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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
331/596

048

『ようやくか』

「相変わらず手厳しいですね……」


 らしいと言えばそうなんだけど。


 試合を終えた次の朝。

 トレーニングが終わったばかりのところに、橘さんからメールが届いていた。


 せっかくだからと思って電話をかけた結果、ありがたいお言葉をもらう羽目になるのはある意味いつも通り。


 ……そういう風にしてくれるから、俺もつい頼りそうになってしまう。


『遅いとまでは言わん。貴様の努力だけでどうにかできるものではないからな』

「それを言ったら『まだまだ』ってことにもなりますからね」

『分かっているならいい』


 なんでも、おおよそのことは東雲先生から教えてもらっていたらしい。


 だから橘さんが聞いてきたのはもう少し具体的な話。

 今回の件を通しての、俺の感想を求められているような状態だった。


『だが……踏み込む加減は間違えるなよ、天条。何もかもを知ろうなどとは思わないことだ』

「……ですね」


 心配してくれているのは、なんとなく分かった。


 もっともな忠告はきっと、今回の件に限ったことではないんだと思う。

 それに関しては俺だって思うところくらいある。


「橘さんのことだって、まだまだ知らないことの方が多そうですし」

『当然だ。話す必要のないこともある』

「ですよね」


 特に隠そうとしなかったけど、そこから先を語ろうともしなかった。

 予想通りといえば、予想通り。


(必要のない、か……)


 その言葉をどういう意味で言ったのか、正確なところは分からない。

 どうとでも捉えられる言葉だ。


『そんなことはいい。それより貴様……実戦で同じことはするなよ』

「な、なんのことです?」


 ――ジロリと俺を睨む橘さんの幻が見えた気がした。


 何の話をしているのか分からない。

 心当たりがありすぎて分からない。


 さっきの言葉の真意を突き止めたくても、それどころじゃない。


『一回目、魔法を氷の足場で受け止めたことについてだ。あんな方法、二度は使えないと思っておけ』

「あ~、あれでしたか……」


 ……東雲先生、さては映像も送ったな。


 まるで見てきたかのよう。

 現地に来ていたわけでもないんだし、橘さんのところに映像が届けられるルートなんてひとつしかない。


 ……東雲先生、気になる点があるなら自分で言えばいいのに。


『確かに、飛行魔法では離脱できない場合もあるだろう。だとしても受け止めるのは最後の手段だ。分かったか?』

「確かに、あっちこっちにぶつかってろくなことないですからね。あれ」


 同時に求められるのは、適切な判断。


 その場の思い付きで何とかしようなんて考えるなってことだろう。

 ……前にも怪物を投げ落として叱られたし。


『そんな話はしていない。その程度は貴様自身でどうにかしろ』

「罠かもしれないから気をつけろっていうところじゃないですかね。そこは」

『誰が直に受けろと言った?』


 要は守れ、と。


 そんなことをしたらそれこそ魔力の無駄遣いになりそう。


 ……いや、ちょっとした怪我でも後でどう悪化するか分からないから、当たり前の心配と言われたら頷くしかないけど。


『……まあ、その話はいい。それよりもだ。基本的には発動される前に気付け。話はそれからだ』

「とうとう師匠みたいな無茶苦茶を」

『無茶ではない。魔力の流れのほかにも気付く手がかりはある筈だ。そのあたりも意識しておけ』

「確かに、理屈の上ではそうかもしれませんけど……」


 そんなに上手くいくだろうか?


