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居場所を守るため、俺は心を捨てた  作者: じゅじゅ丸
◆ 第一章:生きる理由
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第12話|歪み



 村に来て、一週間が過ぎた。


 咲いたパンジーナは、エルドさんと、エルドさんの妻の墓の横に飾られている。俺は毎朝、その花を替えに来ていた。あの花にどんな思い出があったのか、俺には分からない。ただ――あの花は、きっとエルドさんの生きる理由そのものだったのだろう。


 それが、少し羨ましかった。


 ……リックは、頑丈な体が幸いして死なずに済んだらしい。

 とはいえ傷は深く、あれから顔を見ていない。見舞いに行こうとしたが、村長に止められた。


 そんな俺は、今日も村のために働いている。


「リドルさん、俺、水汲みしてきます!」

「あ、ああ。頼むよ、ユウトくん」


「タッカーさん、お困りですか? 手伝いますよ?」

「……ああ、ありがとうユウト」


 村の生活は忙しく、正直まだ慣れない。

 それでも――悪くなかった。


 少なくとも、ここでは誰も俺を拒絶しない。怒鳴らない。誰も、俺を“いらない”とは言わない。


 けれど。


 まるで爆発物を刺激しないように扱われているような――そんな歪な空気が、確かにあった。



「……こんなの、慣れたらダメだろ」


 呟いた声は、井戸の底へ吸い込まれていく。


 人気のない場所まで来て、ようやく不安を吐き出した。


「大丈夫? お兄ちゃん?」


「……リリナ。どうしてここに?」


 気づけば、リリナが心配そうに立っていた。


「ねえ、お兄ちゃん。ここ、嫌い?」


リリナがそう尋ねてくる。


「嫌いじゃない。……だから、俺はきっとここに居ちゃダメなんだよ」


俺は素直に心の内を吐き出した。


「なんで?」


そんな俺の答えに、少女はいつかと同じ目で聞き返す。


「……俺は、誰かを傷つけるから」


 あの夜、少女に強く当たった自分を思い出す。人の善意を踏みにじった、最低な自分を。


 リリナは、静かに言った。


「じゃあ、私がいつ傷ついたの?」


 不意の問いに、言葉が詰まる。


「……いや、それは……」


「私は嬉しかったよ。だってあのときのユウトは、私を助けてくれたもん」


 まっすぐな瞳に、また胸が痛む。

 その優しさに、甘えてしまいそうになる。

 震える手を見ないふりしてしまう。


「……俺を甘やかすなよ」


俺を認めてくれると信じてしまう。


「甘やかしてないよ。ただの事実」


 そう言って、リリナは悪戯っぽく笑った。




 ――そして、その日の夜。



 再び、悲鳴が上がった。




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