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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Birthday Surprise
347/596

014

「厚意云々はさておき、何をしているんだ? ……ことと次第によっては」


 軽く構えて、睨みつける。


 通りから外れたその場所にいたのは三人。

 昼間でも滅多に人が近づかないこの場所は、話し合いにはうってつけ。


 何も企んでいないなんてこと、あるわけがない。

 よせばいいのに、ご丁寧に白いローブまで身にまとっている。


「そう怖い顔をするんじゃないよ。なに、ちょっとしたお仕事さ」

「それが分かってるからこんな顔をしてるんだよ」


 リーダー格らしい女は、小さくフンと鼻を鳴らしていた。


 そんな恰好で、まさか教団と無関係の内容のわけがない。

 それもおそらく、町の人を巻き込みかねないようなもの。


「「…………」」


 向かい合ったまま、自然と睨み合う。


 一瞬でも隙を見せたらやられる。

 そのくらいのつもりでいないと、何かあった時に止められない。


(完全に形になる前に止めて、《魔力剣》を――)


「待った、ちょっと待った! まだそいつとの話g、んぐっ!?」


「…………えっ」


 ――何が起きたのか、分からなかった。


 魔力を練り上げようとしていたところに、いきなり声が割り込んできて。

 何事かと思ったら、そいつが後ろから締め上げられていて。


 俺も小城も、まだ何もしていないのに。


「……今は待て。ちょっとだけでいいから、待て」

「ぐごっ、うごごご……」


 背後から羽交い絞めにしているのは、もう一人の信徒だった。


 他の2人よりも深くローブをかぶっているおかげで、顔も見えないもう1人。

 声の調子からして男だろうけど、そのくらいしか分からない。


「……気の毒なくらい締まってんな」

「こんな自業自得な状況じゃなきゃ心配したんだけどな。俺も」


 特に、教団のやつが相手じゃなければ。


 ……こんな茶番をおっぱじめるようなやつがいるとは、思わなかったけど。


(そういえば、前にも似たようなことがあったような……)


 いつだったか、同じことを思った気がする。


 そんな気がしているだけで、それがいつのことだったのかまではまるでお思い出せそうにないけど。


 その答えに着く前に、向こうの話し合いの区切りがついてしまった。


「……連れが邪魔したね。話の続きといこうじゃないか」

「話って……頼めば止めてくれるってわけでもないんだろ? そのお仕事ってやつ」

「そりゃそうだよ」

「んじゃーどうしようもねぇな」


 やっぱり、としか思わなかった。


 小城もそれは同じ。

 半歩だけ後ろに下がって、すっかり戦闘態勢を整えている。


 ただ、少し……肩に力が入りすぎているようにも見えた。

 いつもと比べると、若干声も堅い。


「まあまあ、そう焦るんじゃないよ。昼間っからドンパチやるのは[アライアンス(アンタたち)]だって避けたいんじゃないかい?」

「[創世白教おまえたち]にそんな心配をされたかないっての」

「言われてそのまま引き下がれるわけねーだろ」


 正直、一旦退くのも本当は悪い選択肢じゃなかった。


 目の前の信徒たちが何もしないという確証が得られた後なら。


 他のチームがここに着くまで多分、まだ時間がかかる。

 日中はそれぞれが受け持つエリアも広いから、自然と距離が離れてしまう。


 まして信徒が他に何人か暮れているかも分からない。


「なぁに、こっちにも都合があるから言ってるのさ。……ここはお互い、なぁなぁで済まそうじゃないか」

「だったら、そこにある箱をこっちに渡してもらわないと。中身が飛び出したら危ないだろうし」

「そいつはできない相談だね。これを渡したなんて知られたら大目玉なんだよ」


 それでもすぐに退けなかったのは、3人の信徒の足元の木箱だった。


 中身なんてわかるわけがない。

 ただ、それが安全なものじゃないことくらい、さすがに分かる。


 俺たちの手に渡ったら困るものとなると、それなりに重要なものの筈だ。


「……叱られたくない」

「ぷは……っ!」


 それを裏付けるように、顔を隠している方の信徒も渡すまいと身構えた。


 おかげで、うるさい方の高速も緩んでしまった。

 

「まったくだ! この前だって妙な手伝いをさせられて大変だったんだからな……!」

「手伝い……?」


 解放されて早々に、うるさい方はまた奇妙なことをのたまった。


 手伝いをさせられた原因はひとまず後回し。

 そもそもの『妙な手伝い』という表現が、引っ掛かった。


(……他の信徒に手を貸した……? でも、どうしてそれなら『妙な』なんて……)


 多分、俺たちに課せられた罰とはまるで別物。


 だから余計に分からない。

 相手も同じ教団のメンバーの筈なのに、どうして手伝っているもののことさえろくに分かっていないのか。


「おい、それ以上は……」

「言って分からせてやらないと駄目なんだよ。[アライアンス]には。お前だってそう思うだろ?」


 ――多分、違う。


 具体的な証拠があるわけじゃない。

 ただ、なんとなく違う気がした。


 身内同士の手助けにしては、どことなく妙だった。


「そんなことを言ったって何の得にもならないよ。――やってしまいな」

「黙らせておく」

「あっ、ちょ……っ!?」


 それがもう終わったことなのか、そうじゃないのかもはっきりしない。


 うるさい方の口が塞がれていなければ、それを聞き出すこともできたかもしれないのに。


「悪いね。さっきから騒々しくて。覚えられてなかったのがよっぽど気に入らないみたいだ」

「まーたその話かよ」

「それより、手伝いっていうのは? そっちを聞かせてもらわないと」

「教えてやる必要がないからねぇ」


 ……だろうと思った。


 素直に答えるわけがない。

 もったいぶったような態度も多分、深い意味はない。


 挙句、俺達が睨んでもお構いなしに、『それよりも』と――


「あんな風に絡まれて疲れただろう。諦めろって言いきかせてるんだけど、どうにも治らなくてね」


 よりにもよって、一番どうでもいい話の続きを聞かせようとしてきた。


「そっちからすれば一回きりだったし、長い時間でもなかった。それで覚えてろって方が無理な話だ」

「んだよ、急に。理解してますアピールされたってこっちにゃどうしようもねーよ」


 ――ただ、それだけじゃなかった。


「そうかい? じゃあ仕方がない」


 俺のものでも小城のものでもない魔力が、揺らいだ。


「ああいうお喋りは苦手なんだ。手っ取り早くいこうじゃないか」


「今さらかよ」


 ――降り注いだ火の雨を、土の傘で受け止める。


 そうして、戦いの火蓋は切って落とされた。


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