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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Gleams Butterfly
241/596

007

「そうか……。奇妙な光を……」


 途中で見た不思議な光のことを、東雲先生は一蹴しなかった。


 現場に着いた時には、もう仕留められた後。

 結局、他に敵影はなし。その後の簡単な調査でも見つからず。


 たった一匹だけなら、近くにいた誰かが飛んで行くだけでもカタがつく。

 それ自体は何も悪いことじゃない。被害も出ないんだから。


 ただ、おかげでイリアの機嫌も斜めのまま。

 アパートへ戻らずに、拠点に来たのも原因だろうけど。


「念のため、もう一度だけ確認させてくれ。――天条君が見たそれは、街灯の明かりではなかったんだね?」

「はい、違いました。こう、小さな点がふらふらと」


 思い出してみても、やっぱり違っていたように思う。


 街灯に近付こうとして見たり、離れようとしみたり。

 大した速さでもなかったから、動いているところははっきり見えた。


「形はどうだったかな。何かに似ているとか」

「いえ、そこまでは。近付いて確かめようと思った時には、消えてしまって」

「消えた……。それは、弾けるように? それとも、消えるように?」

「そこまでは、ちょっと……。目を離した隙に見失ってしまったんです。念のためにその街灯も調べたんですけど、やっぱり何も見つからなくて」


 確認してみたけど、やっぱりイリアには見えなかったらしい。


 そういうものがあったことは信じてくれた。

 ただ、それがどういうものなのかは分かりそうにないとも言っていた。


「……じれったいですね」


 そしてその時、イリアはもう一つ言っていた。

 俺の『もしかしたら』をイリアは『間違いなく』と肯定してくれた。


「何か知っているなら言えばいいでしょう。いつまで確認を続けるつもりですか」


 ため息交じりに、イリアは言った。


 つんとした表情のまま、東雲先生とは目も合わせようとしない。

 分かっていたけど、俺の時とは大違い。


「何か、と言うと……何のことかな」

「桐葉が見た光のことです。……他に、何か当てはまるようなものがありますか?」


 ただ、その予想に自信を持っているところは変わらなかった。


 東雲先生もイリアの指摘を否定はしようとしない。

 さすがに焦ってはいなかったけど、否定の言葉は返って来ない。


「あなたも。気を遣っても仕方がありませんよ。分かりきっていたことでしょう」

「……おっしゃることごもっとも」


 イリアの言葉を疑っていたわけじゃない。

 むしろ言われて納得したくらい。


「俺が調べたいって言った時に止めなかった理由、あるんですよね。戦力的なもの以外にも」


 俺達が向かっていた頃には、一人が化け犬に追い着いていたらしい。


 だから、不審物の調査に向かわせても問題ないと組織も判断した。

 そこだけを聞いたら、何もおかしなところなんてない。


 ただ、東雲先生の態度が気になったのは、俺も同じ。


「……やっぱり、時間の問題だったね」


 観念したかのように、東雲先生は言った。俺達のも聞こえる声で。


 想定通りと言わんばかりの落ち着いた表情。

 それはそれで微妙に納得できないけど。最初から言ってください。


「言い訳がましいかもしれないけど、天条君達のことを欺こうと思ったわけじゃない。そこだけは分かってほしい」

「そんなの疑ってませんよ。最初から」

「そんな短絡的な結論に至るとでも思いましたか。私達が」

「……ありがとう」


 橘さん達、エリア五四七の人が相手じゃなくても信頼はしてる。


 もしかしたら変な連中もいるかもしれないけど、それはそれ。

 東雲さんのお姉さんがアレな人とは思えないし。


「……この件、いろいろと妙なところも多くてね――」


 何かしらの理由があるのは、分かってた。






「ふむ、ふむふむふむ……」


 ――やっぱり同じだ。何度見ても、そうとしか思えない。


 自らのパソコンに保存された映像を見て、姫宮さぐりは何度も頷いた。

 彼女の手元には一枚の写真が置かれている。


 そこに映っているのは朝の少年――天条桐葉。

 下校しようとする彼の姿を、敷地内の茂みから映したもの。


(君もそれなりに警戒はしていたようだけど……ふっふっふ。まだまだ甘いと言わざるを得ないね、天条くん?)


 彼の名前はすぐに調べが着いた。

 あの時、近くにいた三人の友人についても同じ。


 特別有名な生徒でなくともその程度、さぐりにとっては造作もないことだった。


「……この一枚、精々有効に使わせてもらうよ」


 しかし、写真の撮影はその限りではなかった。


 授業時間にカメラを持ち歩けば、どうしても目立ってしまう。

 部の活動での使用は許されているものの、さぐりの私物であることに変わりはない。


 そもそも、撮影を頼んだところで天条桐葉が素直に受ける保証はない。

 そのため、放課後を待つしかなかった。


 そうまでしてさぐりが天条桐葉の写真を入手しようとした理由はただ一つ。


(やっぱり、同一人物……。他人の空似では……ないだろうね)


 さぐり自身、最初に記録媒体を見た時はあまり期待していなかった。


 さぐりの能力を確かなものだと知っている者は、少なくなかった。

 その中には、直接相談を持ち掛けようとしない者もいた。


 さぐりもまたそれを知った上で、部室の前に封筒を設置した。


 紙くず同然の代物が投げ込まれることも珍しくなかった。

 そんな中でも稀に、ごくごく稀に、光る原石が転がり込む。


(どこの誰かは分からないけど……情報提供者さんには、感謝しておかないとね)


 今回の映像も、そうしたものの一つだった。

 さぐりでさえ、思わず息を呑むほどのものだった。


 ショッピングセンターに現れた怪物。

 そして、その手に炎を宿し戦う少年。


 あまりに奇妙な出来事。

 しかしどれだけ調べても、インターネット上にさえ情報は残されていなかった。


(撮影されたのは、あの日……。やけに扱いが小さいと思っていたら、こんな裏事情があったんだね)


 駅の近くのショッピングセンターでの()()()()

 記録媒体を入れた封筒に記されていた日付は、まさにそれが起きた当日のもの。


 そして、今さぐりが持っている手掛かりは、それだけだった。


(それにしても、こんなに面白そうな子達を見落としていたなんて……。まだまだなのは、私も同じかな?)


 天条桐葉は、高校進学に合わせてこの町にやってきたという。


 それ自体は、珍しい以上のものではない。

 知人の伝手があってこの地域に移ったところまで含めて。


 しかし彼は、常にある女子生徒と共にいた。

 そしてその人物もまた、同じようにこちらへ引っ越してきた。


(以前から二人に繋がりがあったのは間違いない……。とはいえ、こっちはさすがにお預けだね)


 同じタイミングに、同じ町へ移動した理由。

 ただの偶然でそのようなことが起こる筈などない。


 知れば知るほど、俄然興味が湧く存在。

 さぐり自身が一度は偶然と考えた、よく似た苗字も。


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