた時と同じ表情でそう言う。

 「悪いのは……結城君達だよ」

 愛華は表情を強張らせ身震いをしながらそう言う。

 「それはもちろんだ。でも僕がいなければ君が傷つくことはなかった」

 愛華の優しさにどんどんと涙が出てくる。

 「君が僕の味方でいたからあんな目に合ったんだ!君の優しさに甘えていたんだ、こうなる可能性があることは分かっていたのに!」

 「そんな風に思わないで大成君。私は自分の選択に後悔は無いよ」

 そう言う愛華はどこか悟った表情を見せる。

 「それに私が予知出来なかったのも悪いしね」

 そう言うと滝を背にして柵に腰掛ける。

 「私は好きな人が傷ついてるのに何も出来なかった、私が唯一役に立ってた〈未来予知〉すら意味をなさなかった、私は役立たずだね」

 愛華は足をぶらぶらして自虐的に言う。

 「そんなことはない!愛華がいてくれたから僕は耐えていられたんだ!」

 僕はそう叫んで愛華の元にゆっくり近づく。

 「それに私はあなたに始めてをあげることもできない……汚れちゃったんだよ」

 「そんなことはどうでもいい!愛華は愛華じゃないか!」

 そう伝えると愛華は目元に涙を浮かべて優しい笑顔を浮かべる。

 「……これで役に立てるね」 

 愛華はそう言うと柵から手を離して後ろに体重をかける。

 「待って!」

 僕は持てる全ての力で視界から消えていく愛華に向かって駆け出した。

 「…………………っぶな!」

 心からそう言った後僕は雄叫びを上げて愛華を引き上げる。

 「はぁ、はぁ、はぁ……今度は助けられた」

 ギリギリのところで腕を掴んだ僕は愛華を引き上げて地面に寝っ転がる。

 「何で助けたの?私が死んで警察に記憶を見てもらえれば結城君は終わる!大成君を守れるのに!」

 ヒステリック気味にそう言う愛華を僕はそっと抱きしめる。

 「もういいんだ愛華、君がこれ以上傷つく必要はない」

 僕は頭を撫でながらそう伝える。

 「生きてくれ愛華。僕のために死ぬんじゃなくて一緒に生きてほしい」

 「……いいの?こんな……こんな汚い私があなたと生きていいの?」

 愛華の乾いた声がだんだんと潤っていく。

 「そうだよ!一緒にどこか別の場所で生きよう」

 「……うん!」

 涙を流す愛華は震える声ではっきりとそう言った。


 「……雫は上手くやったようだね」

 「何か言った?」

 「ううん、何も?」

 会った時よりも随分と穏やかな表情になった愛華は滝を背景に微笑む。

 「ねえ大成君、いったい誰がこんな事をしたんだろうね?」

 「それは……確かに謎だね」

 ここまで一か月程過ごしても誰が僕が無能だと教えたり〈未来予知〉を覆したのかが全く分からない。

 「もう関わることはないと思うけどせっかくだし最後に考えてみない?」

 「う、うん。でも本当に思いつかないんだ」

 「じゃあさ、少し視点を変えてみようよ」

 愛華はそう言うと人差し指を立てる。

 「どうして山田君と長谷川ちゃんは急にいじめっ子になったのかな?」

 そう言う愛華はなんだか怖い雰囲気をまとう。

 「それは結城君に従ったからじゃない?」

 「でもあの日は剛力君と西念ちゃんだけだったよね。なのに次の日の朝から私達の敵になってたよね、いったいどうやって結城君の存在に気づいたのかな?」

 愛華の指摘に僕はハッとする。確かに今考えると急な展開だし不可解に思える。

 「大成君はどう思う?」

 「今考えると確かに変だね」

 そう答えと愛華は優しく微笑む。

 「いったいどうやって結城君は二人をいじめっ子に仕立て上げたんだろうね?」

 「それは……放課後に呼び出したとか?」

 僕はパッと思った事を口にする。

