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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Gleams Butterfly
247/596

013

「……手伝えって、言われてもなぁ……」


 命令に逆らえない自分達を、思わず恨んだ。


 命じられたからにはやるしかない。

 それは分かっていても、気が進まないものは気が進まない。


「いいから黙って手を動かせばいいのよ。文句言ったって決まったことは決まったことなんだから」

「それは分かってますって。分かってますけど……」


 既に[アライアンス]も怪しんでいるという話もある。


 確たる証拠は掴めていないようだが、いつ動き出してもおかしくない。

 証拠がないからこそ、あえて大胆な作戦を打ち出るかもしれない。


 巻き込まれるなど願い下げ。

 まして[アライアンス]以上に得体の知れない者のためにやられるなど。


「ほら、あそこ。あんたが文句言ってる間もずっとやってるんだよ? ちょっとは見習いなさいよ」

「それはまあ、そうですけど……」


 手伝いを命じられて早数日。

 しかし未だに何をしているのかさえ分からない。


 直接訪ねた時の答えは決まって『すぐに分かる』の一言。


 その言葉通りなら、今頃とっくにわかっている筈。

 おかしな噂が広がる一方で、未だに何も見えてこないままだ。


「ぐずぐず言ったってしょうがないんだよ。……これでこの前の件をチャラにしてもらえるなら安いもんよ」

「りょうかぁい……」


 太陽の光も届かない、鬱蒼とした森の中。

 忘れ去られたようなプレハブ小屋を見て、再び溜め息。


 その下にあるものが何なのか、やはり今日も知ることはないのだろう。






 昼休みも残り半分にさしかかる頃。


「イリアはどう思う? あの話」


 先輩の件はひとまず置いておくとして、もう一つ。

 あちこちで目撃されているというそれのことを、訊いてみた。


 弁当箱もすっかり空になって、小城と東雲さんがそれぞれ用事で席を外したのがついさっき。

 いいタイミングだろうと思っていたのに、イリアはすっかり呆れ顔。


「……またあれのことですか」

「違う違う。先輩のことじゃなくて。もう一つの方。あの噂」


 正体を掴むこともできない“光る蝶”。

 噂と聞いて、イリアもすぐに察してくれた。


「……どうでしょうね。ただの怪奇現象のようにも思えますが」

「さすがにないだろ。幽霊にしてはバラバラだし。場所が」


 ギリギリ町の外には出ていない。

 円の形をしているわけでもないのに、器用にこの町の中に納まっている。


 組織が取り組んでいるんだから、さすがにそれはない。

 イリアも分かった上で言ってるんだと思う。そのくらい奇妙だって。


「形状や大きさがはっきりしない以上、全てがそれとは言えませんよ。……あなたの見たもの以外」

「……他のものまで混ざってるなら直接調べるしかないんだけど」

「そんなものはあれらに任せておけばいいんです」

「さすがにそれはちょっと」

「他にどうしようもないでしょう」


 丸投げしているみたいで気が引ける。

 無理をするなとは言われたけど、何もしなくていいとまでは言われてない。


 今までこっそり調査を進めていたことに思うところがないわけじゃないけど。

 もう少しだけ隠し事を減らしてもらえるともっとありがたいだけで。


 先生――というか、2943の人達がそうなんだと思う。

 橘さん達と似ているようで、微妙に違う。


「そこはあれだよ。俺とイリアで見に行ってみるとか。案外、まだ見つかってないものがあるかもしれないし」

「そういうことなら構いませんよ。……あまりムードのある場所ではなさそうですが」

「目的を捻じ曲げない。こんな噂にムードもへったくれもないだし」


 仮にそうだとして、そんな場所を選んでどうしろと。

 いくら俺でもそこまではしない。さすがにやらない。


 場所と時間帯によっては悪くないかもしれないけど、今は無理。

 とりあえずこの得体の知れない噂の正体を掴むまでは。


「ですが……いいんですか? 一緒に行くのが私だけで。私としては大歓迎ですが」

「もちろん。イリアにお願いしたい。ちょっと回り道にはなるけど」


 小城や東雲さんのことを当てにしていないわけじゃない。


 ただ今でも、二人に対してちょっとした制限がかけられることもある。

 東雲先生も『四人で協力して』とは言わなかったから、そういうことなんだと思う。


 思いつき感は否めないし、今更と思われても仕方ない――と、思っていたら。


「……その言葉、次からはもっと早く聞かせてくださいね?」

「最速記録をどう塗り替えろと……」

「なんとしてもですよ」


 本当に出来立てのプラン。

 これ以上早くしようと思ったらもう事前予約制しかない。……自分で言っておいて、意味が分からないけど。


「何? もしかして小城か東雲さんにもう相談したとか?」

「いくら仲間とはいえ、私がそこまですると思いますか?」

「威張るところじゃないから。それ」


 間違っても笑顔で言うことじゃない。絶対に違う。

 仲間として認識してることにほっとしそうになった自分が悲しい。


 これまでのやりとりだけでも、疑う余地なんてどこにもないのに。

 ……全く驚かなかったわけじゃないけど。


 結果的にめちゃくちゃになった親睦会も、そういう意味ではよかったのかも。

 せめて、せめてあんな余計な置き土産がなければ。


「今は関係ないでしょう。そんなことは。それよりもどこを見るつもりですか。全部は回り切れませんよ?」

「分かってる。とりあえず今日は、学校の近くがいいと思って」


 関係なくはないけど、仕方ない。

 一朝一夕でどうにかなる問題じゃない事くらい俺が一番よく知っている。


 それより今は、調べる場所だ。


 目撃場所は東雲先生に資料付きで教えてもらった。

 それを見るに、最寄りのポイントでもそれなりに歩かなきゃいけない。


「……また随分と地味な場所ですね」

「地味とか言わない。昔からある住宅地の近くなんだから」


 ただ、バスもアテにできないのはちょっと痛い。

 そちら方面に向かう便はあるけど少ないし、すぐ近くを通るわけでもない。


 大勢の前で飛んだらそれこそ先輩に記事にされかねない。よって却下。


(それにしても、どうしたものかなぁ……)


 場所はいい。そこまでの道も大体分かっている。

 できることならもうちょっとくらい、例の噂についての話を聞くことができればいいんだけど――


「――あれっ、天条君その場所……もしかして、蝶の噂?」


「えっ?」


 ……棚から牡丹餅とは、このことか。


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