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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
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047

 疲れもあるだろうからって、結局、今日はそれなりの時間で解散になった。


 それでもなんだかんだ、かなりの量をごちそうになったわけだけど……。


『――そっか。じゃあ、なんとかなったんだ?』


 美咲の落ち着いた声が、意識を現実に引き戻してくれた。


「おかげさまで。美咲様にはなんと感謝したらよいのやら」

『本当にそう思ってるならそんな言い方は止めなさい』

「言われると思った」


 言えないようなことはできるだけ伏せて、話せそうなことは一通り話した。


 相談にも乗ってもらったし、知らんぷりなんてできるわけがない。

 そこまで遅い時間でもないから、ゆっくり話せる。


「でも本当、ありがとう。おかげでめちゃくちゃ助かった」

『めちゃくちゃは言い過ぎ。それに実際に話したのはきっくんでしょー?』

「そうかもしれないけど、かなり背中を押してもらったわけだし」

『そんなことないと思うけどなー……』


 照れ隠しとかじゃなく、本気でそう思ってた。


 美咲のことだ。

 首をかしげている姿が容易に浮かぶ。


 本当に大したことじゃないと思っているから。


 何もかも全部やるくらいじゃないと納得できないんだろうか。

 そこまでおんぶにだっこはさすがにお断りしたい。


「またまた美咲様はそうやってご謙遜なさる」

『きっくんが気にしすぎなの』

「それこそない。絶対にない。むしろ足りないくらいなのに」


 主に感謝が。


 こっちからじゃ電話で言うくらいしかできない。

 何かを送るくらいならできないこともないだろうけど、美咲が気にしそうだし……。


『……だからって、変なことはしないでね?』

「俺に対する認識、おかしくない? なぁ」

『さっきだって変な態度とってたでしょー』


 ……それを言われると返しづらい。


 さすがに今回はそんなことは考えていなかったけど。

 いくらんでも前科が多すぎた。チクショウ。


 ……そんなにお望みか。


『上手くいったならそれでいいんだってば。……どうして変なことするかなー……』

「それが、その……最近どうにも美咲の突っ込み分が不足しちゃって」

『私の突っ込み分って何!?』


 美咲の叫びが、脳の奥に突き刺さる。


 もはやお馴染みレベルの声。

 最近、あまり聞いていなかったのも本当。


 さすがにそんなものがないと倒れるなんてことはないけど。

 少し元気が出るだけで。


「申し訳ないとは思ってるんだよ。でも、でも……それがないと、俺……」

『そんなわけないでしょーっ!!!』


 そりゃそうだ。


 美咲の怒り寸前の声に、思わずう頷く。

 向こうには絶対に見えていないという確信を持ったうえで。


『そんな変なものあるわけないよね!? 無理にボケなくていいから!!』

「変だなんて、そんな。俺のエネルギーの源なのに」

『どういう食生活なの……』


 ……何か変な心配をされた。


「いやいや、そっちは大丈夫。美咲にもいろいろと教わったし」

『さっきの話のせいで自信がなくなったよ……』


 冗談。

 イリアにも好評なんだからもっと自信をもってほしい。


 何度つく手も美咲のようにはいかないから本当に不思議なものだとつくづく思う。

 ……これも経験の差か。


 何年たってもこればっかりは勝てる気がしない。


 美咲に教わった通りに作ってる料理だってあるくらいなんだから。


「大丈夫、大丈夫。イリアは勿論、東雲さんにも好評だったし」

『……東雲さん?』


 ――雰囲気が、少し変わった。


 さっきまでの雰囲気が吹き飛んだ。

 東雲さんの名前を出した途端に。


「ほら、例の。名前まだ言ってなかったっけ?」


 今回は口を滑らせてもいない。筈。


 自信がないなりに思い返したけど、間違いない。


 今の話で引っかかるようなところなんて――


『ううん、言ってたよ。間違いなく。……いま聞いたのは、そっちじゃなくて』

「…………あー……」


 分かった。いま理解した。


「美咲が心配してるようなことは何も。この前うちに来たことがあって。その時に、少し」


 けど、隠さなきゃいけないこともない。


 そもそも、その辺りも話したような。……言ってなかったっけ?


 言われてみれば、夕食を食べてもらったことまでは言っていなかった気もするけど。


『きっくんのアパートに? ……離れてるんじゃなかった?』

「お姉さんが送ってくれたんだと。実際、外で待ってたし」

『どうして中に入ってもらわなかったの……』

「確かにそうなんだけど、話の流れでいつの間にか」

『……んー…………?』


 ……話してなかったんだな、俺。


 この反応は間違いない。

 東雲先生のことも言ってなかったらしい。


「本当、他には何もないから。小城のところに揚げ物を送りつけてやろうってくらいで」

『東雲さんもそんな人なの!?』

「いやいや、全く。そっちは俺の独断だから大丈夫」

『全っ然大丈夫じゃないよね! 絶対にやっちゃ駄目だからね!」


 ……おっと、口が。


 つい話すつもりのなかったことまで。


「変なことはしないって。美咲の教えどおり、食べ物で遊んだりなんかしないから」

『そうは思えないから言ってるんだけど……分かってる? 本当に』

「勿論でございますとも」


 ……このくらいにしておかないとヤバそう。色んな意味で。

 マジで怒られるのはさすがに勘弁。


「それより、美咲の方は? あれから何か変わったこととか」

『……ちょっと露骨すぎない?』

「はてさて、なんのことだか俺にはさっぱり」

『ふぅん……』


 怖い怖い。


 すっと目を細めた美咲が、すぐそこにいるような気がした。

 相変わらず不思議な力をお持ちのようで。


『……いいけど、特に何もなかったよ? おーちゃんも元気だし』

「そいつは何より」


 冗談はさておき、ひとまず問題はないみたいだった。


 橘さんの方からも特に何も言われていないし、大丈夫s


『帰ってきたらちゃんと顔も見られるんだけどなー?』

「……スミマセンでした」


 ……俺の方が大丈夫じゃないかも。


『反省してるならちゃんとどこかでは顔を出すこと。おばさんも心配してると思うよ? あんまり顔には出さないけど』

「うぐっ……」


 分かってる。


 これでも一応、そのくらいは理解しているつもり。

 おかげで耳が痛くて仕方がない。


『慣れない環境で疲れたりもすると思うけど、無理はしないこと。いい?』

「また母さんより母親らしいことを……」

『そういうことを言うんじゃありません』


 こんな言葉で思わず話をそらそうとしてしまうくらいには。


『それに、こんな風になった原因といえば……ね?』

「何が『ね?』だこの野郎」

『心当たりがあるなら反省しなさい』


 ぐぬぬ……。


『きっくんが頑張ってるのは分かってるから。本当、無理しないでよ?』

「…………なるべく気をつける」

『ん、よろしい』


 真面目な話、そういう思いが全くないわけではなかった。


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