 「それは違うよ大成君」

 愛華は断言するようにそう言うと考える仕草をする。

 「そうだ!ヒントを言うとね、山田君は4月28日の土曜日の13時00分から共瀬図書館で人生で始めての公演があったの」

 「そう……なんだ」

 かなりピンポイントな日付に動揺する。

 「山田君は一流になるまで両親に見せるつもりは無いらしいの、でも長谷川さんは特別なんだよ」

 愛華はそう言うと楽しそうな顔になる。

 「二人は小学校の頃にこう約束したの、始めての公演は絶対に見に来てねって」

 「……なるほど」

 僕はだんだんと額に汗を浮かべる。

 「これを踏まえた上で長谷川さんにテレパシーでこの日時と人気のない場所を送ったらどうすると思う?」

 「わ、分からないかな僕には」

 僕は反射的にこう答えていた。

 「じゃあ条件を付けると長谷川ちゃんは山田君が努力しているのを誰よりも知っています。そして何より山田君のことが好きです。これを踏まえたら分かるんじゃない?」

 「……この話は止めない?」

 僕はぎこちない笑顔でそう提案する。

 「だめだよ大成君。あなたは知らないといけないの!」

 愛華は変わらずの笑顔でそう言い放つ。

 「仕方ないか、じゃあ正解を発表しようかな!」

 愛華は元気よくそう言ってまた人差し指を立てる。

 「まずは二人がいじめっ子になる前日にさっきも言った通りにテレパシーを送って人気の無い場所に呼び出したの。長谷川ちゃんの能力は〈生物の操作〉で二人にマーキングを付けていたから自分の身は守れると思ったんだね」

 「……だけどそこには結城君がいた」

 僕はいつのまにか下を向いてそう言っていた。

 「そう!さすがに〈重力の勇者〉はどうしようもないよね」

 だんだんと頬に汗が流れていく。

 「結城君は長谷川ちゃんを簡単に無力化してこの写真を山田君に送ったの」

 「っな!」

 そうやって見せられた写真は服が乱れた長谷川さんの姿だった。

 これを見た山田君はいったいどうしんだろう?……いや考えずとも分かるか。 

 「どうしてそんな写真を持ってるの?」

 僕がそう呟くと愛華は嬉しそうに頷く。

 「うんうん、その顔は誰が大成君が無能力者だってことや山田君の初公演の日時を結城君に教えたか分かったようだね?」

 「わ、分からないよ僕には」

 こんな話で分かるはずがない。分かりたくもない。

 「そっか、じゃあ次はどうして剛力君がいじめっ子になったのか考えようか」 

 愛華は再び人差し指を立てる。

 「どうして剛力君は結城君に従うようになったんだろうね?」

 「もう本当にやめようよ」

 いつも僕を元気づけた笑顔がなんだか怖いものに感じられる。

 「大成君は何か心当たりはある?」

 僕の声は届いていないようで話を続けられる。

 「……やめてくれ」

 僕は下を向いたまま掠れた声でそう言う。

 「まあ保健室に向かう結城君だけじゃ分からないよね」

 「……な、何で?」

 知っているわけがないはずだ!何で知っているんだ?

 「そ、そうだ!未来を視たんでしょ!だから知っているんだ!」

 僕は半狂乱で掴みかかる勢いでそう尋ねる。

 「ううん、未来は視てないよ」

 愛華からの返答は無情なものだった。

 「そもそも私の能力は〈未来予知〉じゃないしね」

 「……は?」

 僕は思わずそんな素っ頓狂な声を出した。

 だって何回も未来を言い当ていたじゃないか。

 「ごめんごめん、言い方が悪かったね」

 そう言って申し訳なさそうに愛華は手を合わせる。

 「私が言いたかったのは〈未来予知〉なんてチンケな能力じゃないって意味だよ」

 〈未来予知〉がチンケな能力?いったい愛華は何を言っているんだ?

