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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Birthday Surprise
348/596

015

「と、まあ、そういうことですから、続きはまた今度ってことで……っ!」


 相手の返事を待たず、桐葉は携帯電話を閉じた。


 真正面からの突撃してくる炎をかいくぐりながら、ポケットの中へと押し込んだ。


「そんな電話、出なけりゃよかったろうにね!」

「人が出た途端に魔法を乱射したくせによく言う……っ」


 三人の信徒は、怪物を呼び出すことなく桐葉と宏太を攻撃した。


 悩む素振りすら見せず、ひたすらに撃ち続けた。


「隙を見せるのが悪いんだよ」

「その隙だらけの相手に一発も当てられてないのはどっちだよ」


 最初は魔力切れを期待していた桐葉も、すぐさま諦めた。


 大抵の魔法は、手近な樹の幹を盾に逃れる。


「偉そうなことを言って、さっきから隠れてばっかりにも見えるのは気のせいかい?」


 しかし、リーダー格の女の手に炎が宿れば、その限りではない。


(風、風……辺り一面吹き飛ばすくらい、強い風――)


 魔力の剣を強く握り、より鮮明なビジョンを頭に浮かべたまま正面を見据え。


「吹き飛ばせ!!」


 力いっぱい、風を纏った《魔力剣》を振り切った。


「っち、このバカ魔力……ッ!」


 彼が起こした暴風は、たちまち火の粉をかき消した。


 それだけに留まらず、信徒の体を浮かせかねない勢いで荒れ狂う。


「《弾氷》」


 吹き荒れる風に信徒が足止めをされたその隙に、桐葉は、小石のような氷を風の流れに次々と乗せた。


 しかしそれらが白い外套を貫くことはない。

 風に流され、群れを成したまま大きく上へと舞い上がる。


「はっ……! なにやってるんだ。いくら数が多くたって、そんなところに撃ったらこっちには――」


「避けな、バカ!」


 ――間もなく、落ちた。


「っ、ひぃ……!?」


 風が止んだその瞬間、大地へ引き寄せられるままに降り注いだ。


「……《プロテクト》」


 それを阻んだのは、両目が隠れるほどフードを深くかぶった男の信徒だった。


 三人の頭上にそれぞれ、薄い膜のような壁が現れた。


「危ねーことするな、オメーも……」

「大丈夫だよ。アレが頭にぶつかっても氷の方が砕けるし。ほら、あそこ」

「防御魔法に止められたならそりゃそうもなるだろ」

「そうじゃなくて」


 ――氷の魔法の固さについて、桐葉は教わっていた。


 痛みを覚えることはあっても、それが致命傷につながる可能性を下げるために。


 言ってしまえば、桐葉が放ったのは足止めのための魔法である。


 信徒の防壁に阻まれていたのは、ごく一部。

 寡黙な信徒は肉体への直撃を避けるのみで、周囲に落下するものは全て無視していた。


 そうして落下した氷は、その衝撃で砕けて消えていく。


「――そんな屁理屈、通じるかっ!」


 対して、桐葉達へ差し向けられた魔法は違っていた。


 叫ぶ信徒の手から放たれたのは、周囲の木々を軽々食らう、猛獣のような炎の魔法だった。


 それを目の当たりにした二人は、当然、焦る。


「おいおいおい……っ! こんなトコでなに使って――」


「《飛翼》!」


 濁流のような炎は、桐葉達から、上空へ回避する以外の選択肢を奪い取った。


「オメもかよ、おぉおおお――――っ!?」


 翼を広げ、宏太を捕まえ、桐葉は一気に飛び上がった。


 直後、押し寄せた炎が辺りをたちまち飲み込んだ。


「あ、危な……っ」


 間一髪のところで逃れ、桐葉は安堵のため息を漏らす。


 一瞬でも遅れていればどうなっていたか。

 そこから先のことは、桐葉も考えたくなかった。


「お、オメーの強制ジャンプの方が何倍も怖ぇーんだよ……うぇえ……」


 あまりに時間がなく、強行せざるを得なかった。


 宏太の顔が空に負けず劣らず青いのも、全てそのせいである。


「汚い。それはさすがに汚いから。ほら、背中」

「これっきりだかんな。絶対やるなよ。次やったらマジでぶっ飛ばす……」

「分かった、分かったから。喋らずに落ち着いて」


 襲撃があった時以上に弱々しい宏太を宥めつつも、桐葉は下を見た。


 そして思わず、顔をしかめた。


(……とんでもないことをしてくれやがったな、あの連中……)


