復讐者と黒スケ
まただ。
目眩が俺を襲った。
発作。俺を苛み続けるモノ。
もうこりごりだ!!
死にたく無くなるように、死ねない理由を作る為に黒スケに会っていた筈なのに黒スケとの会話で死にたくなるなんて、それではまるであべこべだ。
「うぷっ」
顔を逸らし吐き出す。
吐瀉物の中にはコンビニで買ったチキンが未消化のまま混ざっていた。
「あ、ぁー。その、悪かったな。こう言うのは俺が一番言ってはいけないタイプの奴だったか?」
「……」
頬が熱い。
これが恥を知られると言う感覚か。
焼けた鉄棒をグリグリと押し付けられるような痛みを伴いながら俺は理解する。
詰みだ。
人生の詰みだ。
「…なあ。お前、何でそんなに落ち込むんだ?」
絶望し切った俺の顔を眺めながら黒スケは言う。
「お前は悪くない、とは言えないけどよ。でも、そもそもの原因はセルファだぞ?だってあいつの母親ー」
「お前のクラブのコーチに金渡してやがったんだからな」
空白。
「は?」
間抜けな声だと思う。
けど、仕方ないだろう。
セルファの母親がコーチに金を渡していた。
『セルファをクラブチームに誘ってくれてありがとう。アスレイ君』
あの台詞が別の意味を持ち始める。
『金蔓をクラブチームに引き込んでくれてありがとう。スケープゴート君』
俺は試合に出して貰えず、セルファは偶々役職と才能が合致して頭角を露わにする。
何だよ、ソレ。
ふざけるなよ…。
セルファから親の事は偶に聞いていた。
金持ちではあるが、習い事や成績に煩く、最優秀のみを良しとする人間。
待てよ…。
だから、俺の側に居たがったのか?
比較対象を作る事で厳しい親の目を和らげようとした。
練習してダメな俺と少しの練習で最強になったセルファ。
そしてセルファは試合に出れて、俺はコーチの根回しのせいで出れない。
結果生まれるのは俺が弱者であるという舐め腐った風潮。
はははっ!!
あははははははっ!!
「クソっ!!」
俺はこれ以上考えたくないのに脳は矢鱈冴えて新たな疑問にアンチテーゼを与えていく。
俺だけが悪くは無かった。
その結論い至り、生まれたのは…憎悪。
セルファへの、セルファの母親への憎悪。
最早嫉妬ですらない歪な感情だ。
自覚すれば、受け入れるのは易い事だ。
涙を流しながら喝采を叫んだ。
俺はドン底から這い上がる活路を見出したのだ。
「はっ、泣き虫め」
呆れたような声は、けれど弾んでいた。
「黒スケ。ランカー目指すってやつ。良いな。乗った」
「おう、当然だ」
俺は悪になる。ヒール上等だ。
その意思を拳に託し、高く掲げた。
暗闇の中でも輝く星々を黒く染めた黒い拳の影は闇を誇るかのように力強かった。




