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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Birthday Surprise
337/596

004

「……またですか……」


 こればかりは分かりませんね。私にも。


 新しく発行されるたびに顔を出して、その度に話し込んで。


 何も毎回行く必要などないでしょう。


「まーまー、そうカリカリすんなって。おかげでバレる心配もなくなったんだし、衣璃亜ちゃんにとっても願ったりかなったりじゃね?」

「いいえ? 全く何も」

「そ、そんな……全力で否定しなくても……」

「全力などではありませんよ。この程度」


 まさか、そんなはずがないでしょう。えぇ、あり得ません。


 これしきのことで全力などと評されてしまうのは不本意以外の何物でもありません。


「……そもそも、記念日などと口を滑らせなければこのような心配をする必要もなかったんですから」

「うーっす……」


 アレにはさすがの私も焦らされました。


 せっかく、夜中の作業に気付いていないふりを桐葉がしてくれているというのに。

 あと少しで計画が台無しになってしまうところだったのですから。


「でも、天条くん……本当に覚えてないんですか? 自分の誕生日なのに……」

「えぇ、確実に。その手のことには無頓着ですから」

「確かにありそーだな天条のヤツ……」


 故郷にいればまた違っていたでしょう。


 あの美咲がこのような日を無視するとも思えません。

 話を聞く限り、彼の両親もそういう人のようですから。


 残念ながら、会ったことは一度もありません。


 が……きっと何かしらは計画していたでしょう。


「以前、美咲――……彼の幼馴染がサプライズを計画した時もすっかり忘れていたそうですよ。種明かしをしてようやく思い出したとか」

「それはそれでヤバ過ぎんだろ。マジで覚えてないのかよ」

「ですからそう言っているでしょう?」


 美咲とその両親、それから自分の家族についてはさすがに記憶しているようでしたが。


 私を見つけてくれたその日のことも。


 こんなことなら、わざわざ印をつける必要はなかったのかもしれませんね。

 催促するつもりなど全くありませんから。


「とはいえ桐葉も5月中だということは覚えているでしょう。ですから……日付を思い出す前にどうにかしなければなりません」

「それならもういっそのこと、フライングしちまうとかどーよ。絶対バレねーだろ」

「さ、さすがにそれは……」

「本末転倒ですね」


 確かに、今日にでも言えば桐葉を驚かせることはできるでしょう。

 新聞部長あれが余計なことを言わない限り。


 ただ虚をつくだけなら、それでも十分と言えるでしょうね。

 本来の目的を投げ捨てることにもなりますが。


 まして、私一人で勝手に決めていいことでもありません。


 そういう前提で準備を始めた後。

 今更になってそれを覆すなど論外です。


「そうは言うけどよ、地元にだって友達くらいいんだろ? 天条も。そっちからバレたりするんじゃねーの?」

「抜かりはありませんよ。あらかじめ手を打っておきましたら」

「マジでいたのかよ。こっちにいる天条のこと祝おうとするヤツ」

「いない筈がないでしょう」


 美咲のことを外しても、他にも。


 友人、という括りに含むのは少々不適切かもしれません。


 が、間違いなく何かをするつもりではいたでしょう。性格的に。


 ……連絡をしていなければどうなっていたか……。


「そ……そういえば、小城君は? 誕生日……」

「それがもう過ぎちまってんだよなー。っつーわけだから、来年はよろしく頼むぜっ」

「そう主なら先に自分が祝う側になることですね」

「見返り目的でそんなことしようとは思わねーけどな」


 ……桐葉にも後で伝えるだけ伝えておくとしましょうか。


 こちらの計画が完了したその後に。

 今はそれぞれの日付を私が把握していれば十分です。


「んで、結局どーすんだよ? やっぱホールか?」

「や……『やっぱ』……?」

「食べきれるかもわからないようなものを用意するつもりはありませんよ」


