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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Birthday Surprise
336/596

003

「それだけでは少し足りないね」


 一部始終を聞いたうえで、頼れる新聞部長様はそんなことをのたまった。


「俺たちの日常会話に一体何を求めてるんですか、姫宮先輩は」

「人目を引くような何かに決まっているじゃないか。まったく、そこのところは把握しておいてくれないと」

「どうしてネタとして扱う前提なんですかね」

「? そのためにわざわざ教えてくれたんじゃなかったのかい?」

「見当違いも甚だしいですね」


 声をかけたのは失敗だったかもしれない。


 次の号が出ると教えてもらったからって近づいたりするんじゃなかった。チクショウ。


 昼休みだけでもあの話題を避けようとして教室から抜けた結果がこれか。


「というかね、それが日常会話だというならもう少し気を付けた方がいいよ? 目立ちまくっているじゃないか」

「さっきはパンチやインパクトがないと困るとか言ってませんでした?」

「悪目立ちでは意味がないんだよ」

「上を陣取るために他の掲示物を引っぺがそうとしていた人が何を……」

「それはこの件とは何も関係がないからね」

「そうですね。あれはあれ単体で大問題でしたからね」


 それを何のためらいもなく実行しようとする辺りがまた何とも。


 より注目を集められるとはいえ、まさかそこまでやろうとするとは俺も思わなかった。


「そうは言うけどね、そもそも生徒会があんなことをしなければ私も強硬手段に出る必要なんてなかったんだよ。――つまりは」

「姫宮先輩にも向こうにも非はある、と」

「私の話、聞いていたのかな? 天条君」

「あの場所がさも新聞部の専用スペースであるかのような態度はいかがなものかと」


 もう他は諦めているのかもしれないけど。


「似たようなものだよ。掲載終了に合わせて次を貼っているからね」

「あの、姫宮先輩。それだただの占拠……」

「効率的な活用と言ってもらいたいね」

「そりゃ先輩にとってはそうでしょうね」


 姫宮先輩ときたら、悪びれもしない。

 他の部が諦めるよりなお悪い。


 でも、言われてみれば確かにほとんど毎回先輩の新聞が張られていた気がする。

 どうやってるのかと思えばそんなカラクリが……。あまり知りたくなかった。


(……あれっ)