 「話を続けると剛力君には(ゆい)っていう妹がいるんだ」

 僕の思考を追い込むように全くもって初耳な話を始める。

 「この子の能力は〈薬の勇者〉で6歳ぐらいの時に神光(しんこう)宗っていう犯罪組織に拉致されたんだ。それから剛力君は妹を助けるために鍛え始めたんだ」

 そう言うと中学生?ぐらいの長い黒髪の凛とした綺麗な少女の写真を見せる。

 「これは現在の結ちゃんなんだけどこれをお兄ちゃんに〈重力の勇者〉が見せたらかなり現実味があるよね」

 かなり。というか能育に行かなかったという点も含めて怖いぐらい現実味が生じてしまう。

 「これが剛力君が大成君の敵になった理由でした~」

 愛華は手を叩きながら元気にそう締めくくる。

 「じゃあ次は西念ちゃんの話をしようか」

 もう十分だが愛華は話を止めない。

 「でも西念ちゃんには言う事がないや」

 笑顔でそう言って僕に一つの写真を見せる。

 「これを結城君の次に私が見せたら凄く絶望した顔になって従うようになっただけだから」

 「……ははっ、これがあったら従うしかないよな」

 見せられた写真には肌が大きく露出してぎこちない笑顔でピースをする西念さんだった。

 「ちなみに結城君と西念ちゃんは同じ中学じゃないよ」

 「じゃあ結城君は何なんだ?」

 そう聞くと愛華は笑顔を崩して悪い顔を向ける。

 「あいつは正真正銘クズだよ、才能だけで努力も挫折も知らずに周りを見下してきたしょうもない人間」

 つまらなそうにそう言うとどんどんと愚痴に近しい言葉が溢れていく。

 「私は入学する半年前から〈重力の勇者〉のファンですーって接触して関係を築いたの。あとはヤらせておけばホイホイ従ってくれたよ」

 「………………」

 豹変した愛華に僕はもうとっくに言葉が出なくなっていた。

 「さてと大成君。いったい誰があなたをここまで追い込んだのでしょうか?」

 さっきまでの悪い顔は消え失せいつもの笑顔でそう尋ねられる。

 「噓だ、噓だよね……そ、そうだ!」

 「先に言っておくと雫は違うし、脅されているわけでもないよ」

 愛華は完全に抜け道を消しさった。

 「それにしても前まで、絶対に大成君を傷つけない。って言ってた雫はどこに行ったのやら」

 堕ちたものだね。と笑顔で言い放つ。

 「もういいでしょ大成君?もう分かったでしょ?」

 「嫌だ!こんなのあんまりじゃないか!」

 今までの一か月は何だったんだ?僕の愛華へのこの想いは?

 楽しかった日々も僕を救ってくれた笑顔も……偽りだったのか?

 「どうしてこんな事をしたんだ?」

 「答えになってないよ大成君」

 愛華は相変わらずの笑顔でそう言う。

 「もう一度聞くよ大成君、本当の悪魔はいったい誰でしょうか?」

 「………………君!、君以外なら誰でもよかったよ!」

 僕は両目から出る涙を隠すこともせず雪野愛華にそう咆哮する。

 「正解!私こと雪野愛華があなたを徹底的にいたぶった犯人なのでした~」

 「……何でこんな事したの?」

 手を叩く悪魔にそう聞くと結城君よりも何倍も狂気に染まった顔をする。

 「それはねぇ、今まさに達成されたよ!そう!その顔が見たかったのぉ」

 自分の頬に両手を置いて恍惚な表情をする。

 「何度もやり直した甲斐があったよあんたはどんなに痛めつけてもその顔にはならなかったんだから」

 悪魔は楽しそうにそう言うと僕の頬をそっと触れる。

 「今あんたにはどれ程の感情が渦巻いてるの聞かせて欲しいな~」

 なんだ?何を言っているんだ?