 炎は既に消えていた。

 桐葉が水の魔法を叩きつけるより早く、他2人の信徒によって消されていた。


 しかしその爪痕は、上空からもはっきり分かるほどに刻み込まれている。


 緩やかに降下していくと、細かな部分がよりくっきりと見えてきた。


 それでも防御の魔法を切れさせることなく、降下を続けた。


「ひ……ひっでぇな、こりゃ……うぷっ」

「だから喋るなって」


 2人が降り立ったその場所から、緑は消えていた。


 生い茂った葉はおろか、太くたくましい幹さえも消し炭と化していた。


「……言い訳があるなんて、言わないだろうな?」


 焼け焦げた景色を見回してから、桐葉は睨んだ。


 睨みつけつつ、剣を握る手に力を込めた。


「言い訳も何も、そっちがむふぅっ!?」

「あぁ、あるよ。信じてもらえるかは分からないけどね」

「少なくとも納得はしないだろうな。何を言われても」

「まぁ、そうなるだろうね」


 リーダー格の女は、桐葉に向かって肩をすくめた。


 信徒達が口にしそうな言い訳の候補は、桐葉の中にも既に浮かんでいた。


 一人の暴走ということにしてしまえば、直接の責任はない。


 実際、炎を消したのは残りの信徒達だった。


 声の大きい信徒が何かを持ち出し、それを使ったのは桐葉にも分かっていた。


 男が今も手に持っているボールのような何かによるものだということは、分かっていた。


(……あの威力なのに、魔力もほとんど減ってないし)


 騒々しい方の信徒が使ったそれについて、心当たりはあった。


 組織によって作られた、魔法を封じ込めた品々。


 中でも、先日の試合で用いられた高出力魔法を発生させるそれに、よく似ていた。


「多分、そっちが想像してる通りだよ。……どうする? 連れて帰れるか、試してみるかい?」

「そっちにそのつもりがないのはよく分かった」


 ニヤリと笑う信徒を見て、それが困難であることを桐葉は悟った。


 強引なことをすれば、周囲に被害が及びかねない。


「……リーダー」


 ――しかし、両者のにらみ合いは、続かなかった。


「何か知らないけど、後にしなよ。そこの連中をどうにかしないと、こっちまで危ないんだから」

「……それどころじゃない」


 寡黙な方の信徒が、どこからともなく別の球体を手に取っていた。


「ちょっと、それは置いとけって言っただろう? いま動いちゃ困るんだよ」


 それが危険な代物であるのは、明らかだった。


 信徒達の反応を見れば、すぐに分かった。


(……とりあえず、あれだけでも奪っておかないt)


「動いてる」


「…………なんて?」


 リーダー格の信徒の顔から、血の気が失せた。


(……ん?)


 思わず桐葉も、首をかしげる。


 どうにも、嫌な予感がした。


「ばばばば馬鹿! 大馬鹿! 動かすなって言ったろう!? 木っ端みじんになるのはこっちだよ!?」

「……でも、あいつが燃やしたせいで」

「俺っ!?」


 慌てふためく信徒たちの姿を見れば見るほど、不安は膨らんでいった。


「……なぁ、ヤバくね?」

「ああ、多分ヤバい」


 同じく悟った宏太と、徐々に退く。


 何が起きても対処できるように、少しずつ。


「あっ、コラ! なに逃げようとして――」


 ――強烈な光が辺りと包んだのは、それから間もなくのことだった。


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