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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Panicking Unite
205/596

005

 ――優しそうな人で、よかった。


 今日のやり取りを思い返し、その認識を確かなものへと変えた。

 高まる期待の裏側で密かに膨らんでいた不安も、すっかり小さくなっていた。


 同年代とは思えないほど、戦いの経験が豊富な少年。天条桐葉。


 怪物を躊躇いなく屠るという彼の人間性を、三凪は会うまで知りようがなかった。

 だからこその不安から、彼女はひたすらに目を背け続けた。


 彼の部屋に足を踏み入れた時には、歓迎されていないように感じた。


 連絡もなく、朝食時に邪魔をしてしまったのが原因だということは理解していた。

 だからこそ、その不安と向かい合わなければならなかった。


 そして、もう一人。

 天上衣璃亜からは拒絶の意思すら感じられた。


 どうして昼食時には態度を緩めていたのか、三凪自身よく分からなかった。


 ショッピングセンターに着いてから桐葉から何か言われているところを見たが、それもたったの一度だけ。

 しかも、内容までは聞こえなかった。


 それを深く気に留めなかったのは、近付くその日への期待が勝っていたからだった。






『聞いたぞ、貴様。また随分派手なことをしたそうだな』

「うわ……(たちばな)さん、また随分と偏った情報源から仕入れたんですね? 珍しい」


 買い物から帰ってきたと思った途端にこれか。これですか。相変わらず耳が早い。


 しかも俺達の動きを正確に把握しているかのようなタイミング。

 あと少しで荷物の整理を始めようと思ったところに電話をかけてくるんだから。


「一体どこの誰ですか? そんなことを言ったのは。言い訳の前に念のため聞いておきたいんですけど」

『そう言われて素直に言うと思ったか、馬鹿者』

「ですよねー……」


 まだ一週間も経ってないのにもう懐かしく感じるこのお言葉。

 これっぽっちも嬉しくないけど。誰が馬鹿だ。


『言い訳も必要ない。事情は概ね把握している』

「俺達がすぐ連絡したのに、全然繋がらなかったことも?」

『ああ、聞いた。意図的にそうしていたそうだ』

「……で、それを聞いた橘さんは何を?」

『? 何を、とはなんだ。どういう意味で言ったのか説明しろ』


 どういう意味って、そのままの意味以外に何があるんだろう。

 もうそういうのは間に合ってるんだけど。


「いや、やり方とか何も思わなかったのかなーって……」

『なんだそのことか。それなら気にするな。貴様が知ることではない』

「俺、一応やられた側なんですけどね?」

『気になるなら後で本人に聞くんだな』


 まさか、まさか何も言ってないなんてことはないだろうな。


 あの橘さんが、師匠からはクソ真面目とまで言われたあの橘誠一(せいいち)さんが。

 ……さすがに、ないよな?


『それより何だ、あの《流穿》は。今回は被害が出なかったからよかったものの……』

「分かってます。ええ、分かってますよ。次は別の方法にします」

『先に言ってみろ。今』


 なるほど、今。……えっ、ここで?


『どうした。まさかこの場をやり過ごすために言うだけ言ったんじゃないだろうな』

「や、やだなぁ、橘さん……。そんなわけ、ないじゃないですか?」

『だったら言える筈だ』


 そう言うと思ったよこんちくしょう。


 具体的なアイデアが浮かんでなかった事くらい分かってるくせに。

 この人のことだ。言い訳も通じない。……言えばいいんだろ。ちゃんと言えば。


「――…………《念力》で、思いっきり浮かせます」

『……無闇に近づかないというなら、とりあえず合格にしてやろう』


 何ですか。その諦めは。


 氷の壁を作ってぶつけさせる、とか言わないだけましだと思ってほしい。……人が乗ってないならありだと思ったけど。


『外に出すのは少し早かったかもしれんな……』

「ついこの前、合格だって言ってくれませんでしたっけ?」

『まさかそんなことをするとは思わなかったからな』

「それ、俺達が昨日の夜ずっと思ってたことなんですけどね」


 車で化け物を運ぶ教団は勿論、あえて連絡を受けなかった組織にも。


 特に教団に関しては橘さんも同じ考えだったみたいで、珍しくうなってた。


『確かに、わざわざ積み込む意味はない、か……』

「でしょう? 何か理由があるんじゃないかって思ったんですけど……それがさっぱり分からなくて」

『二葉――……東雲の見解は』

「今のところ、解くには何も。こっちでも見たことはないって言ってました」

『そうか……』


 その気になれば信徒はすぐにでも呼び出せるんだから、あんな方法で連れていく必要がない。

 二匹だけなら、それこそ[創世白教]の誰かに預けるだけでいい。


 しかもあんな、ビニールシートをかぶせるだけなんて隠し方。

 何かの拍子で外れるかもしれないのに、どうしてわざわざあんなことを。


 色々な可能性は思いつくけど、どれも妄想。

 資料も何も手元にないから、調べようがない。


『その件は私の方でも調べておく。……間違っても、貴様等だけで無理に調べようなんて考えるなよ』

「勿論、分かってます。ここの一員として協力しながら、ですよね」

『ならいい。……しっかりやれよ。天条』


 橘さんがすぐに電話を切ったのも、きっとそのことを調べるため。


 さすがに、あの人でもすぐには分からないかもしれないけど。

 伝手もあるみたいだから、あちこちに協力も要請するんだと思う。


「…………最初に一言、言ってくれればいいのに」


 ――口元が、緩むのを抑えられなかった。


 人のことを心配してる場合じゃないでしょうに。

 状況が落ち着いても、あの人の悪い癖は相変わらず。


「またですか。……一体、今度は何を?」

「しっかりやれよ、って、最後に一言。なんていうか、橘さんらしいよな」

「……確かに、離れても相変わらずのようですね」


 これには、イリアも呆れ顔。


 どうして俺を見ながら言ってるんだか。橘さんのことなのに。


「ただ……あなたの言う通り、その辺りは改善すべきかもしれません。今更直るとも思えませんが」

「それ、言うなよ。本人に」

「言う筈ないでしょう? 私が、あれと、わざわざ話すと思いますか?」

「別にそこまでは言ってないんだけどな?」


 組織のことも、教団のことも、今までにない疑問ばっかり。


 ――それでも、チームとして動き出す日は、すぐそこまで近付いてる。


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