 「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

 もう僕には自分の心臓と荒い呼吸の音しか聞こえない、愛おしかった愛華も今は醜く思えてしまう。

 「完全に縋るものが無くなるとこんなにも美しい表情になるんだ~」

 涙でぐしゃぐしゃの視界で悪魔の顔を見る。

 「っっっっ!!」

 なんだ?今僕に触れているものはなんだ?……気持ち悪いな。

 「……え?」

 僕は不快感を拭うために全力で悪魔を押した。

 そしたら悪魔は視界から完全に消えた。

 「グシャ!」

 消えてすぐにそんな鈍い音が木霊した。

 「噓……だろ」

 しゃがみ込んだら適切な大きさの柵から下を覗き込む。

 そこには頭から血を流して口をパクパクしている悪魔がいた。

 「……何が起きたんだっけ?」

 ほんの数秒前の事を思い出す。

 「確か柵に引っかかった、引っかかったはずだ」

 そうだ悪魔はその〝低い柵"に引っかかった。引っかかったはずだ。

 「はぁはぁはぁ……僕がやった?殺してしまった?」

 僕はピクリとも動かなくなった悪魔を見て乾いた声を出す。

 「はぁ、ハハハ。無能で人殺し。終わってるな」

 僕の人生が終わっていることを再確認してゆっくり立ち上がる。

 「もう疲れた、十分頑張ったさ」

 僕はそう言って柵の内側に立つ。

 「最初から最後までクソみたいな人生だった」

 そう言って前に一歩進もうとする。

 「能力を一つ強奪しました。発現しますか?」

 「……なんだ?」

 テレパシーのように頭に直接流れてきた問いかけに一歩を踏みとどまる。

 「人間って追い込まれると幻聴が聞こえるんだな!」

 自分の愚かさを鼻で笑う。

 「発現出来るもんなら4歳の時にしたかったよ!」

 心の底からそう咆哮する。

 「ピコン」

 そんな機械音が頭に流れて再び沈黙が訪れる。

 「はは、まあそりゃそうか」

 結局何も起きないそれが現実。

 「さようなら最悪な世界」

 そう言って一歩踏み出して空中に身を投げ出して目を閉じる

 「グシャ!」

 そんな音がして首元に激痛が走るとそのまま思考と視界がおぼろげになって最後には暗転する。

 ここで僕の人生は幕を閉じる……はずだった。

 「は?」

 途切れた意識が覚醒して目を開くと視界の正面には壮大な滝がある。

 「〈セーブ&ロード〉……命を落とした時セーブした地点に戻る能力」

 「何を言って――」

 僕が言い終わるよりも先に僕の脳は身体は理解する。

 〈セーブ&ロード〉は確実に僕の身に宿った。僕はこの力を自由に行使出来る。

 「〈強奪の勇者(魔王)〉……殺した相手の能力を奪う能力」

 「これが……僕の能力」

 直感的に〈強奪の勇者(魔王)〉が僕の能力であることを自覚する。

 「〈セーブ&ロード〉が悪魔の能力か?」

 あまりにも唐突な展開に頭を抱える。

 「つまり何だ?何度もやり直して僕を追い込んだってことか?」

 悪魔の正体は〈セーブ&ロード〉だったのだ。

 「そりゃあ〈未来予知〉なんて目じゃないよな」

 完全なる上位互換だ。

 「はぁはぁ、いったい何回やり直している?セーブ地点はいつだ?」

 あまりの狂気に自分の身を抱き寄せる。

 何回じゃない。何百、何千、何万とやり直している。

 やり直してやり直して僕の無能を過去を知ったんだ!