 探せなきゃ困るのは間違いない。

 ただ、今回の試合の中にも巧妙に隠された代物を何度も見てきた。


『いつどのような形で襲撃を受けるか分からん。自然な状態でも察知できるよう鍛えておくよう、言った筈だが……?』

「あ、あー。そうでした。そういえばそうでしたね?」


 ……やっぱり、目指す先はまだまだ遠い。


 いうほど簡単じゃないことくらい、橘さんなら知ってる筈だ。

 簡単に出来たらだれだって苦労しない。


 その上で会得しろと、そう言っていた。


『その程度の認識でどうする? 不自然なまでに事件が連続した後とはいえ、大人しくなる保証など――』

「分かってます。分かっていますから、これでも。イリアにも手伝ってもらって少しずつなんとかしていきますから」

『自分が鍛えておけばいい、なんて考えるなよ』

「や、やだなぁ。そんなこと考えてないですよ?」

『フン、だといいがな』


 この人はこの人でどうしてこうも簡単に気付けるんだか……。


 別に小城や東雲さんのことを忘れていたわけじゃない。

 俺もそんな偉そうなことを言える状態じゃないな、って思っただけで。


 ……言わないでおこう。言い訳にしか聞こえない。


「それよりもうちょっとこう、ありませんか? 優しい言葉とか。これでも勝ったばっかりなんですけど。俺達」

『下手に褒めると調子に乗りかねんからな』

「あーあー、お気遣いどうもありがとうございますー」


 余計なお世話だこんちくしょう。


 そんなことだろうと思った。


 一晩明けたわけだし、少し手厳しいくらいでちょうどいいのかも――


『そもそもだ。一回目の煙幕くらい、貴様もどうにかできた筈だろう』


 思わず、聞き返しそうになった。


 言葉の意味くらい分かる。

 そういう問題じゃない。


『最終的に下した離脱の判断はそう悪いものではないが、問題はそれ以前だ。打開する術が全くなかったとは言わせん』

「うぐっ……」


 ……評価されているのか、叱責されているのか。


 実際には多分、両方。

 あの場で実践できなかったから、後者がほとんどを占めているだろうけど。


『この先、貴様が引っ張る場面も増えるだろう。その辺りもよく考えておくんだな』

「まあ確かに、2943に上級生はいませんけど……」

『それは今だけの話だ。来年になれば貴様らがその上級生になる』

「新入生がいれば、ですけどね」

『……西明千時の件をもう忘れたか。保護したのは貴様だろう』


 なるほど、そういう。


 いない可能性を考えるだけ無駄だと、そうおっしゃっているわけだ。

 なければそれに越したことはないだろうけど。


「いつ誰が狙われるか、分かったものじゃないですね。確かに」

『思春期に魔力を発現させた事例は多いからな』

「というか、ほとんどそうなんじゃないですか?」

『何事にも例外はある』


 確か、橘さんもそのくらいだった筈。


 身体の成長にだって個人差があるから、その通りとは行かないのも分かる。


 まあ例外なんて言ったって、さすがに誤差レベルの――


『貴様の学年にもいた筈だ。確か、海外には3歳頃に魔力を発現させたという事例もあったな……』

「さっ……!? い、いくらなんでも早すぎませんかね……」

『だが、事実そういう事例は存在する』


 思わず耳を疑った。


 橘さんはいつも通りの口調で言っていたけど、驚かないわけがない。

 ましてそんな人が同じ世代にいるなんて。


 その辺りも頭の片隅に入れておけ、と……そういうことだと思う。


 それにしたって、3歳は驚き。

 量にもよるけど、そんな時期に魔力を手にしたらどうなることか……。


(……桜華は大丈夫、だよな?)


 ……無性に不安になってきた。


 どうせなら調べてもらおうか。

 美咲のこともあるから、そのとき一緒に。


 一度あったんだから、二度目があってもおかしくない。


 それについては伝えるだけ伝えて、追及はしないことにした。

 あまりしつこく考えると、現実になってしまいそうな気がしたから。


「そういえば、どうですか? 西明さんの調子は。本人とはたまーに連絡を取るくらいなんですけど」


 ただ、西明さんのことを聞いた理由は、話題転換だけじゃなかった。


 他の人から見てどうなのか確かめておきたいというのも、本心だった。


『篝を含め数名に見させているが、問題はない。貴様に比べれば随分と素直だからな』

「その情報はいま必要ないと思うんですけど」

『言われたくないなら反省するんだな』

「そいつは悪ぅございました」


 ……余計な情報を入れてくれやがったおかげで、いまいち安心しきれない。


 分かっててわざとやってるんだろうな、この人……。


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