表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
294/596

011

 ――失敗した。失敗した。失敗した!


 自責の念に駆られるまま、三凪は必死に走り続ける。

 追跡の手を逃れるためには、走るしかなかった。


(天条くんはちゃんと、最初の一回を防いでくれたのに……!)


 2811の生徒によって封魔石が投げ込まれたことには、三凪も気付いた。

 しかしその時にはすでに手遅れだった。


「はぁっ、はぁ、はぁ……!」


 煙幕が辺りを覆った瞬間、三凪はすぐさま一か所に固まろうとした。


 しかしそれも、2811のチームによって阻まれた。

 三凪の動きを読んでいるかのように的確に、その動き限定させていった。


 防御もしきれず、逃れに逃れ――気付けば、桐葉達の姿をすっかり見失っていた。


(こんな、こんな簡単に…………!)


 黒い靄は既に消え去った。

 突如として起こった暴風によって蹴散らされた。


(早く、戻らないと……!)


 走れば走る程に、その思いは強まっていく。

 思いが強まる一方で、暴風の中心は遠ざかっていく。


「きゃっ……!?」


 その原因は、三凪を取り囲むような爆発に合った。


 一度ならず、二度三度と爆発は繰り返す。

 ほんの微かな隙をついて包囲を抜けても、またすぐに囲まれる。


 生い茂った葉を身体で押しのけ、地面に落ちた枝を踏み抜き走る。


 爆発の度、否応なしに速度を落とされながらも、彼女は走った。

 追跡者との距離を逐次確認するだけの余裕は残っていなかった。


「頑張って逃げてるところ悪いけど、そろそろ諦めてもいいんじゃない? 随分頑張ったと思うよ。私から見ても」

「そ、そういうわけには、いかないんです……っ!」


 連鎖的な爆発を引き起こしているのは、三凪を追い立てる2811の生徒だった。


 数は一人。

 しかし、一対一の状況でありながら、一方的という他ない状況だった。


「それはいいけど、あんまり無茶すると後が大変だよ? こんな状況だし降参したって責められることはないんじゃない? それも一つの選択肢だよ」

「そ、そういうのじゃなくて……!」


 反撃の構えを取る時間さえ、三凪には与えられなかった。


 追い続ける2811の生徒に、ただひたすらに走らされていた。


(このままやられるなんて、嫌。絶対、嫌……!)


 しかし、三凪を走らせ続けていたのは脅威だけではなかった。


 際限なく湧き上がる、三凪自身の焦り。

 自らの感情に彼女は走らされ続けていた。


「……大人しそうに見えて、案外しぶといなぁ……」


 張り裂けそうな心臓を抑え込み、石のように固い足を必死に動かし走り続ける。


 組織のトレーニングとは比較にならない走量。

 孤立無援の状況も重なり、焦りと拾うだけが募っていく。


(なんとか、なんとかしないと。どうにかしないと、このままじゃ――)


 具体的な策が浮かんだわけではなかった。

 その策を見つけ出す時間を作り出すためにも、走らざるを得なかった。


「……でも、残念」


 ――しかし、その時間は間もなく終わりを迎えることになる。


「ぁ――――」


 突如、三凪の視界は強烈な白に染め上げられた。


「その先、先輩達の仕掛けた罠でいっぱいなんだよ」


 脱落者が出たことを示すブザーが、その日初めて森の中で木霊した。






(間に合わなかった……!)


 その音が誰の脱落を示しているのか、その時の桐葉には分からなかった。


 しかし、桐葉達2943の誰かであることだけは確かだった。

 その認識が、彼の右手に過剰な力を行き渡らせた。


「……君にも、この人数配分の理由が分かっただろう?」

「さあ……? そんなこと考えてるほど、余裕はありませんから……!」


 封魔石が転がり落ちる直前、桐葉は飛び退く。


 桐葉が立っていたその場所を包囲するように置かれた四つの点を、全て視界に収めるように飛ぶ。


(向こうは向こうで一体何個持ち歩いてるんだよ……!)


 直後の爆発を、桐葉は枝につかまったまま見下ろした。


「またそんなところに登るんだから、もう!」


 しかし直後、桐葉が掴んでいた木は氷に閉ざされていた。


(おまけに、あんなのまであるし……!)


 地面に降り立った桐葉が見たのは、巨大な氷のオブジェだった。


 決して小さな樹木ではなかった。

 それを一瞬で氷漬けにしたのは、支給された封魔石の一つだった。


(こんな威力のものなのに、怪我をしないなんて言われても――)


 その一つ一つの威力を桐葉は明確に『脅威』と受け止めていた。


 自らの魔法と異なり、微調整を行うことも叶わない。

 冷たい予感に肝を冷やしていた。


「――次はないッ!」


 ――更なる追撃が、桐葉を襲う。


「お……っ!?」


 突如として彼を襲ったのは、炎の雨だった。


 微かな隙間すら残すまいと執拗に、苛烈に桐葉を責め立てた。


「逃がしはせん……ッ!」


 桐葉が退けば退くほど、執拗に追ってくる。


 地面を貫き、土を舞い上げる。

 ただ威力が高いだけでなく、桐葉の視界を狭めていく。


「ち……!?」


 それらも全て、2811の作戦通りだった。


(っ、壁――!)


 見覚えのある壁に思わず舌打ちし、そして――


「ら、ァっ……!」


 それを足場に、桐葉は跳んだ。


 跳び過ぎることなく、しかし炎の雨を一度完全に振り切った。


「ッーーーー」


 そうして、着地したその瞬間。


「《氷壁》!」


 三方向からの火炎放射を、氷の盾で受け止めた。


(こんな場所じゃ、《飛翼》は使えないもんな……!)


 模擬戦の舞台となったその森には、大乗様々な木が生えていた。

 その多くが埋め尽くさんばかりの緑を茂らせ、罠のように枝を張り巡らせていた。


 強行突破も決して不可能ではない。


 だがしかし、後が続かないだろうと桐葉は考えていた。

 聳え立つ木々の隙間を潜り抜けながら飛び回るには、この森はあまりに複雑だった。


「ちょいちょい、君さぁ……どういう練習してたワケ? 枝も壁も全部足場とか正気?」

「仕方ないじゃないですか。飛びたくても飛べないんですから」

「あんなの見たせいで説得力無いなぁ、その台詞」


 だからこそ、桐葉は大きな隙を探していた。


 複雑な地形だからこそ、一度振り切って体勢を立て直すことを視野に入れていた。


「……でも、それならさ」


 しかし、決定的な瞬間は訪れないまま時間が過ぎ――


「こういうのはどう、かな――っ!!」


 桐葉の視界は、瞬く間に青一色に染め上げられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