 「今さら能力を発現しても遅いだろ!」

 人を殺すことが条件だから仕方がないがどうしてもそう思ってしまう。

 「どう頑張っても隠蔽も出来ないな」

 頭を潰して記憶を読まれなくしても僕に捜査の手が及んで記憶を見られるのは確実だ。

 「詰んでるな」

 どう頑張っても捕まる未来しか視えない。

 「情状酌量の余地はあって欲しいけどな」

 そんな冗談がいえる位までは精神が安定したらしい。

 「疲れたな」

 いろいろな事が起こりすぎて脳がショートしている。

 「眠いけど……ここでは寝たくないな」

 少し前までいい思い出しかなかった場所だが今は嫌悪感しかない。

 「……帰るか」

 一番安心出来る場所で真っ先に思いついた場所は自分の部屋だった。

 だから僕はトボトボと家に向かって歩き出す。

 これからの事は後で考えればいい。

 

 「いつのまに出かけたの!?」

 家に着くと慌てた顔が赤い母さんにそう聞かれるが返答する元気もない。

 そのまま横を通り過ぎて二階へ向かう。

 「バタっ」

 自室に着くとそのままベットに倒れ込んで泥のように眠った。

 「………………………………」

 「起きて大成!そろそろ起きて大成!」

 「……おはよう」

 体が激しく揺らされた衝撃で僕は目を覚ます。

 「あなた2日も起きなかったのよ!」

 「そんなに寝てたんだ」

 まだいまいち起きていない頭を押さえて起き上がる。

 「大成、何も聞かずにいったん玄関まで来て」

 真剣な表情で言われるがままに玄関に向かう。

 「あぁ、二日経ってるんだった」

 玄関にいるスーツを着た見知らぬ男性を見て思わずそう呟く。

 「こんにちは大成君。ごめんね起こしてしまって」

 爽やか好青年な印象を受ける30代前半位の男性は笑顔でそう言う。

 「えっと、どちら様でしょうか?」

 分かっているが一応尋ねる。

 「私はこういう者です」

 好青年はそう言って警察手帳を見せる。

 「どうぞ」

 僕は両腕をくっつけて警察官に差し出す。

 「はは、大丈夫だよ大成君。私は君を捕まえに来たわけじゃないよ」

 「……はい?」

 「聞こえなかったかな?私は君を捕まえに来たんじゃないよ」

 この警察官は何を言っている?捕まえるだろ普通。

 「そ、それでは何の用でしょうか?」

 「それはね、えっと……」

 腕を戻してそう尋ねると警察官は露骨に表情を曇らせる。

 「辛いことだとは思うけど雪野愛華さんについて聞きたいんだ」

 この状況は本当に何だ?記憶を見ただろ!

 僕が雪野愛華を殺したんだ、辛いも何も無いだろ。

 「今から辛い事を聞くよ、だから出来る限り答えて欲しい」

 そう言う警察官はあまりにも真剣な目をしている。

 「君も知っての通り雪野愛華さんは自殺をしてしまった。私達はそれに至った経緯を調査しているんだ」

 「……?」

 自殺?本当に何を言っている?こいつも僕を弄ぶつもりなのか?

 「私は雪野愛華さんの記憶を見させて貰ったんだ。そこで……君の話を聞くのとメンタルケアを任されているんだ」

 「メンタルケア、ですか?」

 そう聞き返すと警察官は真剣な顔をする。

 「大成君。君はこの一連の惨事で身に余るショックを受けたことは火を見るよりも明らかだ」

 警察官は真剣な眼差しを向ける。

 「君が間違いを犯さない為にもメンタルケアは必須なんだ」

 そう言う好青年には一切の悪意は感じなかった。

 

 「ハハ、本当に何が起きた?」

 あの好青年は僕のことを彼女を目の前で犯された挙句に目の前で彼女が自殺するという悲惨すぎる少年として認識していた。

 「理由はともかく僕は犯罪者にならなかった」

 この事実にどうしようもない笑いがこみ上げてくる。

 「〈セーブ&ロード〉と〈強奪の勇者(魔王)〉があれば僕は〈重力の勇者〉になることも可能なんじゃないか?」

 僕は醜くなった顔を押さえながらそう言う。

 「待っていろ結城蓮。僕は必ずお前を殺す!」

 僕はそう決意してセーブをした。

 これは〝愛に飢えた魔王"が愛を知る物語。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