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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Gleams Butterfly
238/596

004

「――例の件はどうなっている?」


 奇妙な噂に関する新たな情報はなく、解散となったミーティング。


 しかし対処すべき問題は、他にもあった。

 その問いに、部屋の隅に置かれたモニターの前から答えが返ってくる。


「今のところ、それらしい書き込みはありませんね。新しい映像も特にありませんよ」


 本来、出回ってはならない映像記録。

 それを[アライアンス]が発見したのは、事件解決間もなくのことだった。


「さすがに、もうないんじゃないですかね。他に取っている人がいないか調べたんでしょ?」

「はい、全て。解像度の低い写真も全て消去させてもらいました」


 突如として現れた怪物が消滅を迎えるまでの一部始終。

 遠方から、携帯電話のカメラで撮影した映像。


 全体的に映像の乱れが激しく、ピントが合っている時間は10秒にも満たない。


 その10秒の中に、天条桐葉と怪物の姿がしっかりと映り込んでいた。

 見る者が見れば、彼だとすぐに分かってしまうほど鮮明に。


「いや、まだ気を抜くには早い。どこかにコピーを隠し持っている者がいてもおかしくはない」


 アップロードされたのは、インターネット上の掲示板。

 掲載された時刻は組織が到着する前。避難している途中に載せられたもの。


「お言葉ですけど、あの動画自体すぐに消しましたよ? あの短時間で落としたって言うんですか?」

「利用者はそこまで多くなかったって話ですけど。一応、利用者も調べましたし……」


 しかし幸い、投稿主の特定に時間はかからなかった。


 避難していた買い物客の中から見つけ出し、残されたデータも全て消した。

 それ以降、動画が掲載されたことは一度もない。


「それでもだ。……あんなことがあったばかりだ。何かあってからでは遅い」


 しかし未だに、組織の警戒は続いていた。






「天条君さ、新聞部を手伝ったってマジ?」


 教室についてから向けられていた奇妙な視線の正体が分かったのは、朝礼が終わった後。


 勇気あるクラスメイトの一人に訊ねられて、ようやく分かった。


 子供の頃からサッカーを続けていて、高校でも入部するつもりだって言った男子生徒。

 名簿の最後に名前があるそいつが誰のことを言っているのか、すぐに分かった。


「手伝ったっていうか……代わりに貼った? なんか放っておくのも悪い気がして」

「やるなぁ……。何か言われたりしなかった?」

「是非入部したまえよ、って。時間も取れそうにないから、断らせてもらったけど」


 新年度が始まってから一か月も経たない内に、第三号。

 前の二つがどんな内容だったのか、逆に気になる。


 部活動紹介の時はそこまで変わったところもなかった……と、思う。


 正直、ほとんど覚えてない。声も、話していた内容も。

 説明会の時にあの人が立っていたかどうかも怪しい。


 やたら警戒されているみたいだけど、全くイメージが湧いてこない。


「……えっ、それだけ? 本当に?」

「他には何も――……あ、いや、また会うことになるかもとか言ってたっけ」


 ……あの先輩、一体どんな噂が広がってるんだろう。


 代わりに新聞を貼っただけで、一クラスメイトからこの反応。

 変人の称号とかなんとか言ってたけど、冗談じゃなかったのか。あれ。別にいいけど。


 その後ろにいるクラスメイトの反応は十人十色。

 あまり気にしてなさそうなやつもいるから、まだそこまで広がってるわけじゃないみたい。


 ただ、声をかけて来たサッカー部の渡辺はよく知ってる方だったみたいで。


「うわ、ヤバ。完全に目つけられてるよそれ。ご愁傷様」

「勝手に殺すなって。さすがに大丈夫だよ。……多分」

「天条君だってちょっと自信なくなってるじゃん」

「そりゃまあ、いきなりあんなことを言われたら」


 目を付けるなんて人聞きの悪い。


 そういう雰囲気はなかったと思うけど、あの人のことが気にならないと言ったら嘘になる。

 どうして最後にあんなことを言ったのか。気にならないわけがない。


「手遅れかもしれないけど、気を付けなよ? あの姫宮ひめみやって先輩、いろいろ言われてるし」

「言われてるって、たとえば?」

「たとえば……。あぁ、先生たちの弱みを何か一つは握ってるとか」


 先生の。弱みを。はぁ。


「……別に、いいんじゃない? そのくらいなら。実際に脅したわけじゃないだろうし」

「聞かれたら仲間だと思われるから止めなって。その発言」

「大丈夫、大丈夫。俺にそんな能力ないから」

「あったらやるって言ってるようなものだよ。それ」

「まさか。やるわけない」


 やるだけ時間の無駄。そんなことのためにエネルギーを裂こうとは思えない。


 もし、偶然にも手に入れることができたら手放さないかもしれないけど、それはそれ。

 自分から言わない限り、秘密を握っている事にも気付かれない。


 それが役に立ちそうな場面があったら、ひょっとするとつかうかもしれないけど。


「でもほら、先生の中にもちょっと横柄な人とかいるじゃん? もしその人に何かあるって分かったら……な?」

「…………。……確かに……」


 そのくらいのことは誰だって考える。実行しないだけで。


「おい止めろ。渡辺を変な道に引き摺り込もうとしてんじゃねーよ。そういうのはオメーだけで十分なんだよ」


 それなのに、小城が食いついた。


 実行するつもりなんてこれっぽっちもないのに、仮定に仮定を重ねた話なのに。

 しかも余計な一言まで添えて。


「失礼な。俺がいつそんなことをしたって?」

「ついさっきだよ。言ってたじゃねーか。ここで」

「あくまで可能性の話だよ。可能性の話」

「普通は思いつかねーんだよ。あんなこと」


 ほんのちょっとした冗談だよ、冗談。


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