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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Birthday Surprise
346/596

013

 ――数十分前。


「げっ……」


 ……控えめに言って、最悪。


 声をできるだけ小さくするのがやっと。

 少しは安心できそうと思っていたところにこれだ。


「(あれが実は無関係っつーことは……ねーよなぁ。さすがに)」

「(しっかり三人分だよ。腹を括るしかない)」


 機械に妙な反応が出たと思ったら。


 画面上には、俺と小城のほかに光る点が三つ。

 位置的にも、教団のやつらがいる場所に近い。


「(つっても、あんなのどうしろってんだよ? いっそ俺達だけでなんとかしちまうか?)」

「(もうちょっと様子を見ないことには何とも。眠らせられたら、いいんだけど……)」


 眠らせられなかったら、その時点でアウト。


 ローブが邪魔で痺れさせるのも難しい。


 ひとまず距離を保ちながら、さっさと作戦を立てt


「………………あっ」


 ――パキ、っと小気味のいい音が辺りに響いたのは、その時だった。


 見れば、小城の足元には折れた枝。


 何が起きたかは、一目瞭然。


「(……これ、やばくねぇ?)」

「(言ってる場合か!)」


 小城と二人、慌てて飛びのく。


「うぉ……っ!?」


 次の瞬間、案の定、正面から炎が飛んできた。


 信徒が集まっていたその場所から、俺たちが立っていた地点をめがけて一直線に。


「あのくらいは避けられるんだね。さすがに」

「ある人のおかげだよ」


 浮かび上がった火の玉を、《水流》で押し潰す。


 発射される前に。

 発動した魔法が完全に形をとった直後を狙って。


 下手に動かず、防いでいる間に東雲先生に連絡してもらう。


「ん……? …………あっ!!?」


 ――その、つもりだった。


「お、お前……っ! どうしてこんなところに!」

「「は?」」


 攻撃の手はすぐに止まった。


 信徒の一人が何かに気付いたみたいで、叫び声を境にぴたりとやんだ。


(……何を言ってるんだ、こいつは?)


