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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
333/596

050

「あ、ありがとうございました……っ」


 会って早々、お礼を言われた。

 しかも別れの挨拶が続きそうな勢いで。


 橘さんに言われたことを思い出しながら拠点に向かって、着いた途端にこれだ。


「えっと、東雲さん……? それは一体、どういう……」


 どこだ。どこに行ったんだ。

 原因を知っているくせにその場で対応しようとしなかった担任はどこだ。


 分かっていなかったとは言わせない。

 大事な大事な妹さんのことなんだから、間違いなく知っていた。


 また抜き打ちテストでも始めたんじゃないだろうな、東雲先生。


「えっと、その、昨日のことで……。打ち上げの時には、そういう話もできなかったから……」

「あぁ……」


 そんなことしてる余裕もなかったから仕方がない。


 別に誰が暴走したというわけではないんだけど。

 場の雰囲気で何となく後回しになっていた部分は間違いなくあった。


 まさか翌日にこんな展開が待っているとは思ってもみなかったけど。


「昨日のことならお互い様だよ、お互い様。俺の方こそ、ありがとう」

「そ、そんな……私は、別に……」


 むしろやってもらったことの方が多いかもしれない。

 東雲さんは案の定、素直に受け取ってはくれなかったけど。


「東雲さんには準備の時点でいろいろと助けてもらったし。――な? イリア」

「えぇ。少なくとも一方的に感謝されるようなことではありませんよ」

「て、天上さんまで……」


 あまり何度も言うのはどうかとも思ったのもある。

 昨日の時点で似たようなことを言っていたから。


 とはいえ、東雲さんがそういうつもりなら話は別。


「そういうこった。誰が抜けてもきっと勝てなかったろーぜ」


 ――小城もやっぱり、俺と同じ考えだった。


 それにしても、さすが。一目見て状況を察してくれたらしい。

 いま来たばかりだったのに。


「言っただろう? 皆ならそう言う筈だとね」

「お姉ちゃん……」


 ……反対側から来た東雲先生は、そうでもないんだろうけど。


「やっぱり隠れていたんですね、東雲先生……」


 今までのやり取りを聞いていたとしか思えない態度。

 隠そうとさえしないとは恐れ入った。


「少し様子を見ておきたくてね。私がいると話しづらいことだってあるだろう?」

「そんな、姫宮先輩じゃないんですから」

「そ、そのたとえ方は……」

「覗き見ていたのは事実でしょう」


 疑っているわけじゃないのは分かる。


 万一のことを考えているなら、わざわざそんなことは言わない。

 釘を刺したいというわけでもなさそうだった。


 ……どちらにせよ、最初からそんなことはこれっぽっちも考えていないけど。


「いいじゃねーの。そんな気にしなくてもよ。聞かれて困ること言うわけでもねーだろ」

「まあ、確かに。その辺りを一番気をつけなきゃいけないのは小城だろうし」

「どういう意味だコラ」

「文句を言う前に自分の過去の言動を振り返ってみろよ」


 俺もさすがに小城には負ける。


 東雲先生に関する失言の頻度はさすがに俺も勝てそうにない。

 勝つ気なんてこれっぽっちもない。


「あれもこれもオメーに嵌められただけじゃねーか」

「失礼な。人聞きの悪い」


 そんなつもりは全く微塵も。


 嵌めてやろうなんてそもそも思わない。

 ひょっとすると偶然、結果的に近い状況になってしまったことはあったかもしれないけど、精々そのくらい。


「そんな、心配しなくても……。お姉ちゃん、よく褒めてるよ? 天条くんのことも、小城くんのことも……」

「マジで!?」

「落ち着け、落ち着け。そんなに食いつかなくていいから」


 小城のがっつき具合にはさすがに東雲さんも微妙に引いていた。


 東雲さんがそうなってしまうのも仕方がない。

 まさかあんなに分かりやすく反応するなんて普通は思わない。


「生徒の頑張りを評価するのは当然のことだよ。皆とても熱心にやってくれているからね」

「普通に本人に言ってくれませんかね。特に小城には」


 何も妹さんの前じゃなくても。


 先生のことだから、東雲さんのことも褒めているとは思うけど。

 それにしたって、なんというか……


「なんで俺だけ」

