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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Panicking Unite
204/596

004

 あちこち見て回ってる間に、気付けばお昼。


 売り場の客の数の割に空席が多いフードコートでようやく一息。

 買い物に来たって言うより、買い物をさせられに来た感じ。


「――それじゃあ、私が買って来るよ。時間がかかるかもしれないから、ゆっくりしておくといい」


 まだまだ歩き回るつもりの東雲先生に、注文もお願いするしかなかった。


 手始めにカーペット。

 それからクッション、カーテンと続いたかと思えば今度はスリッパ。


 君達の趣味もあると思って――なんて東雲先生は言ったけど、その辺りだけ用意しなかった理由が分からない。


 テーブルも寝具も、着いた時には一通り用意してあったのに。

 どうしてその辺りだけ放っておいたのかが分らない。棚の類はまだ分かるけど。


「えっと、その……ごめんなさい。お姉ちゃんが、色々と……」


 謝ってる東雲さんなんて、本当にただ付き合わされてるだけ。


 ほんの僅かな買い物も、近くのコンビニでも手に入るようなものばかり。

 性格的なものもあるんだろうけど……こんなの、最初から断っておけばいいのに。


「そんな、東雲さんが謝らなくても。俺達が出る前に確認しておけばよかったんだし」

「……お姉ちゃん、天条くんが訊いてもはぐらかしてたと思う……」


 あの人、普段から何をやってるんだ。一体。確かにやりそうではあるけども。


 気になるけど聞けない。聞けないけど、めちゃくちゃ気になる。

 東雲さんも俺達と同じで四月には高校生になるっていうのに。


「ほ、本当にごめんなさい。お姉ちゃん、悪気があるわけじゃないから……」

「確かに。選ぶ時もしっかり見てくれてたし」

「……否定はできませんね」


 二人にとってはこれがいつも通りなんだと思う。たまに『待った』をかけたくなるけど。


 ――ただ、話していて思いついたことが一つ。


 東雲さんと話をして、どういう人なのか、ほんの僅かだけど知ることができて。

 それこそが東雲先生の狙い何だろうなと、思った。


(じゃなきゃ、わざわざ三人の状況なんて作り出さないよな、きっと……)


 こんな手の込んだことをするくらいだから、そのくらいの理由があって当然。

 それなら最初からそう言えばいいのに。あの人も。


「東雲さんもありがとう。さっきも色々と、見てもらっちゃって。おかげで参考になった」

「い、いやっ、そんな……あのくらい、全然……」


 話をしても、知ることができるのは本当に僅かな部分でしかない。


 別に今日、全部を知る必要なんてない。

 これから同じチームとして、高校の同級生としてやっていくことになるんだから。


「でもよかったよ。こうやって、東雲さんと話せて。チームを組んだ後のこととか、俺もどうしようかって思ってたし」


 会話の内容も、自然凍そういう方向へと移っていった。


「えっ……。でも、天条くん、地元で普通にやってたって……」

「上の世代に面倒を見てもらってたからだよ。イリアと会うまで同世代なんて誰もいなかったんだから」

「そ、そっか……そうなんだ……」


 イリアも、書類上俺と同学年になってるだけ。

 どこの誰かも分からなかったイリアに、天上衣璃亜として戸籍を用意した組織が決めた者。


 それでも、何も覚えてない頃と比べたらすっかりよくなった。


「てっきり少ないのはあそこだけだとばかり思っていましたが……どうやら、こちらも同じようですね」

「う、うん……上も下も、誰もいなくて……隣町には、何人かいるんだけど……」

「じゃあ、その人達とも協力することになるわけだ?」

「そういう機会が、あれば……」


 ……なんだか、答えが曖昧なような。


 この態度、少なくとも東雲さん本人はあまり乗り気ではないらしい。

 どういう事情があるのか分からないけど、無理強いしても悪い。


 一応拠点ごとに担当も決まってるから、会う機会なんてしばらくないかも。

 その時が来たら他の人に聞けばいい。


「えっと、その、天上さんは……」

「ありませんよ。彼以上に。拠点で待っていることがほとんどでしたから」

「そういう東雲さんは? 中学の頃、出た経験とか」

「わ、私は本当になくて……たまに、同行させてもらうくらいだったから……」


 やっぱり、向こうで講義をしてもらった通り。

 組織のメンバーも基本的にはそうやって段階を踏んでいくんだって、教えてもらった。


 例外はごく僅か。

 そしてめでたく、俺はその珍しい例外に含まれた。含まれてしまった。


 師匠のやり方が無茶苦茶なのは知ってた。

 知ってたけど、まさか、あんなに差があるなんて。


 おかげで今こうしていられるからいいけど。俺は。


「だから、その……同い年でもう経験を積んでる人がいるなんて……」


 あの日師匠が空から降って来なかったら、あの怪物をどうすることもできないままだった。


「て、天条くんが悪いとか、そういうわけじゃなくて……」

「実物を見るまで信じられなかった……とか?」


 ――遠慮がちに、東雲さんは頷いた。

 

 ここへ来る前のことも資料で見てるはずなのに。

 俺の初期魔力量が最低クラスだったことも。


「それでこんなことを頼むのは、図々しかもしれないけど……天条くんのこと、頼らせてもらっても……いいかな?」


 東雲さんはこんなことを言ってくれたけど、本当にまだまだ。


「図々しいなんて言わなくていいのに。俺にできることならいくらでも。――なんて、俺も偉そうなことを言える立場じゃないんだけど」


 ご丁寧に、準備期間に釘まで刺された。

 しかも、ごもっともとしか言えないから本当に困る。


 やれることはしっかりやる。

 その中で、妙な思い上がりを覚えなければそれでいい。


「そ、そんな……昨日だって――……あっ……」


 ――記憶に新しいお説教も、東雲さんの自爆には耐えられなかった。


 あとに続く言葉くらい、聞かなくても分かる。


 もしやもしやの予想が一致しただけの話。

 さすがに諦めがついていた。


「昨日の戦闘、やっぱり映像に残してあったんだ?」


 だから、俺とイリアにとってはただの確認。

 怖がらせようなんて思ってもいない。


「ぁ……あ……」


 本当に怒ったつもりなんてなかったのに、東雲さんの顔がどんどん青くなっていく。


「ご、ごめんなさ……っ! その、騙すとか、そういうつもりじゃなくて……っ」

「ああ落ち着いて、落ち着いて。別に東雲さんを責めたいとか、そういうわけじゃないから。……主犯はもっと上の人だろうし」


 実行犯でもないのにそこまで青ざめなくても。

 お姉さんは知れっとしてるんだから、それに便乗してしまえばいい。


「ですよね? 東雲先生」

「おや、私が犯人扱いかな?」

「少なくとも一枚噛んでるだろうな、と思って」

「……ふふ。気付かれてしまったのなら、仕方ないね」


 本当、最初からそう言ってくれればいいのになぁ……


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