 以前と違って残りを分ける相手にも心当たりがありませんから。


 店で見たことはありますが……さすがに避けるべきでしょう。


「そーいうもんか? デザートは別腹的なのねぇの?」

「ありませんね」

「私も、その……あまりたくさんは……」

「んなら却下だな。俺もそんなに食べらんねーし」


 いかにもな催し自体、できるだけ避けるべきでしょう。

 美咲をこの町に呼べるのであればまだしも。


「そもそも、年頃の男子はさほどそういうものを好まないという話もあるのでしょう?」


 桐葉をそういう形で困らせるのは本意ではありません。


 照れ隠しだけであれば、何も問題はないのですが。


「そういうところは、確かにあるかも……」

「そりゃそーかもだけどよ。どうした急に」

「一般論とやらを述べただけですよ」

「へーっ。そりゃまた珍しい」

「えぇ、私も最初はさほどあてにしていませんでしたよ」

「……あんま変わってねーのな」


 多少は役に立ちそうですね。コレも。


「あの、ところで……。天上さん、机の上のそれは……?」

「それ、というと……ああ、これのことですか」


 意外なところに興味を示すものですね。


 組織の活動につながるとは思えませんが、いいでしょう。

 協力するというのなら、こちらとしても隠す理由はありません。


「参考書のようなものですよ。桐葉に当てはまる部分も少なからずありますから」


 全てを並べるわけにはいきませんから、ひとまず二冊だけ。

 部屋に置いてきているものも少なくありませんから、このくらいが妥当な量と言えるでしょう。


 見られて困るようなものなどひとつもありません。ええ、どこにも。


「んっと、小説っぽいのと…………子育て本……?」


 首を傾げられる筋合いなど、全く。


 一体どこに疑問を抱く余地があるというのでしょうね。


「そうですが、何か問題が?」

「何かっつーかあ、アウトな要素しかねーじゃねーかよ?」


 解せませんね。


 何故そのようなことを言われなければならないのでしょうか。

 鵜呑みにするほど愚かでもないというのに。


「この本……もしかしなくても、天条くん用の……」

「当然でしょう」

「そ、そうですか……」


 程度の違いはあるようですが、懐疑的な視線を向けられていることに変わりはありません。


「2人揃って、一体どうしたというんですか。そのような目で見られても分かりませんよ?」

「そりゃそーだわな……。分かった上でそんな顔してたらやべぇよ……」

「分からないなんてことは、さすがに……。でも、そう考えると今度は……」

「?」


 はっきりしませんね。


 下を向いてため息交じりに呟かれても断片的にしか聞き取ることができません。

 何やら失礼なことを考えているのは、それぞれの雰囲気からなんとなく伝わってきますが。


「なんか1人足りないけど、どうかした? 小城くんも東雲さんもすっごい表情してさ」


 直接言われないままでは分かるものも分かりませんね。


「そりゃしたくもなるっつーの。渡辺も聞いてけよ。絶対後悔すっから」

「小城くん実は聞かせる気ゼロ?」

「良心が最後んとこでブレーキかけたんだよ」

「へー、そういうこと。……とりあえず感謝しておいた方がいい?」


 ……本は見て見ぬふりですか。


 何故でしょうね。

 たった2冊で危険を避けるかのような態度を取られることになるとは。


「もしかして、天条君がいないのもその話と関係あったり? そんなにないよね。3人だけでいることって」

「それとは別件ですよ。また昇降口で手伝いでもしているのでしょう」

「あー……そっち」


 私としては一刻も早く戻ってきたいところですが、仕方がありません。


 やはり無視できる相手ではないということでしょう。


 ……定期的に増えるソレに思うところがないわけではありませんが。


「(姫宮先輩に天条君を取られちゃてナイーブ、ちょっとみたいな?)」

「(そういうことにしとこーぜ……。考えるのが怖ぇよ、俺)」


 いずれにせよ、この調子では進むものも進みませんね。まったく。


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