第2話 ~勇者アルベルトと夢見る商会令嬢~
幼馴染の女の子が朝起こしに来るのは現実にはないと思うけれど、幼馴染の男の子が遊びに来て起こされることは現実でもあると思う。
昔の話だがオレ達が今より子供だったときアルベルトは「今日は勇者する」と言い民家のタンスやツボを勝手に漁り、お金やアイテムをくすねていたのだ。オレもその片棒を担がされていたのは今でも嫌な思い出である。
オレはマジックバックをアルベルトの視界に入らないよう注意しながらしまい、軽く朝食を済ました。 オレとアルベルトは朝日が出てくる前に町の入り口に向かうと商隊の人達とヘンリーさんが荷物の確認をしていた。
ヘンリーさん達に挨拶しようと近づくと、
「おはよう、ジル様!」
横からタックルをくらいふらつく。
「……おはよう、サーシャ」
「おはようサーシャ!」
渋い顔のオレと笑顔のアルベルトが返事を返す。商隊は猫耳商会のようだ。
彼女はキングタウンに本店がある猫耳商会の商会長の末っ子長女だ。猫耳商会はイーストタウンだけでなくここハブタウンにも支店がある地方にも優しい商会だとオレは思っている。
「日の出前に朝霜の中で見るジル様は幻想的で夢の中にいるようだわ」
「はははっ、サーシャもいつまでもジルに夢見てないで僕のハーレムの一員になりなよ。そうすればすぐにセレブになれるよ」
サーシャはアルベルトが勇者行為をしだした頃からハブタウンにくるようになり、商会のお手伝いをしながら「将来はパパのようなセレブになるわ」と公言してしていた。また、アルベルトの勇者行為を目の敵にして取締りをしていた。
当時オレはその姿を見て神がオレに遣わされた天の助けだと思いアルベルトのことをリークしていたのだ。
「平たい顔民族の勇者は自分が宿屋のただの息子の平民だって現実を受け入れているのかしら」
「ちょっ、ちょっと宿屋の息子の勇者って情報はオフィシャルだけど高貴な血筋についてはシークレットだから声を小さくしてよ」
手をバタバタしだしたアルベルトをサーシャが冷めた目で見るのは仕方がない事だと思う。なぜなら村人はみんな「ここだけの話だけど……」と勇者アルベルトからそのシークレットな話を聞かさらているからだ。その話を信じているのは勇者アルベルトの小さなお友達だけである。ちなみにオレ達3人は12歳でオレは3人の中で一番背が高い。
「おーい、猫のお嬢さんとその他ども、そろそろ出発しますよ」
二人がバカなやりとりをしているとヘンリーさんから出発の合図がされる。
「さっ、ジル様自称勇者は放っておいて馬車に乗りましょ」
「ぶっぶ〜、残念でした〜。ジルは僕と一緒に護衛をしながら道中採取とかするんです〜」
「いや、採取ポイントはまだ先だからオレも馬車に乗ることにするよ」
「「えっ!」」
怖い笑顔とキモい笑顔の二人が同時にこちらを見て固まる。
「あぁ、わかった。なら二人は早く馬車に乗ってくれ。お前はこっちだ」
いつの間にか痺れを切らしてやって来ていたヘンリーさんがアルベルトを連れて行き。もじもじしだしたサーシャをオレが馬車に連れて行くとようやく商隊は出発した。二人は曇り空で気づいていなかったようだがすでに太陽は出て来ているのだ。
セレブ(celeb)とは、大衆にひろく注目されている人、話題の人。ウィキペディア調べ。




