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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Panicking Unite
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028

 その戦いを、宏太はただ眺める事しかできなかった。


 突然聞こえてきた声に反応する間もなく、強烈な光に照らされた。

 それが収まり切らない内に、今度は爆発が《煙幕》を蹴散らした。


 宏太を、そして仲間達を守る水の盾に気付いたのは、更にその後。

 弾けるように消えた直後、今度は頭上に激しい光。


 瞬きをする間にも、状況は変わっていった。

 怪しく光る赤い点は跳ねるように位置を変え、その軌跡は線となって煙の中に浮かんだ。


 ――しかしたちまち、それも灼熱に飲まれて消えた。


 それが桐葉の魔法だと気付いたのは、やはり《熱線》が消えた後。

 塵一つ残す事無く、怪物を焼ききったのを見届けてからだった。


(マジかよ、今の……。どうなってんだ?)


 信徒の追撃自体、宏太はあると思っていなかった。

 あるかどうかを考えている余裕が、そもそもなかった。


 突然姿を現した信徒に桐葉が応戦し、気付いた時には走り出していた。

 男性を背負った桐葉に手を引かれるまま、ひたすらに走るしかなかった。


 目まぐるしく変化していく事態に取り残されないよう食らいつくのがやっと。


「しぶといやつが一人いるとは聞いていたが……そうか。あれが」


 しかし教団は、そんな宏太の努力を嘲笑うように二の矢、三の矢を継ぐ。


(嘘だろまだ他にもいるのかよ!?)


 それを小城が見つけられたのは、全くの偶然だった。

 思わず視線を逸らし、そこに煙をかき分ける怪物の姿を見つけた。


 それも、桐葉の斜め後ろから。

 最も近くにいる三凪ではなく、桐葉に狙いを定めて駆け抜ける。


「――天条、左! 横いるぞ!」


 気付いた時には、声が出ていた。

 他でもない宏太が、自分自身の声に驚いていた。


「サンキュー……っ!」


 そして、瞬く間に光に呑まれて消え去った。

 宏太より一瞬早く魔力を高め、そしてそのまま、すぐさま魔法を放った桐葉によって。


 着弾までの差は、一見するとごく僅か。

 僅かに見えて、その実あまりに大きな差があった。


(……すげーよ、マジで)


 しかしそれを見ても、宏太の中に負の感情が芽生えることはなかった。






 信徒の男にはまだまだ余裕がありそうだった。


 牽制の《水流》を華麗なステップで躱しているんだから、間違いない。


 挟み込んでも、後ろに回り込ませても、器用に避ける。

 どうしてもという時だけ、魔力を盾に逃げ延びていた。


「……惜しいな。それだけの技量を持ちながら、[アライアンス]に身を置くとは」


 こんな馬鹿な冗談を言えるんだから、それはもう余裕もたっぷりあるんだろう。

 こうも長引くと、魔法で追い立てるのも馬鹿らしくなる。


 さすがに一度、攻撃の手を止めるしかなかった。

 信徒が動きを止めた直後の《爆炎》も、ほとんど響いた様子はなかった。


「入信なんて誰がするかよ。ましてお前達のところになんて」

「そう言っていられるのも今の内だ。いずれその発言を後悔することになる」

「そっちこそ。いつ捨て駒にされるかも分からないのに」

「ありえない話だ。だが……もしそれであのお方の助けになるのなら、悪くはない」


 男の人は……大丈夫。できるだけ振り回さないように魔法を撃った甲斐があった。


 多分、出血するような怪我がなかったのも理由の一つ。

 できればすぐにでも、魔法が飛び交うこの場所から離れたいけど。


 念のために確かめたけど、この人は魔力を持っていない。

 俺達の魔力の影響を、悪い意味で受けやすい。


「その方のためなら何でもします、って? 無茶苦茶にもほどがある」

「何の問題がある? ここへ来たのも、元はと言えばそのためだ」


 ……まして、こんな連中の近くになんていさせちゃいけない。


 顔は見えないけど、本気なのはすぐに分かった。

 今までに会ってきた信徒の連中も、これに近い考えを持っていそうなやつが多かったから。


「後始末というのは気が進まないが……厄介な目を潰せるのならありがたい。全力でやらせてもらう」

「だったら、その前に一つ聞きたいな。一体どんなミスの後始末に来たのか」

「勝てば教えてやってもいい」

「よかった。じゃあ、すぐに聞かせてもらえるわけだ」


 今までの連中と同じで、ゆっくりと話をしてもどうにもならない。というか、そこまで続かない。

 少しくらい会話はできるかもしれないけど、最後はどうせいつものパターン。


「抑えろ――《縛氷(ばくひょう)》」


 そうなる前に、さっさと眠ってもらうのが一番。

 縛り上げて、動きを止めたところに軽い電流を浴びせてやればそれでいい。


「何っ!?」


 今更気づいたって、もう遅い。

 話をしている衣間に準備は整えておいたんだから。


 男の周りに飛び散った雫から伸びたのは、氷の茨。

 蛇のように男にまとわりついて、そのまま完全に凍り付く。


「この、卑怯な……がっ!?」


 睨みつけたまま、信徒は意識を失った。


 話は聞けなくなるけど、相手が相手だ。仕方がない。

 あれだけ敬虔な信徒さまが、大事な秘密を口外するとも思えない。


 下手に話を聞こうとするより、眠らせた方が確実。

 動きを封じたって、魔法がある。向こうにはいくらでも反撃のチャンスがある。


 さすがにそろそろ組織から増援が来る筈。

 悪あがきをされるよりは、ずっといい。


「……大勢の人を巻き込んだくせに、卑怯も何もあるかよ」


 まだ、他にも何匹か隠し持っていた筈。

 さっきみたいに隠されたりしたら、さすがに厄介。


 あの時は小城が教えてくれたから、早く潰せた。

 飛びかかってくる前に、化け物を仕留められた。


 とにもかくにも、これで一段落。

 走ってもらった二人の体力も、そろそろ危ない。


「ね、眠ったの……?」

「というより、気絶させた。多分これでしばらくは大丈夫だと、思うけど……」


 もちろん、油断はできない。

 あの人達にも、口を酸っぱくして言われたこと。


 最後の電気ショックだって、別に防げないわけじゃない。

 もちろん防がせないつもりで撃ったけど、それはあくまで俺の視点の話。


 追いかけ回すために使った《水流》の制御をわざと投げ捨てて、バラ撒いた水。

 今回の魔法の起点に使ったのはそれ。


 なくても《縛氷》の発動はできるけど、水を凍らせた方が安定する。

 最初に凍らせる水があるのに、使わない手はない。


「小城も手伝って。こいつ、このローブで縛り上げておくから――」


 ――それでも、信徒を抑えさえすれば終わりだって、どこかで勝手に思ってた。


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