第6話 ~勇者アルベルト 暗黒の木曜日~
1929年10月24日は木曜らしい。そして本日2018年4月12日も木曜日である。
「「「がぁっはっはっはっー」」」
商隊みんなの笑い声が聞こえる。
雨はもう止み今は野営地で飲み食いしている。
「まったく。セレブになり損ねたわ」
サーシャは活躍できなくて怒っているようだ。
「アルベルトの声が聞こえたから、武器をとって飛び出したのにすぐに終わっちゃうんだもん」
あの後、突撃した冒険者の一人がすぐに盗賊の頭を一撃で倒し他の盗賊達は命乞いする奴、足止めに同士討ちしながら逃げようとする奴がいたが、いつの間にかオレの側を離れていたヘンリーさんが同士討ちする奴を狙って弓を射てすぐに逃げているので生きているのはいなくなったのだ。
「くっくっ、お嬢さんを前に出すなと商会長から言われてるんで、ああいう時は馬車の中にいて欲しいんですがね」
ワイン瓶を片手に4本持ちながらヘンリーさんがやってきた。
「あらヘンリー、私アルベルトより役に立つと思うわよ」
「いや〜いくらお嬢さんでも今日のアルベルトにはかないやせんぜ。おいジル、アルベルトが冒険者に向いている一番の理由がわかるか?生き汚いからだ!」
サーシャが不貞腐れた顔をしたのでヘンリーさんが無理やりオレに話しかけてきた。
「どういうこと?」
「あの時こっちは数は同じくらいだがお荷物を守らなきゃならねーから不利な状況だったんだ。あのまま混戦になってたらアルベルトは死んでたろうな。だから俺が盗賊との交渉への為に一矢入れたんだがそれをあいつは攻勢への流れに利用しやがった」
あの牽制矢はヘンリーさんだったのか。
今回は助かったができればお荷物の側は離れずにいてほしい。
「しかも俺達先輩冒険者をけしかけてアルベルトはその場で待機だ。よくわかってやがる!あいつが突撃しても恐慌状態の盗賊に返り討ちにあうからな!くっくっくっ」
「私だったらあんな盗賊達一人で全滅にしてやったやわ!」
サーシャはアルベルトが褒められるが嫌なのか意固地になっているようだ。サーシャの足元にはワインの瓶がつまれている。
「くっくっくっ、盗賊を生け捕りにしなけりゃ今飲んでる盗賊の隠しワインは飲めなかったですよお嬢さん。それにお嬢さんが怪我した時点で俺達はクエスト失敗になってしまう」
「にゃぁ、私に馬車にずっといろって事!」
「初めからそう言ってるじゃないですかお嬢さん。くっくっ、後は頼んだぞ、ジル」
酔っ払いが酔っ払いのことを煽るだけ煽いで他の酔っ払いのところに行きやがった!
くそ〜、ただのアルベルトの付き添いだと思ってたらサーシャの面倒も見なきゃいけないのかよ。
冒険者達が遠目にニヤニヤしながら管を巻くサーシャとオレを見ている。猫耳商会の人は一様にこちらを見ない。
オレはサーシャの話に適当に相槌を打ちながら、親父との引きこもり生活の事を思い出すことで現実逃避することにした。
好きな娘が自分がいないところで他の人と楽しそうに飲んでいると嫉妬してしまうと思う。
そして自分のそんな嫉妬心に気づいたら気分は暗黒模様になると思う。




