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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
308/596

025

「おは…………よう……?」


 ――その日の朝は、少しだけいつもと違っていた。


「おはよう、東雲さん。さすが、やっぱりもう来てたんだ」

「あ、はい……。今朝はその、やることがあったから……」


 いつものトレーニングすら後回しにせざる追えないほど早い時間に招集がかけられたことがひとつ。


 学生という身分を考えても、あまりに早過ぎる招集時間。

 最初に聞いた時は、三凪も思わず姉に確認を取ってしまった。


「ほ、本当はお願いしようか迷ったんだけど、最近は手伝ってもらってばっかりだったし……量もそんなに多くなかったから……」

「そう? ならいいけど。そういうことなら今度いつもの倍動いて返させてもらおうかな」

「そ、『そういうことなら』……?」


 それから、その内容について詳細がほとんど書かれていなかったことがひとつ。


 近日に控えた後半戦――それに関するものであれば、隠す必然性はない。

 大まかな内容だけでも記載して然るべきなのだ。


 当然、他の案件に心当たりもない。


 現在、エリア2943内では教団の動きも確認されていない。

 むしろ二度も事件が起きたこの4月が異常だっただけである。


 だからこそ、三凪には分からなかった。

 わざわざ用件を伏せてまで自分達を呼び出すだけの理由が見当たらなかったのである。


「それに、ほら。前は『手伝う』なんて言っちゃったけど、よくよく考えたら俺達の仕事でもあるんだし」

「そ、そんなことは……」

「ある。2943の業務なら実質、俺達全員の役目だよ。多分」

「それは……確かに、そうかもしれないけど……」


 そして何より、もう一つ。


「それなら、その……どうして今日、天条くんだけが……?」


 三凪より先に着いていたらしい桐葉を除いて、仲間の姿が全く見当たらなかったことだった。


(ど、どうして……? 今日の連絡、ちゃんと届いてたんじゃ……)


 部屋の隅に目を向けてみても、やはりその姿はない。


 小城だけであればまだ、三凪も混乱することはなかった。

 集合時間までの猶予を思えば、この時間に来ている桐葉が早過ぎるくらいなのだ。


 だが、三凪が何度見てもここに居るのは桐葉だけだ。


「天上さん、何かあった……? 一緒にいないなんて……」

「珍しい、って? 大丈夫だよ。体調を崩したとか、ケンカしたとか――そういうわけじゃないから。全然」


 記憶を呼び起こしてみても、桐葉と衣璃亜はほとんど常に共に行動していた。


 直近の例外は、新聞部長の元を訪れた時くらい。

 組織によって保護――実際は監視――されたクラスメイトに赴く前を除けば、他の心当たりはないも同然。


 他には、どうしても男女で分けなければならない時くらいのものだった。


「本当、大丈夫。……こっちに来てからほとんど一緒だったから、そういう風に思われるのもなんとなく分かるけど」

「それもだけど……天条くんも天上さんも、あんまり離れたがってないみたいだったから……」

「…………そこまで?」

「ち、違ったらごめんなさい。二人ともいつも一緒だったから、羨ましくて……」


 両者の間にある繋がりが決して浅いものではないことを三凪も薄々ながら感じていた。


 ふとした拍子に呆れる姿を見せることはあったものの、そこ止まり。

 桐葉と衣璃亜の二人の関係が決して浅いものでないことは、三凪の目にも明らかだった。


「そんな、別に謝らなくても。ほとんど毎日一緒にいるのは本当だし。…………そういう風に見えるかぁ……」


 二人で一部屋を使うと聞いて驚いたのも、三凪にとってはさほど昔の出来事ではなかった。


 割り当てられた部屋が二人用に設計されたものではないというのは勿論のこと。

 同い年の男女が同じ部屋で、ましてアパートの一室で寝食を共にするなど、三凪には信じがたいものだった。


「天条くん、やっぱり……」

「いやいや、そっちはいいんだよ。本当。そう思われるのも当たり前な状況だし」


 同じエリア出身とは聞いていた。

 しかしこの場合、その程度の事実は何の安心材料にもならなかった。


「……まあ、羨ましがられるとは思わなかったけど」

「そ、そんな……」


 しかしそれから実際に二人に会い、傍から見たことで――次第に違和感は薄れていった。


「天条くんも天上さんも、二人でいるのが自然っていうか……。相手のこと、よく分かってるみたいで……」

「ん、まあ……他の人に比べたら分かるかも。なんて、最近は若干イリアに読まれっぱなしも気がするけど」

「でも、それって……天条くんが信頼してるからなんじゃ……」

「さすがに何もかも筒抜けにされると困るって。俺も」


 そんな言葉と共に、肩をすくめて桐葉は笑った。


 その表情は、三凪の目から見ても悩んでいるようには見えなかった。

 今すぐにでも解決せねばと――そんな雰囲気は、微塵も感じられなかったのである。


(天条くん……やっぱり、二人とも……)


 これからも桐葉はきっと、形だけの抵抗を続けるだろう。


 それが一切効力のないものだと知った上で。

 誰よりもそれを感じつつ、その態度を取り続けるだろう。


 全てを受け入れてはならない――そんな誓いにも似た思いを胸に。


「――それに」


 しかし、そこでは終わらなかった。


「イリアとばっかり通じ合うようになっても……これから先のことを考えるならなおさら、駄目なんじゃないかって思うんだよ。イリアのことを抜きにしても」


 桐葉の目は、確かに三凪を見つめていた。


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