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居場所を守るため、俺は心を捨てた  作者: じゅじゅ丸
◆ 第一章:生きる理由
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第3話|目を覚ますと村だった

気が付くと、村の小さな家の布団の上にいた。


 温かな布の感触。窓から差し込む陽光。外では鳥が鳴いている。


 状況は何ひとつ分からない。それでも、そこには確かに“生”があった。


 ――その事実が、ひどく憂鬱だった。


「……ここ、どこだ?」


 体を起こそうと顔を上げたとき、すぐ側に少女が座っているのに気づく。どうやら看病してくれていたらしい。


 ……余計なことを。


「あっ! お兄さん、起きた!」


 机の上に置かれた不恰好な人形をぼんやり眺めていた少女は、こちらに気づくとぱっと表情を明るくした。金色の髪が揺れ、無邪気な笑顔が向けられる。


 十歳くらいだろうか。その眩しさが、妙に目に痛い。


 もう自分には戻ってこない時間だと、嫌でも思い知らされる。


「何も分からないと思うから、簡単に説明するね」


 少女はそう言って、倒れていた自分の状況を丁寧に話し始めた。


「ここは“スタル村”。お兄さん、森で倒れてたの。たまたま通りかかったおじいちゃんが見つけて、村まで運んできたんだよ。私も手伝ったの」


 大変だったんだから、なんて言いながら、慣れた手つきで濡れた手拭いを取り替える。


 その自然な優しさに、わずかな罪悪感が胸を刺し、ユウトは視線を逸らした。


「そっか……俺は倒れて……」


 その瞬間、脳裏に祠の光景が蘇る。


 黒い霧。頭に響いた声。


(……夢じゃなかったのか)


 体を奪われかけた感覚が生々しく蘇り、吐き気が込み上げる。


「まだ体調悪いの? 大丈夫?」


 心配そうに覗き込む少女の声が、逆に耳障りだった。


「……なんで助けた」


「え?」


「冗談じゃない……なんで助けたんだよ!」


 自分でも抑えきれない声だった。


 確かに森で倒れていた。魔王を名乗る存在にも襲われた。


 だが、それ以前に――


「俺は……死んでるはずで……」


 言葉が途切れる。


 アパートの屋上。落ちていく感覚。終わるはずだった意識。


 すべてを終わらせたはずだった。


「……なんで、こんなことに……もう、やめてくれよ」


 もう放っておいてくれ。


 顔を覆い、蹲る。悪い夢なら覚めてほしいと、半ば投げやりに時間が過ぎるのを待つ。


 傍から見れば、ただ駄々をこねている子供のような、情けない姿だっただろう。


 しばらくの沈黙のあと、少女が小さく息を吸う気配がした。


「……あのね」


 決心したような声だった。


「私は、お兄さんが助かってよかったって思ってるよ」


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