 なんて、その目的はこれっぽっちも分からない。


 思わず小城と首をかしげてしまった。

 何が『どうしてこんなところに』だ。


 それを聞きたいのはむしろ俺達の方。

 いくら町の中心部から外れているとはいえ、昼間だぞ。まだ。


 夜でも大迷惑だっていうのに。


「その顔、覚えているからな! 忘れると思ったら大間違いだ!」

「忘れるなんて言われても……」


 ただ、白ローブの一人は明らかに納得していなかった。


 さすがの俺だって忘れたりはしない。

 あの趣味の悪い白いローブを忘れたりするわけがない。


 ……目の前の連中が来ている代物が俺の見間違いなら、一体どれだけよかったことか。


「んだよ、天条。ひょっとして知り合いか? なんかオメーのコト名指し気味だけどよ」

「なわけ。教団の連中と仲良くなんてできるかっての」

「へっ、そりゃそーだ」


 言いながら、小城と頷き合う。


 今ここで徹底的にやり合うような真似は止めた方がいい。

 勝てるかどうか以前に、他の問題が多すぎる。


 勝手に知っていると主張しているこの男も含めて。


「そういうわけだから、お生憎様。どういうつもりなのか知らないけど、退くつもりがないならこっちにも考えがある」

「なんだとぉ……っ!?」


 油断はできない。


 今までだってそうだった。


 こいつらのことだ。

 どこに何を隠し持っているかも分かったものじゃな――


「人が大人しくしているのをいいことになんだその言い草! 見え透いた嘘までついて!」


「「…………はぁ?」」


 ……警戒しているこっちが、思わず馬鹿らしく思えるような馬鹿発言が飛び出すなんて。


「あんな目にあわせておいて覚えてないって、そんなの通るわけがないだろう? 言われたって納得できるかぁっ!」


 何やら叫んでいらっしゃるけど、分からない。


 目の前の男が何をそんなにキレているのか、全くもって分からない。


 当人は当人で、小城と俺が顔を近づけてもまるで気にする素振りも見せない。


「(天条、オメー……実は何かやらかしたんじゃねーの? もうちょっとだけ思い出してみてくんね?)」

「(お前はお前でなんてことを言ってくれるんだ、おい。向こうの言い分を信じるつもりかよ)」

「(いやいや、あの反応はさすがにマジだろー……。アレが演技なら役者目指せるって)」

「(だから違うって)」


 ……どうして小城にまでそんな勘違いをされなきゃいけないんだ。


 意味不明。理解不能。


 それもこれも、あの信徒(?)が余計なことを言わなければこんなことには……


「ほら、その目だその目! 仲間に耳打ちしてまで人をコケにすることないだろ! 大概にしろよ!?」

「誰もそんなことしてないっての。自意識過剰」

「んなぁっ!?」


 知らない。多分。


 教団の連中には言われたくない、とか――……そういう反論をする気にもならない。

 あまりに無茶苦茶で、バカバカしくて。


「けど、今のはヤバくねぇ? 気持ちはまぁ分かるけどよ」

「知りもしなない相手から難癖をつけられたんだから仕方がないだろ」

「知らっ……!?」


 こっちを油断させるための作戦なんじゃないかと、そんな風にも思えた。


「知らない……。知らない、だって……!? あんなことまでしておいて、覚えてないっていうのか……!?」


 誤解を招きかねないことを言うから始末に負えない。


 あの程度のことでショックを受けるなら好きにすればいい。

 本気に見えるような態度を取られたところで、知ったことじゃない。


 ……それはそれとして、『周囲に被害が出ないだけまだマシ』なんて思ってしまった自分には呆れの言葉も出ないけど。


「おいおいおい、なんかすげーダメージ受けてんぞ。アイツ。さすがに可哀想だし、もうちょっとくらい思い出そうとしたっていいだろ」

「却下。何度も言ってるだろ。知らないって。……ただでさえ、いきなりあんな風に絡まれて訳が分からないっていうのに」


 記憶を掘り返してみても、やっぱり見覚えがない。


 後ろ二人までだんまりを決め込んでいるおかげで事情がまるで飲み込めない。


「心配すんなって。どんなことになったってオメーのこと見限ったりなんかしねーからよ」

「こんな状況じゃなきゃ、もっと嬉しかったんだけどな。その言葉も……」


 見当違いも甚だしい。


 むしろ狙って引き起こそうとしているようにも見える。


「大丈夫だって。衣璃亜ちゃんにチクったりしねーから。さっさと思い出して楽になっちまおーぜ。今さら驚きゃしねーよ」

「お前がそれを止めてくれるだけで一気に気が楽になれるんだけどな?」

「んなコト言ったってよ――」


「うるっさぁああアアいッ!!」


 ――景色が、割れた。


 男の大声で、割れた気がした。


 喋ってる最中に割り込まれて、もう滅茶苦茶。


「オメーのがうるせーよ……」

「お、音波魔法かっての……」


 痛い。どうしようもないくらいに頭が痛い。


 いきなり響いた大声のおかげで、痛くて痛くて仕方がない。


「っ痛ぇええー……。こっちがせっかく気を使ってやってんのに今のはねーだろ、今のは……」

「あれのどこが気遣いなんだ!? 挑発していただろう、思いっきり!」

「んなわきゃねーだろ。天条じゃねーんだから」

「一言余計だこの野郎」


 ……ただ、それについてはちょっとだけ、分かると思ってしまった。


 実際には俺も小城と同じ側だったけど。

 少なくとも向こうについてやろうなんて気はさらさらない。


「まーまー。それより聞いたか? 今の。人の厚意にあの対応はねーだろ。あの対応は」

「厚、意……?」


 悠長に構えている場合じゃないってことくらい、分かっているくせに。



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