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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
297/596

014

「はっ……!?」


 それを見た桐葉は思わず目を丸くした。


 生い茂った葉の中に身を潜め、再び見やる。

 見間違いであってくれと、届く筈のない願いを抱きながら目を向けた。


(また? しかもあんなに? いくらなんでも多過ぎる……!)


 2943側三人目の脱落者を知らせるブザーは、同時に桐葉が最後の一人であることを示していた。


 桐葉が引っ掛かりを覚えたのは、そこではなかった。

 その違和感は、決して劣勢に立たされている悔しさから来るものではなかった。


(あんな短い間隔に何個も置いて、次から次へと……。むやみやたらに設置できるものじゃないって、言ってなかったか?)


 2811のチームがあえてその裏をかこうとしたという可能性も、ないわけではなかった。


 しかし桐葉はすぐさまその可能性を否定した。

 その程度では説明できないほどの数が仕掛けられたことを、桐葉は肌で感じていた。


(一人目がやられたときも、二人目もそう……。……まるで、当たるまで撃ったみたいな……)


 本来、その役目は手にした封魔石が担うべきもの。


 そもそも、それさえ適切な対処とは言いがたい。

 封魔石は勿論、各々が身に宿す魔力には限りがある。


(しかもあんな、馬鹿みたいな威力して……皆、本当に怪我してないんだろうな……?)


 あえて見た目の派手さを重視したという話も、もちろん桐葉は覚えていた。


 それを覚えていても、気にせずにはいられなかった。

 大量に設置された魔法に驚き、怪我をしていてもおかしくなかった。


 思わず彼が疑ってしまう程、規模は大きかった。

 そんな代物が、幾度となく放たれた。


(…………やっぱり、それがいいよな)


 自らの不安を再認識し、桐葉は小さく息を吐く。


 その時、既に彼の中でやるべきことは定まっていた。

 それ以外の選択肢を、彼は自らの意思で捨て去った。


(後はどうやって居場所を突き止めるか、だけど……)


 無論、そちらを選んでも問題がないわけではない。

 ある程度分散してしまっているからこそ、挟み撃ちのリスクは避けられない。


(確か、二人目の時があの辺り……だったよな)


 しかし、見つけ出すための手掛かりがないわけではなかった。


 光の柱は桐葉から見ても過剰としか言いようのない量だった。

 それが消えた後でさ、おぼろげな影が見えてしまう程だった。


 あまりに強大だったからこそ、結果として桐葉に戦いのあった地点を教えていた。


(それじゃあまずは、こっちから……っ!)


 リスクも承知の上で、桐葉は再び地面に降り立つ。


 自身が起こした以外の音が聞こえないのを確かめつつ、桐葉は慎重に一歩を重ねていく。


 どこに誰がいるかは、桐葉でさえ分からない。

 振り切った以上、同じ場所にあの三人が残っていないということだけは確かだった。


 太い幹に背中を預けるや否や、周囲を見回しその場を離れる。


 同じ地点に長くとどまることなく、しかし警戒を怠ることはない。


(早いところ、見つけてしまわないと……っ)


 彼の、2811に対するささやかな反撃は大きな成果を出すことはなかった。


 故に、未だ2811側の脱落者はない。

 1対7という状況の中で、桐葉は動くことを強いられていた。


(欲は、張るな。一人くらいなんとかしてやろうなんて、考えずに)


 幹に背中を預ける度に、桐葉は自らへと言い聞かせる。


 故郷を発つ以前、様々な形で教わったことだった。

 実際の事例を交えながら、時には身をもって味わった。


 自らが置かれている状況と似たものを感じたからこそ、桐葉の中でその意識が強く働いていた。


(奪還さえ出来れば、それでいい。こっちが攻撃を食らう前に、一気に離脱すればいい)


 はやる気持ちを抑え、しかし速度を落とすことなく桐葉は森の中を跳ぶ。


 時にはあえて自らの魔力を多く解き放ち、その場に残す。

 まるでその場所に桐葉がいると錯覚させるかのように。


「あとは、こんな感じ……っ!」


 その傍ら、木の幹に隠れるように《土偶》を置いて去っていく。


(見張りがいるとしたら、おそらく一人。多くて二人。……一か所に集められてなきゃ、いいけど……!)


 移動しながらの作業。


 高い完成度を求めることはしなかった。

 先日の記録を手掛かりに、あえて当時をなぞるような行為を繰り返した。


(……このくらい離しておけば多分、大丈夫。直線でもない)


 決して土の人形が等間隔に並ぶことのないよう、細心の注意を払いながら。


(向こうみたいに、近くに固めすぎても――)


 かえって気付かれやすくなりかねない。


 露見を避けるべく意識していたからこそ、桐葉の頭に浮かんだ発想。

 それがいっそう、桐葉の中の違和感を膨らませた。


(……やっぱり、数が多過ぎるんだよな……)


 2943側に、二人目が出る直前に見えた光。

 それを思い出し、桐葉はふと空を見上げた。


(あんなにたくさん、持ってなかった……。そもそも、止めの一発ならあんな風に連射なんてしなくてもいい……)


 動き出しても、思考を止めることはない。


 もはや一連の流れに組み込まれたデコイの作成をこなし、桐葉は突き進む。


「あっ……!?」


 そうして彼は、とうとう見つけた。


(イリアだったのか……!)


 近付く中で予感していた正体を、確信へと変えた。


「い、一体どこにいたんだ!? あれだけ探し回ったのに!」

「企業秘密ですよ!」


(どうせなら、見つかる前にこっちから仕掛けたかったけど――)


 彼がやるべきことに、代わりはない。


(……いつでも構いませんよ)

(サンキュ……っ!)


 立った一瞬のアイコンタクトを交わし、直後。


「うわっ……!?」


 辺りを、一気に濃い煙幕が包み込む。


 桐葉の手に握られた封魔石が、一度に破裂し煙を起こした。


(――そこ!)


 桐葉達を分断した時よりも濃い煙の中。

 それでも桐葉は、衣璃亜の姿をその目に捉えられていた。


「あら……私を最初に選んでくれたのは、意図的ですか?」

「ごめん、偶然っ。そこまでは分からなかった……!」

「謝ることではありませんよ。……助かりました、桐葉」

「本当はやられる前に抗したかったけどな……!」


 衣璃亜を抱きかかえ、桐葉は走る。

 軽口をたたくだけの余裕を残し、全速力で駆け抜ける。


「っ、クソ――!」


 ――その時、光が弾けた。


「…………っ!」


 突如起こった光の柱を見て、桐葉はもう一つの予感も確信へと変えた。


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