「あんなに喜ぶくらいだから、そういうのを特に期待しているのかと」

「変なとこで気ぃ遣ってんじゃねーよ?」


 別に小城のことだけというわけでもない。

 小城には悪いと思うけど。


 ……さすがにそろそろ終わらせよう。この話題、ちょっと疲れた。


「じゃあ、俺と東雲先生なら?」

「そりゃせんせに決まってんだろ」

「ほらやっぱり」


 間髪入れずに返すと、小城は黙った。


 ため息をつくイリアと、腕を組み直した先生と、何かを察したような表情の東雲さんをそれぞれ見て――そして。


「…………こいつまた嵌めやがった!?」

「またそういうことを言う」

「い、今の……引っ掛かるんだ……」


 さすがに俺も驚いた。


 こうもあっさり引っかかるなんて思いもしなかった。


「なーにが人聞き悪いだこんにゃろ。やっぱ間違ってなかったじゃねーかよ」

「俺もまさかこんなことになるとは思わなくて」

「なら仕方ない……とか言わねーかんな?」


 さすがに駄目か。


 当初の目的は達成できたし、ひとまずそれでよしとしておくしかない。


「そこまでにしておきなさい。本題はそれではないでしょう」


 イリアに求められてしまったし、それがいい。


「同感だ。それに、天条くん達のことに関しては……三凪の方がよく言っていたと思うよ」

「そ、それは……!」


 ……何やら別の方向に向かっている気がするけど、多分気のせい。


 小城を見たけど、首を横に振られてしまった。

 イリアも止める気はさらさらないらしい。


 気持ちは分かる。俺もどうしたらいいのかまるで分からないから。


「昨日のこともそうだったよ。映像を見ながらそれぞれのいいところを探していたからね」

「っ……!?」


 ……うわぁ。


(……せんせ、割と容赦ないトコあるよな)

(嫌がらせのチキンレースでもしてるんじゃないのか、あの人……)

(そういう趣味でもあるのでしょう。考えるだけ無駄ですよ)


 喜びの感情がまるで湧かない。

 嬉しい話が聞けたはずなのに、全く。


「あ、あれは、その……これからのことも、あると思って……」


 東雲さんが気の毒で気の毒で、正直それどころじゃなかった。


「聞いての通りだ、皆。これからも変わらず頼むよ」


 言わんとしていることは、まあ分かる。


「いや、そりゃ……俺達もそのつもりっすけど……」


 お断りしようだなんて、俺もイリアも小城も思っていない。


「? どうしたんだ、皆。思っていることがあるなら言っていいよ。怒ったりしないから」

「いや、まあ……」

「これで怒られたらさすがに理不尽っすよ……」


 問題は、そこではなくて。


「気になるなら妹の様子でも確かめてはどうですか?」

「三凪の?」


 ――イリアが言って、その時ようやく先生は東雲さんの方を見た。


 自然と俺たちの視線が、東雲さんに集まる。


「ご、ご……ご…………」


 青ざめたかと思えば、赤くなったり。逆もまたしかり。


 悪い意味で表情がころころ変わる。


 東雲さんの限界が近いことも、見ればわかった。


「さ、三凪……? 一体、何が――」


「ごめんなさい…………っ!」


「三凪!?」


 ――案の定、東雲先生が引き金を引いた。


「今回は俺たちがなんとかしますから、戻ってくるまで東雲先生はじっとしておいてくださいね。絶対に」

「なっ……それは一体、どういう……!?」


 やるべきことは決まっていた。


「すんません。俺、今回だけは天条に全面同意っす!」

「小城君まで……!」


 わざわざ打ち合わせるまでもない。


「これに懲りたら少しは反省することですね」

「ちょ、ちょっと待っ――」


 誰からともなく、逃げ出した東雲さんを追いかけた。


「ち、違くて……ちにかく、違うんです……! 私、そういうつもりじゃ……!」

「分かってる、分かってるから! ……足早っ……!?」


 なんてことをしてくれたんだ。本当に。


 分からない人ではない筈なのに。

 昨日だってきっと、東雲さんのことを励ましていた筈なのに。


「……なーんかこれ、俺たちがフラれたみたくなってねぇ?」

「それ、東雲さんには言うなよ。絶対に言うなよ?」

「もしもの時はすべての責任を取らせますから、そのつもりで」

「怖ぇって……!」


 チームとして進歩はしても、落ち着かないのは相変わらずだった。




(To Be Continued...)


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