016
「あーもう分かんね、マジ意味わかんねぇー……」
「まったくだよ……」
理解不能どころの話じゃない。
目の前にいたら助走をつけてグーで殴ってやりたくなるレベル。
さっきから悪態が止まらない。
「天条くんも小城くんも、落ち着いて……。今は元気でも、怪我してるかもしれないから……」
「そうだよ、2人とも。少なくとも検診だけは受けておいた方がいい」
だから実際、そこまで心配してもらうような状態でもない。
「いやいやいや」
「さすがにそれは」
「そんなところで息を合わせなくてもいいでしょう」
むしろ居場所がわかったら真っ先に教えてほしいくらい。
そのくらい元気が有り余ってる。
ただ、イリアも東雲さんも先生も、首を縦に振ってくれそうになかった。
「ちょっとした疲れならまだともかく、あんな爆発の近くにいたんだ。何があるかわからないよ」
別に怪我も何もしていない。
フラフラになって帰った時に、最低限の検査は済ませてもらった。
その時も特に異常は見つかっていない。
「そんな脅しかけるのはないっすよ、せんせ。上手いこと離脱できたんすから」
「あ、そういうことならやっぱり小城だけはお願いします。かなりの急加速だったので」
「おいコラ人のこと捧げようとしてんじゃねーよ?」
ただ、まあ、本当に簡単なものだったから、より詳しい検査をした方がいいと言われるのも分かる。
「いやいや、かなり強引だったから小城のことが本当に心配で」
「んじゃー飛んだオメーが先に受けて来いよ。それこそ強引にいってキツかったろ?」
「俺は別に今にじまったことでもないし」
「それはそれでアウトじゃねーかよ」
だからこそ小城に受けてもらおうと思ったんだけど、却下するから。
せっかく上手い具合に話をまとめてくれそうなアイデアだったのに。
「天条君の話は置いておくとして、だ。やっぱり2人とも、もう少し調べてもらった方がいい。何かあってからでは遅いんだから」
こうも真面目な顔で見られると、俺としてもお断りしづらかった。
これでも一応、あの爆発がいかに危険なものだったかについては理解しているつもりだった。
(……あんなことになるくらいだし)
戻るときに、空から自分の目で見た。
まるで隕石でも落ちたような、やたらと大きなその穴を。
周りの木なんて一本も残っていなかった。
地面ごと吹き飛ばされてしまったんだから、残っているわけがない。
もし離脱が間に合ってなかったら、こんな風に悪態をつくどころじゃなかったのは、嫌でも分かった。
「さっき三凪も言っていたけど、傷がないからと言って安心するにはまだ早いよ。教団が作ったものだ。警戒し過ぎるくらいで丁度いいと、私は思うよ」
そこへ更に爆発の威力からは少し外れたところについてまで言われてしまったら、俺もあまり下手なことは言えなかった。
「その、私も、お姉ちゃんに賛成……。言ってくれたら、2人が気になってることは調べてもらうから」
その上、東雲さんまで。
まだ特に何も言っていなかったけど、イリアも同じようなことを考えているのはなんとなく分かった。
(気になること、か……)
そんなの、その気になればいくらでも思いつく。
空から見下ろした時、爆発を引き起こした元凶3人の姿はどこにもなかった。
きっと組織も現地で調査をしている。
それでも今のところ、見つかったなんて話はない。
……あの爆発を俺達よりも近い位置で受けたんだから、それこそ行動不能どころじゃない筈なんだけど。
「それにしても、どうしてあんな爆発が? 天条君の魔法ではないんだろう?」
――多分、東雲先生にとっては、確認以上の意味はなかったんだと思う。
俺たちのことを心配していた時と比べれば、深刻さも感じない。
……あんなことで起きたもじゃなければ、俺素直に話そうと思えたんだけど。
「あー……」
「まあ、そういうことにはなるんですけど……」
思わず。小城と顔を見合わせる。
実はまだそこまでは話していない。
信徒に遭遇したことと、戦っている中で、爆発が起きたこと。
そこから先、踏み込んだ部分についてはまだほとんど報告していない。
「けど? どうかしたのかい?」
「いや、べつにどーもしないっすよ? どうしようもねーなって思いましたけど」
「う、うん?」
小城が渋るのも、正直分かる。
全力で頷きたくなるくらいには、よく分かる。
東雲先生に不思議そうな顔をされても、あれは言えない。言いづらい。
(なぁおい。どーするよ、アレ)
(どうもこうも、さすがに包み隠さず言うしかないだろ。信じてもらえるかはさておき)
(マジでー? 馬鹿話にしかなんねーだろ。あんなの)
(どれだけバカみたいな話でも本当のことなんだから仕方がないんだよ)
言わなくて済むなら俺だって言いたくない。
間近で、当事者の一人としてあの場にいたから、バカみたいな話だって言い分には頷くしかない。
「桐葉があんな爆発を起こすわけがないでしょう。神堂零次ならともかく」
「それは、私も……。魔法を正面から衝突させても、あんなことには……」
向こうがいきなりバカみたいな火力の魔法をぶっ放して、そのせいで妙なものに火が点いて。
こっちが何もしていないのに自爆したせいで止めようがありませんでした――なんて、これっぽっちも笑えない。
(……あんなもの、一体どうやって……)
威力だけはあるから始末に負えない。
あんなものをあちこちで使われたらどれだけ被害が出るか、分かったものじゃない。
――で。
「な、何を言っているのかな……? 2人とも……」
包み隠さず話した結果は、概ね予想した通り。
こんなに戸惑う東雲先生を見たのは初めてかもしれない。
「俺達だってわけ分かんねーっすよ。……でも、マジなんで」
「だから言いづらかったんです。馬鹿な話にもほどがありますから」
だが、これが現実。
「て、天条くんも小城くんも……そこまで言わなくても……」
「むしろ優しいくらいですよ。内容を聞く限り」
洗いざらい話すと、どうしてもこうなる。
小城じゃないけど、本当にどうしようもない。




