015
「2943、帰還しましたぁ…………っ」
疲れた。
こればっかりはさすがに疲れた。
重いとか何とか一切関係なく、ただただ疲れた。
「うん、確認したよ。まさかこんなことをするとは思わなかったけど」
「て、撤退もありだって言ったの、先生でしょ……」
全員を連れて降参の宣言をするなんて、明らかに無理のある話だった。
三人くらいならなんとかいけると思った自分をぶっ飛ばしてやりたい。
体重はともかく身長の方が手に負えない。
「一度に三凪達全員を連れて戻って来るとは思わなかったという話だ。……簡単なことではなかった筈だよ」
「これがっ、楽そうな顔に、見えますか……」
一人目を脱落させた光の柱が見えた辺りまで行って、東雲さんのこともなんとか回収して。
それから少し走って――そのまま、小城のことも見つけることができた。
その時点で警戒やら何やらやることが目白押しだったのに、そこへ今度は『脱出』が割り込んできた。
見つからないように気を付けるだけでも一苦労。
そこへおまけのようにあの光が何度も打たれるから始末に負えない。
「まさかとか言いますけど、今回はそういうルールだったじゃないですか。この腕輪がご丁寧に昏睡の判定まで出してくれやがるから」
「一人ずつ連れ戻してはならないというルールもないけどね」
「それでもですよ」
降参の宣言をしようと思ったら、先生たちのところまで戻らなきゃいけない。
実際の場面になんとか当てはめるなら多分、撤退。
今回、味方の救援はわざと想定から外してあるから他に手はない。
それ自体は別に、全員が揃ってなくてもできる。
全員が揃った方がいいのも間違いないけど。
「……三対一でも、抑えきれなかったか」
「とんでもない。なんとかするだけで精一杯でしたよ」
そこには東雲先生は勿論、火村という人もいた。
他にも、見慣れない顔が後ろにちらほらと。
集められた審判らしく、モニターと睨めっこしてる。
「やたらと太い水流のおかげでなんとか逃げられましたけど、それがなければもっと手こずってました」
「……あの氷の盾か」
「はい、あれです」
そんな話をしている内に、終了を知らせるサイレンが鳴った。
脱落者の時にもしっかり響いていたから聞こえる筈。
放っておいても、その内2811の人達が出てくると思う。
「あれには我々も驚かされた。防ぐどころか利用するとは」
「こっちはいきなりあんなものを浴びせられたことに驚きましたけどね」
他にも、あちこちで何発も。
他に見えたのは光の柱ばっかりだったけど、それもこれも似たようなものだ。
俺に向けられたものじゃない。
それでも、あんなに連射されたら驚くのは当たり前。
「あれ防いだってのかよ……うっわ……」
「『うわ』ってなんだよ。『うわ』って。こっちは大まじめだったのに」
「それが分かってるから引いてんだよ」
……なんてことを言ってくれやがる。
大真面目にやらなきゃ防げない。
あれを偶然で防ぐなんて一体どうしろと。その方法があるならむしろ聞かせてほしい。
しかもこいつ、言った。堂々と言った。
退いてるって思いっきり言いやがったぞ、この野郎。
「オメーも不意打ち喰らったんだろ? そのくせ、それ使って上に逃げるとか……うわ~……」
「なら他にどうしろと」
「普通はどうにもならねーんだよ。よくて避けるとかそのくらいだろ」
「そっちこそ難しいだろ」
何発飛んでくるかも分からないっていうのに。
本当に、どれだけ用意してあったのか分からない。
あんな勢いで連発しようと思ったら、かなりの数が必要なのに。
一体あと何発森の中に残ってるのか、分かったものじゃない。
「……そんなに気になるなら、小城もやってみたら? 俺もとことん付き合うから」
「それオメーの魔法受けるっつーことじゃねーか!」
「大丈夫、威力はちゃんと調整するから」
「そういう問題じゃねーんだよ!?」
皆がやられた時の状況も簡単に聞かせてもらった。
なんとか逃げている最中に光に呑まれたり、隠れていたら次々と光が伸びたり。
2811の生徒が近付いてない筈の場所から、光が見えた。
設置式の、高火力に設定された魔法を受けてやられた。
「小城君も天条君もそこまでだ。ここは2943の拠点じゃないんだから」
「「…………スミマセン」」
同じものを小城も見たと言っていた。
……そのまま運悪く2811の生徒に見つかって、封魔石を大量に投げ込まれたみたいだけど。
それこそドン引きしそうになるくらい完璧な準備。
最初に見た時、そこまで大量の装備を持ち込んでいたわけでもないのに。
装備の追加補充も原則禁止されていた。
それを言い出すときりがないからって、禁止されていた。
2811の人は勿論、2943の大人も見ていたのにそんなことはきっとできない。
「まあまあ、そう目くじらを立てなくても。元気そうで何よりです」
「動けないような怪我があってはそれこそ一大事ですよ」
……正直、心当たりはあった。
こんなことを疑うのは失礼だけど、正直怪しかった。
(……そんなこと、ないと思いたいけど……)
最初の数発だけなら、なんとか違和感で片付けられた。
でも、離脱の途中に一〇発も二〇発も撃たれたらさすがにそれだけじゃ済ませられない。
本当に、いくらなんでも多過ぎた。
(こればっかりは、さすがに俺の思い過ごし――)
だから少しだけ、火村という先生の方を見ていた。
「…………所詮はワンマンチームか」
「――っ!」
おかげで、そんな言葉を聞かされた。
(……へぇ)
よくもまあそんなことを、ぬけぬけと。
「………………負けてしまったのは残念ですけど、仕方ないですね」
正攻法なら、まだともかく。
ただ人数差があっただけなら、そういうことを言うやつは言うと思う。
「それじゃあ次は、小さな落とし物も見落とさないくらい、しっかり準備させてもらいますね?」
そんな人でも、あんな真似をしての勝利ならきっと言えないだろうけど。




