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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Panicking Unite
209/596

009

 そうして連れてこられた拠点でやったことと言えば、体力テストと大して何も変わらない。


 走力、筋力、その他を測るテストの受験者はたったの四人。

 てっきりほかの拠点と合同でやるものだと思っていたけど、そこまではしないらしい。


 ……まあ、設備が整ってるから必要がないんだろうけど。


 禁止されていたのは魔力による強化だけ。

 ご丁寧に専用の機材まで持ち出して、魔力のしようがないかを調べてる。


 でも、その手の魔法を使ったところで変わらない。

 悪い意味で結果に影響はない。まことに残念ながら。


 発動者の運動能力に左右されるから、強いやつがさらに強くなるだけ。

 無限に魔力を使えても、その分強くなれるわけじゃない。


 飛行魔法を発動させた状態で加速系の魔法を使えば、脚の速さは関係なくなる。

 けど大体、どこかで無意識にブレーキがかかるもの。


 結局、基本的な身体能力が大事だからってことなんだと思う。


「――《水流》!」


 ――そうして、最後に待っていたのがターゲット破壊。


 前後左右に場所を入れ替え出現する大小さまざまなターゲットを魔法で攻撃する訓練。


 範囲は、あらかじめ決められたレーンの中。

 出現する位置も、個数も完全にランダム。外れを混ぜられることもある。


 向こうで使った訓練施設とほとんど同じ。やるべきことも、何も変わらない。


「――そこまで。……うん、文句なしの百点だ」


 適切な威力の見極め。弾速。正確性。

 三つの要素を同時に鍛え、計測するならこれ程確実なメニューもない。






「最後だからって、全部持ってくなよなー」


 終わって早々、小城は唇を尖らせていた。

 別に小城も本気で怒ってるわけじゃない。本気で怒られてもどうしようもないけど。


「そんなことを言われても。次は東雲先生に頼んで順番を変えてもらうとか?」

「それはそれでプレッシャーかかりそうだから却下で」

「だったら小城に満点を取ってもらうしかない。――よし、決定」

「おいコラさらっとハードル上げんな。決定すんな」


 他にどうしろと。

 そういうことならいっそ『プレッシャーがかかりそう』な方法を積極的に採用してやろうか。


「そ、そうだよ、天条くん……。私から見れば、二人とも十分すごかったし……」

「東雲さんこそ。ノーミスだって凄いことだと思うけど」

「そーそー、俺なんて何発も誤射ったしな!」

「威張ってどうする」


 二桁を超えるところだったんだからそこだけは反省してほしい。猛省してほしい。


 小城の魔法も、的に当たらなかったものはほとんどない。

 当ててはいけない的にも、見事に命中させてしまったというだけで。


 ……正直、的が見えたその瞬間に反射的に撃ったんじゃないかと思った。


 それはそれすごいこと。あとは判別がつけば完璧。

 さすがに仲間の攻撃で倒れたくはない。


「で、でも、小城くんの魔法、速かったし……そういうところは、見習わないと……」

「いやいや、東雲の魔法めちゃくちゃ正確だったろ。東雲はそっち伸ばした方がいいんじゃね?」


 まさに、一長一短。

 見ていた限り、無理に相手の要素を取り入れても自分の長所を潰しかねないのが惜しい。


(……そういうところ、あの人達も考えてくれてたんだろうなぁ。色々と)


 勿論両方を兼ね備えるのが一番。それは分かってる。

 でも、小城の言うことももっともで……その辺りが、本当に難しい。


「な、どう思うよ? 上の方の天上はさ」

「ど、どうかな……天上さん……」


「……何故、そこで私に話を振るんですか」


 とりあえず、俺達で話して解決するようなものじゃない。絶対に。


「いや、考え込んでるから何か思いついたんじゃないかって思ってさ。どーよ?」

「天上さん、天条くんの次に成績よかったし……何か、ない?」

「あればとっくに言っていますよ」


 ……さては、何も考えてなかったな。

 半分くらい聞き流してたな、イリアのやつ。


 あのすまし顔を見れば分かる。誤魔化そうとするときにする顔だ。


(読む本もないのに、何を考えてたんだか……)


 せっかく四人揃ったっていうのに。

 小城や東雲さんが声をかけなかったら、絶対にあのままだった。


 ……それでも、前に比べたらいい意味で変わってる。






「――正直、意外だったな。イリアがあそこまで普通に接するなんて」


 アパートに戻って、改めてそう思った。

 あの頃から、少しずつイリアも変わろうとしてるんだって。


 訳の分からないまま教団の連中に追われて間もないころに比べたら。


 だからこそ、前向きに。

 俺も前向きに受け止めようと思ったのに、背後からの視線が痛い。


「……今の発言、あなたでなければ許しませんでしたよ。桐葉」


 鍋の匂いに釣られたわけでもないだろうに、いつの間に

か後ろからはイリアの声。


 冷たい、それはもう冷たい声。

 綺麗な声だからこそ、威圧感が凄まじい。


「……一応、中学時代の行動を振り返った上で言ったつもりなんだけど」


 白旗を挙げたい。挙げたいけど今は手が離せない。


「あの頃のことは何も関係ありません。仕方のないことです。記憶もありませんでしたから」

「……本当にそれだけ?」

「えぇ、それだけです」


 笑顔で言いきるか。平然と。

 あの頃のことを忘れたとでも思ったか。俺が。


 特に師匠とか、橘さんとか。

 相性の悪さもあったんだけど、最初から歩み寄ろうとすらしてなかったこととか。


「そもそも……いつの話をしているんですか。三年に上がってからのことを忘れてはいませんか?」

「いいや、覚えてる。だから言ったんだよ。特に小城とは、今日初めて会ったのに」


 正直、ここに来るまで一番の心配がそれだった。

 ある程度話せるようになった相手も二年の頃から交流(?)のある人がほとんど。俺の知り合いばっかり。


 そもそも、そこまで積極的だったかといわれると――……いてっ。


「自業自得です」

「……俺、何か言った?」

「ええ、言いましたよ。これ以上なくはっきりと。あなたの顔が」

「いつの間にそんな特殊能力を……」


 一体どうやって見たんだか。鏡が置いてあるのは浴室だけ。

 そもそも振り返ってない。ほとんど振り返ってない。


 その一瞬でそこまで分かるとか、エスパーか何かじゃないんだかr


 ――その時、電話が鳴った。


 初期設定の機械的な音とは別の、子鳥が鳴いているような。

 この前設定し直したばかりで、未だにキキナレナイメロディ。


 組織の携帯電話は、そういう変更にもロックがかけられてある。


 だから、鳴っているのは向こうから持ってきた俺のケータイ。


『着信:綾河(あやかわ)美咲(みさき)


 何も言わずに、イリアは持ってきてくれた。

 そこに表示されていたのは、誰よりもよく知ってる名前。


「ごめん。イリア、少しだけ……」

「……えぇ、どうぞ。少しと言わず、ゆっくり話してきてください」


 そう言うだろうと思っていたとばかりに、イリアは入れ替わってキッチンに立ってくれた。


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