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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Panicking Unite
203/596

003

「ごめんよ、二人とも。知らなかったとはいえ、朝食の時間にお邪魔してしまって」


 そこまで分かってるのに、『そういうことならまた後で』とは言わなかった。

 先に連絡をくれたらこんなことにはならなかったのに。


 ……まあ、いいけど。今更帰ってもらうのも悪いし。


「大事な話……なんですよね? それも、直接話さないといけないような」

「そういうことになるね。昨日の件だけならメールでもよかったんだけど」


 組織から割り当てられたアパートの一室。


 ただでさえダンボールが残ってるのに、そこへ二人もお越しになったおかげで余計に狭く感じてしまう。


 部屋の真ん中の丸テーブルも、二人で使う前提で用意してもらったみたいだし。


 どことなく顔立ちの似た二人。

 少し背の高い――おそらく姉――方は、濃い茶髪を腰の辺りまで伸ばしてた。


「とりあえず、簡単な自己紹介だけはしておこうか。東雲二葉だ。それから、隣にいるのは妹の――」

「しっ、東雲三凪です……! よ、よろしくお願いします……っ」


 もう一人を見た時、大人しそうな人だと、真っ先に思った。


 お姉さんよりも、明らかに一歩引いている。

 その理由は多分、お姉さんへの遠慮だけじゃない。なんなら、お姉さんは関係ないかも。


 座る位置も、雰囲気もそう。

 お姉さんの方も別に態度が大きいわけじゃないけど、妹さんと比べるとやっぱり目立つ。


「……もしかして妹さん、緊張されてます?」

「理解が早くて助かるよ。……引っ込み思案なきらいのある子だけど、仲良くしてあげてほしいな」

「いえいえ、こちらこそ……」


 髪の色はお姉さんとほとんど同じ。

 ただ、妹さんの方は肩にかかるくらいの長さで揃えてた。


「でも、そういうことなら次は俺達の番ですね。……ほら、イリアも」

「何故そこで私を見たのか、後でゆっくり聞かせてもらいましょうか?」

「笑顔で誤魔化してたところで過去の行動が消えるわけじゃないからだよ」


 さっきまで二人のことをほとんど見ようともしなかったくせに何を言うか。


 チャイムが鳴った後もそう。

 無視しておけばいい、なんで言い切った時は本当にどうしようかと。


「あぁ、大丈夫だよ。二人の資料にはしっかり目を通してきたからね。勿論、三凪も。――そうだっただろう?」

「う……うん……」


 ……あの人だな。


 そういえば、去年の末に何か見慣れない書類を作ってたっけ。

 好きなものまで聞いて来るから何事かと思ったけど、そういうことだったのか。


「二人の方は遅れている彼が着いてからにしようか。ここに居る全員と初対面になるからね」


 ……そういえば、前に言われた。同じ時期にもう一人行くかもしれないって。


 会ったことも、連絡したこともない。

 誰かが移動する可能性を伝えられただけで、それが誰なのかまでは教えてくれなかった。


(……それならわざわざここを選ばなくてもよかったのに)


 その人もここに引っ越してきたとか?

 拠点に集めた方が色々と便利だと思うけど。必要なものも揃ってるだろうs


「――もしかすると、入学式までお預けになるかもしれないけど」


 …………うん?


「あの……お姉さん? 今、なんて?」

「その呼び方はないだろう。あと少しで君達の担任になるんだから」


 ああ、先生なんですか。高校の。

 そういう情報は自己紹介の時に教えてください。――じゃなくて。


「どういうことですか。入学式までかかるって。まだ三週間近くありませんでした?」

「最悪そのくらいかかることになるかもしれないんだ。……どうやら、想定外のトラブルがあったみたいでね」


 ……文句を言える空気じゃ、なくなった。


 組織が、そこの拠点がいきなりトラブルに巻き込まれた。

 そんなトラブルを引き起こすような連中、そうそういない。


「ということは……教団の」

「いやいや、違うよ。本当に、悪い偶然が重なってしまっただけなんだ。本人も至って健康だから安心してくれ」

「よかった……」


 てっきりまたあいつらが暴れたのかと。


 問題なしとまでは言えないけど、そういうことなら一安心。

 書類の不備とか、些細なミスが悪い方向にばっかり影響したと思えばまだ分かる。


「ただ……そういうわけだから、しばらくチームとしての活動はお預けだ。何かあった時には、動いてもらうことになるけどね」

「ちゃんと連絡してもらえたら、たとえ山奥だろうとすぐにでも向かいますよ」

「ほうほう、それは頼もしいね」


 ……本当に、そのタイミングに連絡さえしてもらえれば。


「――なんてね。冗談だよ。昨日のことは私からも謝罪させてほしい」


 この人の一存じゃないことくらい、分かる。


「そのお詫びというわけではないんだけど……見てもらいたいものがあるんだ。避ければ今から、どうかな?」


 さすがに、昨日のことでこれ以上文句は言えなかった。






「あの……東雲先生? 確か『見てもらいたいものがある』っておっしゃいませんでした?」

「あぁ、言ったね。それで天条君達を誘わせてもらったんだよ」


 そうですか。俺の記憶違いじゃありませんでしたか。


 俺はてっきり、そのままこのエリアの拠点に連れて行くのかと思ってたんだけど。

 わざわざ朝食が終わるのを待って、人を車に乗せたんだから。


「ここ、どう見ても組織と関係ありませんよね?」

「当然だよ。普通のショッピングセンターなんだから」


 ……組織なら人を潜り込ませるくらい簡単にできそう。本当にここは違うみたいだけど。


 どこを見ても人、人、人。

 子連れにカップル、どこかの友人グループまで色とりどり。


 おかげで腕を掴む力も強まる一方。

 久し振りの混みは、イリアにとってはやっぱり辛い。……大丈夫だから。そんなに警戒しなくても。


「俺達、どうしてこんなところにいるんですかね……?」

「? 君達の物を買うためだろう。天条君もおかしなことを訊くね?」

「ここに来るまで一度も聞かされませんでしたからね……!」


 出かける前に言ってください。ちゃんと言ってください。

 さっきわざわざ連絡してくれって言ったのも聞こえてなかったんですか。


 左に目を向ければ、教室に負けず劣らずのスペースに所狭しと並べられた靴。

 右手の吹き抜けのその向こうには、いかにも高そうな服屋。


 前を見ても後ろを見ても、どこかで聞いたことがあるような名前の店が並んでる。


 少しと奥に目を向けても、終わりは見えない。

 どこまでも続いているんじゃないかと思ってしまうほど、長い路。


「? 言わなかったかな。今日は買い物に行くって」

「言ってませんでしたね。これっぽっちも……どうせなら、次からは録音しておきましょうか?」

「それはいいね。もしまた忘れるようなことがあればお願いしようかな。天条君に」

「お、お姉ちゃん……」


 あのアパートから、車でも一時間。


 やけに曲がりくねった道を抜けて着いたのは――所謂、郊外のショッピングセンターだった。



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