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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Birthday Surprise
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001

「あと少し、ですね……」


 心待ちにしている気持ちの方が圧倒的であることは疑いようもありませんが、呑気なことを言っていられる状況でもありません。


(あと少し……明日のことでないとはいえ、残された時間も長くはありませんか……)


 何度カレンダーを確かめてみても、やはり変化はありません。


 その日まではあと僅か。

 気を抜いていてはすぐにその日になってしまいます。


 次の週末、いえ、土曜日には何としても終わらせなければなりません。


 ……桐葉や美咲が聞いたら当たり前のことだと答えるのでしょうね。きっと。


 時の流れを意のままに操る都合のいい力があれば、そもそもこんな争いには至っていない筈ですから。


(できることなら二週間は確保しておきたかったのですが……今となっては、どうすることもできませんね……)


 桐葉たちが言うところの教団――あれらが余計なことをしなければ、こんな風に思い悩む必要もなかったでしょう。


 この地域に来てからも、迷惑をこうむりましたから。


 親睦会も兼ねて訪れたショッピングモール内で暴れ出し、一般人をそそのかした挙句にあのような得体のしれないものを作らせて。


 最悪の事態を避けられたからいいものの、些細な要因で妙な方向へ転がっていたかもしれません。


(常識がないとは薄々感じていましたが……まさか、これほどとは)


 桐葉があのように言うのも無理はありませんね。

 私でさえ呆れを通り越してしまいそうです。


(せめて例の対抗戦が……いえ、これ以上は考えるべきではありませんね……)


 あの出来事も、私たちにとっては不可欠なものでした。それは間違いありません。


 仕返し、もとい雪辱を果たしたことで一歩前進できたのは紛れもない事実です。

 精神的な部分に限定しても、実力の部分に目を向けたとしても。


 今後、チームとしての活動の機会は増える一方でしょう。

 一個人として見てもそう問題のある面々ではありません。


 同世代かつ近い境遇に置かれた友人の存在は桐葉にとっても大きなものでしょう。


 こればかりは私が知恵を振り絞ったとしてもどうすることもできません。

 演じられるものでもありません。


 私とあの二人、それぞれに桐葉が抱く印象は全く別のものですから。


(……いっそ、あれらにも協力を……。……いえ、それはそれで複雑なことになりそうですね……)


 大前提として、私の作業を手伝わせることはできません。


 これだけは私の手で完成させると決めています。

 他の誰かに触らせることだけは絶対にできません。


 ……一応、その他の問題もありますが。


 どちらにせよ私の手で完成させなければなりません。


 タイミング的にはおそらくギリギリといったところでしょう。

 間に合いさえすれば構いません。


(もし間に合わなかったのであれば、それは私自身の問題……。あの程度のことで当日に間に合わないなどあり得ません。えぇ、決して)


 言い訳などできるものですか。


 なんとしても間に合わせてみせましょう。

 そのために質を落とするつもりなどみじんもありません。


 桐葉が知ればきっと、そこまでしてくれなくてもと言うでしょう。


 いつも私のことを心配してくれていますから。

 この状況を知れば休むように行ってくるのは容易に想像がつきます。


 これを見て喜びはするでしょう。確実に。喜ばない筈がありません。


 それもおそらく、一目見ればすぐ分かるほどに。


 想像するまでもありません。

 美咲や私でなくとも分かるくらいに喜ぶのは確定事項と言っても過言ではありません。


(……結局、全ては私次第ですね)


 疲労困憊の姿を晒してしまえば、きっと桐葉が心配するでしょう。


 彼のことですから、私の夜更かしにももう気付いている筈です。

 無理に隠そうとしたとこ炉でごまかし通せるものでもありません。


 それが彼、天条桐葉ですから。


「今だけは……あなたにとって大切なその日までは、もう少し鈍くてもいいんですよ?」


 ――寝顔を見て、思わず、彼の頬を突いてしまいました。


 いつもとは違った、無邪気な表情。

 穏やかな寝息を立てるその姿は、どこか赤子のようにも見えました。


「四六時中気を張っていなくても、誰も攻めませんから。……あなたがあなたでいてくれるのなら、それで」


 あやすように頭を撫でてしまったのも、きっとそのせいでしょう。


 ただ、少しでも安らかな眠りについてほしかっただけのことです。


(ふふふ……これをあなたに知られるわけにはいきませんんね)


 こちらに来てからの生活に疲労を溜めているのは彼も同じでしょう。


 身体を慣らそうにも、あれらの活動が収まる気配がありません。

 休もうと思っても駆り出されてしまうのですから。


(……もう少し、料理を身につけられていればよかったのですが……)


 そんな状況にもかかわらず、家事のほとんどは桐葉に任せきり。


 自らの不甲斐なさにはため息をつかずにはいられません。


 まして、彼の仕事を減らそうとして逆に増やしてしまうなど……


「ん~……」


「っ!?」


 ……まさか桐葉の吐息に驚いてしまうとは。


 焦る姿を見られたらいよいよ言い訳ができなくなるというのに、身体が言うことを聞きませんでした。


「ん、んんん……zzz……」

「ほっ……」


 ただの寝言だと、冷静に考えたら分かることだというのに。


 わざわざ確かめ、その上さらに安堵するなど本来あってはならないことです。


(……それだけ焦っている、というわけですか。私自身が)


 今夜の作業はそろそろ切り上げるべきかもしれません。


 明らかに、私自身が冷静さを欠いてしまっています。

 このまま無理に続けても、納得のいく仕上がりになるとは思えません。


「まったく……あなたも、罪な人ですね?」


 言いながら頬に触れたのは、私の意思。


 私のことを戸惑わせながらも寝息を立てている桐葉への、ちょっとしたお返しのつもりでした。


「んん~……」

「あ……」


 逃げることでもないでしょう。


 寝ているとはいえ、そんな態度を取られては私も傷つきますよ?


「zzz……」

「もう、つれませんね」


 可愛い寝言の一つでも聞けたらよかったのですが、そう上手くはいってくれませんね。


 せっかくの機会ですから聞いておきたかったのですが、残念です。


「あなたがそういうつもりなら、それはまたの機会にということで……。その時は、楽しみにしていますね?」


 当然、急かすつもりなどありません。


「ですから、今は……おやすみなさい、桐葉」


 今、私が贈られるわけにはいきませんから。


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