「待ってください、先輩。それならどうして、今回の生徒会通信は……」


 いつもはもっと隅の方にあったような。


 ちゃんと見た覚えがないから、自身はない。

 掲示物自体がもっと小さかったような覚えはあるけど。


「それこそが今回の発端だよ」


 ……姫宮先輩の呆れたような顔を見たら、ろくでもない何かがあったのはすぐに分かった。


「この間の連休中は校舎に入ることができなくてね。途中で掲載期間が過ぎてしまって、その隙に張り替えられたというわけなんだよ」

「せっこ……」

「だろう?」


 思わずうなずいたけど、マジか。マジなのか。


 何のためにわざわざそんな面倒なことを。


 生徒会に被害を出したわけじゃ――…………ない、だろうし。多分。さすがに。


「……何か失礼なことを考えていないかい?」

「いやいや、まさか。どうやって連休中に場所を取りk……乗っ取ったのかな、と。連休中は校舎に入れなかったって言ったじゃないですか。姫宮先輩」

「一般生徒はね。生徒会は別だよ、当然。やることが山のようにあるからね」


 さすが、大したもの――なんて、そんな言葉はすぐに引っ込んだ。


 そんな特別扱いこれっぽっちも嬉しくない。


「ウチの生徒会はサービス業か何かで?」

「いいと思うよ。貴重な休みを削ってでも生徒や母校に奉仕したいというなら、させてあげれば」


 姫宮先輩の評価は、さらに辛辣。


 私は真似しようとさえ思えないけど、なんてわざわざ一言付けたしていた。


 さっきといい、らしくないどころの話じゃない。


「どうしたんですか、先輩。そんなに悪態をつくなんて。いつもならもっと涼しい顔で流しているところじゃないですか」

「珍しくい嬉しいことを言ってくれるね?」

「都合のいいところだけを切り抜かないでくださいよ」

「私達には必須の技能だよ」

「他の人のことまで巻き込むのはやめましょうよ。怒られますよ」


 あながち間違いでもなさそうだけど。


 戦いのことが世間に知れ渡っていないのは、そういうところの協力があってこそだろうし。


 まあ、そんなことはどうでもいいとして。


「それより本当にどうしたんですか。何か生徒会に恨みでも?」

「まさか。そんなものはないよ。全く」


 あんな態度を見た後だと、姫宮先輩の言葉をそのまま信じるなんてことはできなかった。


 何かがあるのはほぼ確定。


 ウチの生徒会に関してそんな悪い評判を聞いた覚えはないし、その辺りは少し引っ掛かるけど――


「学内順位なんてものには執着できないというだけの話さ」

「…………はぁ?」


 何を言っているんだ、この人は。


 学内順位って。試験の結果の話かよ。

 極端な話、満点を取れば絶対一位になれるシステムじゃん。


 それができれば俺含め誰も苦労しないだろうけど。


「ほら、君もこだわるようなことじゃないと思うだろう? つまりはそういうことだよ」

「まあ、それにこだわる人がいるのは分からなくもないですけど……」

「一人で勝手にやっている分にはね」


 ……なんとなく話が読めてきた。


 今の生徒会長的には、姫宮先輩が上にいるのが納得いかないってわけだ。

 それで変な対抗意識を燃やしてしまった、と。


(……って)


「先輩、ひょっとして学年トップだったりします?」

「書類上はね。言っていなかったかな?」

「この前『優秀』だと教えてもらったくらいですね」


 でも、そうか。そういうことならいろいろ納得。


(先輩が……かぁ)


 この人ならやりそうな気はする。


 自分でもよくわからないけど、すらすらと問題を解く姫宮先輩の姿が目に浮かぶ。


(生徒会長さんも運がないなぁ……。よりにも寄って同じ学校にこの人がいる、なんて……)


 ちょっと待て。


「あの、先輩。姫宮先輩。生徒会長って、もしかして……」


 テストの順位でいつも姫宮先輩に負けるということは、つまり。


「私と同じ、二年生だよ。君もまた今更なことを聞くね?」


 ……やっぱり。


 そういうイメージがなかったから、ちょっと意外。

 年度の後半に入って世代交代をした後ならわかるけど、この時期に二年の会長って。


「入学式でもありがたい演説をしてくれた筈だよ。覚えていないかい?」

「頭のよさそうな顔はまぁ、なんとなく。ただ、学年まではさすがにちょっと」

「堅物というんだよ。世間一般ではね」

「先輩と絶望的に相性が悪いのはよぉーく分かりましたよ。今ので」


 水と油。犬猿の仲。


 直接話したこともないけど、さすがに想像がつく。

 そこまで聞いて分からない方がどうかしている。


「当然じゃないか。生徒会と新聞部だよ?」

「どうして先輩の知識は変なところで偏るんですかね……」

「仕方のないことさ」

「開き直らないでください」


 学生の集まりがそんな大それたことをするとも思えない。


 労力を払ったところでとんでもないニュースが掴めるとも思えないし。

 というか、そんなものが見つかっても困る。


「まあでも、分かりましたよ。先輩にとって困った存在だということが」

「それなら一つ、私の助けになってみる気はないかな?」

「そっちの催促もされてるんですね……」


 やっぱりあったのか。そういうルール。

 何かしら理由はあるだろうと思ってたけど。


 ……本当にあったっけ? そんな規則。


「私にとってはそれが最優先だよ。他はいくらでも後回しにできるんだから」

「そんなこと言ったらマジギレしそうですけど」

「知っているよ。前にされたからね」

「そうだと思――……は? 今、なんて?」


 聞き間違いであってほしい。


 お昼ののどかな空気に充てられて眠くなってしまったせいだって、今すぐにでも言ってほしい。


 姫宮先輩だって、そんな人の心がないようなことはいくらなんでも――


「だから、前にあったんだよ。欲しがっていた一位をプレゼントしてあげた時にね」

「よりにもよってそんな仕返しをしたりするから余計に対抗意識を燃やされるんですよ」


 そんな風に手を抜かれたら怒るでしょうよ。


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